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タイトル画像および背景画像:マーズオービターカメラ(MOC)システムで撮影した火星
Image from (C)NASA

星空案内はこちらのPDFファイルと一緒にお読みください

 いよいよ今日から師走。この時期、街はクリスマスムードが少しずつただよいはじめ、あちこちでデコレーションされたイルミネーションが艶やかに輝きだしています。そんな街のイルミネーションから、ふと空を見上げてみると、そこにも地上の星たちよりもっと美しい冬の星空が広がっています。

 この冬の宵空では、太陽が沈んだ後の夕焼けの中に宵の明星金星が見えています。今月の金星までの距離は光の速さで約9分で、8月に太陽の向こう側を周ってから少しずつ地球に接近してきているところです。このあと来年の3月ごろまで、宵の明星として見ることができます。

 水星と金星は地球より内側をまわっているので内惑星と呼ばれています。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。


天体望遠鏡で見た昼間の金星
Nexstar Evolution 6-J
MZT824RF ズームアイピース使用
マイクロフォーサーズミラーレスカメラ
 その金星が西の空に沈み、夜が暮れてくる午後9時ごろの星空のようすを見ると、西の空の低いところにはまだ夏の星座のはくちょう座デネブ(2600光年)が見えています。はくちょう座の周辺には、2022年9月のこのページで紹介した散開星団M39など、小望遠鏡で見つけられる星雲星団がたくさんあります。

 はくちょう座は南天の「みなみじゅうじ座」に対して別名「北十字」とも呼ばれています。キリスト教が信仰されている地域では、クリスマスの夜にこの北十字が地平線に付き刺さって見えることから、この十字をイエスキリストが因われた十字架として見ている国や地域もあります。

 一方、天頂から西の空には少しおとなしめに輝く秋の星座が見えています。明るい星が少ない秋の空ですが、今年は空の中ほどにぽつんと黄色っぽい明るい星が見えています。この星が土星です。12月8日(日)には、この土星が月に隠される土星食が起こります。詳しくはこちらのページで紹介しています。

 土星までの距離は光の速さで約80分かかります。 土星は9月9日に「衝」を迎え、これから観望の好期を迎えます。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。

 この輪は、土星の直径(約116,000km)に対してわずか20mの厚さしかない円盤のため、地球から見て真横になったときと太陽に対して真横になったときには、見かけ上輪が消えたように見える現象が起こります。次に土星の輪の消失が見られるのは来年3月24日と5月7日で、それに向けて日に日に輪が針のように細くなっていく様子を見ることができます。


Nexstar Evolution 6-Jで撮影した土星
MZT824RF ズームアイピース使用
マイクロフォーサーズミラーレスカメラ
2024年8月3日撮影 
同時に撮影したMP4動画はこちら(7.4MB)
 土星から空の高いところに目を移すと、天頂から西の空には秋の星座たちが見えています。「馬肥ゆる秋」のごとく、西の空の高いところに見えているのは、天馬ペガススの姿です。ペガススの四辺形は、おとなしめな秋の星たちの中では比較的わかりやすい星の並びです。ペガスス座には、先月のこのページで紹介した球状星団M15があります。

 このペガススの四辺形を手がかりに、他の星座たちも探してみましょう。 四辺形の西側(右側)の縦の辺をまっすぐ南のほうに、土星を飛び越して延ばしていくと、まわりに明るい星がないところにひとつだけ1等星を見つけることができます。この星がみなみのうお座フォーマルハウト(22光年)です。日本ではその名の通り「みなみのひとつぼし」などと呼ぶ地方もあります。このペガスス座とみなみのうお座の間にはみずがめ座があります。街明かりの明るい空では見つけることができませんが、少し空の暗いところに行くと、3〜4等星の星たちが点々と星座を作っているのがわかります。みずがめ座には、2023年10月のこのページで紹介した球状星団M2や惑星状星雲NGC7293があります。またフォーマルハウトの東(左)にあるちょうこくしつ座には、2022年11月のこのページで紹介したNGC253という銀河があります。

 視線を再び西の空の高いところのペガススの四辺形に戻し、みずがめ座とは反対の北東の辺から、明るい星が4つ、やや広い間隔で並んでいるのを見つけることができます。この付近がアンドロメダ座です。ペガススの四辺形とアンドロメダ座との接点の星は「アルフェラッツ」という星で、アラビア語で「馬の中心」という意味があります。星座絵に描かれた天馬ペガススの、ちょうどおなかの部分にあたる星なのです。アンドロメダ座には、先月のこのページで紹介したアンドロメダ大銀河M31NGC8912022年10月のこのページで紹介した二重星アルマク・2008年10月のこのページNGC752など、双眼鏡や望遠鏡で見て楽しい天体がたくさんあります。

40倍くらいでみたペルセウス座二重星団の
シミュレーション画像
まさに「宝石箱」です
 そのアンドロメダ座の北側には、小学校の教科書にも載っているカシオペヤ座があります。アンドロメダは、ギリシャ神話のカシオペヤの娘で、父はカシオペヤの西となりにいるケフェウス・夫となったのが東隣のペルセウス・・・という具合に、この季節の星座たちはひとつの神話でつながっています。もし興味のある方は、図書館やインターネットで調べてみてはいかがでしょう。

 そのペルセウス座とカシオペヤ座の中間付近を見ると、空のきれいなところであれ、ば天の川の中に肉眼でもなにやらぼーっとした光のしみのようなものを見つけることができます。これが二重星団です。地球から7600 光年にある2つの星団で、低倍率の望遠鏡や双眼鏡見ると、天の川のたくさんの星の中に見える様子は感動的です。

セレストロン Nexstar+での導入方法
「3」(Deep Sky)キー→
NGC→「869」または「884」をキーパッドから入力

Sky-watcher Gotoドブソニアン
SkyExplorer SE-GTでの導入方法
「5」(NGC)キー→
→「869」または「884」をキーパッドから入力

Meade オートスターでの導入方法
Deep Sky→NGC Object→
キーで「869」または「884」を入力

双眼鏡や天体自動導入でない望遠鏡での見つけ方はこちら


一眼レフデジタルカメラで撮影した秋から冬の星雲星団
APS-C一眼レフ+20mm F1.8レンズ→F2.5使用 1分露出
長野県野辺山高原にて撮影 nano tracker使用
 この付近は天の川の中にあるので、双眼鏡や望遠鏡で見てみると、これ以外にもたくさんの星雲星団を見ることができます。左の写真は、その秋の天の川を撮影したものです。上の方を横に流れているのが天の川で、たくさんの星や星雲星団の中に、暗黒星雲が複雑に入り組んでいる様子も見ることができます。双眼鏡でこの付近を見ると、無数の星たちが輝いている様子を見ることができます。

 さて、こんどはアンドロメダ座から南の空へ目を向けると、空の中ほどに今月の宵空で最も目立って金色に輝く星が見えます。この星は木星です。木星までの距離は、光の速さで約40分かかりますが、太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えるます。木星をはじめとした太陽系の天体の大きさが解る図がこちらのページにあります。

 木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオエウロパガニメデカリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。


セレストロン CPC1100-J撮影した木星
MZT824RF ズームアイピース使用
マイクロフォーサーズミラーレスカメラ
 その木星の左下に赤っぽく輝くのはおうし座アルデバラン(65光年)です。この付近は、ヒアデス星団という散開星団Mel25の一部で、この付近を双眼鏡で見てみると、40個程度の星が広く散らばっているのを見ることができます。

おうし座プレアデス星団M45
APS-Cミラーレスデジカメ
Sky-Watcher N130PDS鏡筒 直焦点撮影
Sky-Exploroer SE-GT102M架台に同架
15秒露出 経緯台自動追尾
 さらに、アルデバランやヒアデス星団よりもう少し空の高いところに、都会の明るい空でも肉眼でも数個の星がごちゃごちゃっと集まっているのを見ることができます。これが「すばる」ことプレアデス星団M45です。双眼鏡で見てみると、いろいろな明るさの100個くらいの星が群れを成しているのがわかります。先ほどのヒアデス星団が約150光年と近いのに対し、プレアデス星団は約440光年と約3倍の距離があるので、このように小さくまとまった星団として見えますが、星としてのエネルギーはとても大きく明るいので、肉眼でも見えるほどに明るいのです。
 望遠鏡にデジカメを取り付けて撮影すると、左の写真のようにたくさんの星が集まっている様子を見ることができ、さらに空の暗い場所では、青い星雲が取り囲んでいることもわかります。
 木星やおうし座の北(右)よりには、ぎょしゃ座カペラ(42光年)が輝いています。ぎょしゃ座には、1月のこのページで紹介したM36M37M38の3つの散開星団があります。さらにその下からは、冬の星座の王者オリオン座も上ってきています。オリオン座には、ベテルギウス(約600光年)とリゲル(約900光年)の2つの一等星・オリオンのベルトにある3つの二等星や、1月のこのページで紹介したオリオン座大星雲M42・M43等があります。

 また、ベテルギウスと全天で最も明るい恒星のシリウス(8.7光年)のあるおおいぬ座・そしてこいぬ座プロキオン(11.2光年)を結ぶ大きな三角形は、冬の大三角をと呼ばれています。おおいぬ座には、2014年の2月のこのページで紹介した散開星団M41があります。さらにその南には、2月のこのページで紹介したカノープス(310光年)も見えているはずです。
 冬の大三角の北の空には、ふたご座ポルックス(52光年)とカストル(32光年)も見えてきています。ふたご座には、2月のこのページで紹介した散開星団M35があります。

 そのふたご座より少し低い空に、不気味に赤く輝く星が昇ってきます。この星が火星です。火星は、来年1月12日の最接近に向けて、急速に地球に近づいていて、今月の火星までの距離は光の速さで約6分です。是非この機会に火星を観察して、日に日に大きくなる火星の様子をご自身の目で確かめてみてください。

 今月火星が輝いているのはかに座で、火星のすぐ近くには3月のこのページで紹介した散開星団M44プレセペがあります。


セレストロン CPC1100-J撮影した火星
MZT824RF ズームアイピース使用
マイクロフォーサーズミラーレスカメラ

 金星・火星・木星・土星などの惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。

 このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。

来年の天文現象をちょっとご紹介

来年の天文現象から、特に注目したい現象を3つご紹介します。

★1月12日(日) 火星が最接近

 地球と火星の接近は約2年2か月ずつ起こりますが、冬に接近するときは空の高いところに見られるので、大気の影響を受けにくく、表面の模様も良く見えます。

右写真:2020年10月6日の火星

★2月10日(月)未明 火星食

 地球に接近中の火星が月に隠される現象が、2月10日(月)の未明に北海道・北東北・能登半島・中国・四国・九州の一部で見られます。食にならない地域でも、水平線近くで月と見かけ上大接近する火星が見られます。
右写真:2022年7月21日の火星食
(クリックするとその時の様子を見ることができます)

★9月8日(月)未明 皆既月食

 2024年は世界的に見ると2回の月食があり、1回目の3月14日は、北日本〜東日本で月が欠けたまま東の空から昇ってくる様子が見られます。また、9月8日(月)未明には、3年ぶりとなる皆既月食が全国で見られます。

右写真:2022年11月8日の皆既月食
(クリックするとその時の様子を見ることができます)

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