星空案内はこちらのページと一緒にお読みください

 今年の春はとても暖かく穏やかな日が続き、草花が美しく芽吹く季節になりました。今年のゴールデンウイークは連続した休みを取りやすい日程ですので、山や高原で星空を楽しまれた方も多いことでしょう。

 先月まで、夕方の西の空をにぎわせていた木星が、今月に入ると日に日に西の空に低くなり、いよいよ見納めになります。今月下旬になると、木星の代わりに宵の明星金星が西の空に見えるようになります。5月25〜30日ごろには、さらにこれに水星が加わり、日没後の西の空はとてもにぎやかになります。右の図は、太陽が沈んだ40分後ごろの西の空の様子をシミュレーションしたものです。それぞれの惑星や恒星が、地球からの見かけ上相互に位置関係を変えていく様子を見ることができます。

 水星や金星のように、地球より内側をまわる惑星のことを内惑星といいます。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。内惑星は、太陽のすぐ近くを公転しているため、太陽が沈んだ後や昇る前のわずかな時間しか見ることができませんが、今回の水星・金星・木星の集合は、そんな見つけにくい内惑星を見つけるのに、とてもよい機会になります。ぜひこの機会に見つけてみてください。

 このころ、地球から水星までの距離は光の速さで約8分・金星までは約13分・木星までは約50分です。水星と金星は、太陽の向こう側を周って、水星が金星の手前を追い抜いている様子を地球から見ていることになります。一方の木星は、地球の自転により、ずっと遠くにある他の恒星たちと同じように太陽の向こう側に行ってしまうことになります。


5月23日の木星・金星・水星の集合
当社3階より撮影 10秒おき約10分間の合成


5月24日の木星・金星・水星の集合
当社3階より撮影 10秒おき約10分間の合成

 水星や金星・木星が沈んだあとの午後9時ごろの星空のようすを見ると、西の空にはまだ冬の星座の星々を見ることができます。空の中ほどの少し北よりの空に黄色っぽく明るく輝くのが、ぎょしゃ座カペラ(41光年)と、少し南の空に見える同じくらいの明るさのこいぬ座プロキオン(11.2光年)が良く目立ちます。この2つの星の中間付近の少し高い空に、明るい星が2つ並んでいるのがふたご座ポルックス(52光年)とカストル(32光年)です。

 さらに目を空の高いところに向けると、明るい星の少ない春の星座がおとなしく光っています。ふたご座のとなりにはかに座があります。かに座は最も明るい星でも3等星しかなく、街中の明るい空では残念ながらその姿をみることはできませんが、双眼鏡や望遠鏡で探してみると、そこには2003年の4月のこのページで紹介したプレセペという散開星団があります。

 かに座からさらに空の高いところに目を移すと、春の夜空では数少ない一等星、しし座レグルス(79光年)があります。しし座というと、11月のしし座流星群で有名ですが、実際に宵の空に見えるのは春の季節になります。しし座には、先月のこのページで紹介したM65・66があります。

 しし座をはじめとした春の星座は、太陽系のある天の川銀河の円盤状になっているちょうど薄くなった方角にあたります。このため、「銀河ののぞき窓」とも言われるとおり、天の川銀河の中の星たちの数が少なく、その外側にある他の銀河をたくさん見ることができます

 しし座からさらに空の高いところに目を移すと、春の星の中でも特に目立つ北斗七星があります。北斗七星は星座ではなくおおぐま座という星座の一部になります。おおぐま座には、先月のこのページで紹介したM81M82の2つの銀河があります。北斗七星は、北極星をさがす目印にもされますし、また、柄の部分のカーブをそのまま延ばして、春の星の中で最も明るいうしかい座アークトゥルス(約37光年)・おとめ座スピカ(約260光年)へと続く春の大曲線の一部としても使われます。


りょうけん座の球状星団M3のシミュレーション画像
20cmクラスの望遠鏡で見るとこのように見えます

Meade オートスターでの導入方法

Deep Sky→Messierを選択して3と入力
#494オートスターでは、キーパッド下側の上下キーで数値を入力します
一般の赤道儀式での導入方法はこちら

 その途中、春の大曲線の内側にあるりょうけん座という小さな星座には、M3という球状星団があります。M3は地球から32,300光年の距離にある天の川銀河(私たちの銀河系)の中の天体で、球状星団という名前の通り星がボール状に集まったもので、年老いた星がお互いのエネルギーをもとめて集まってきている様子と考えられています。天の川銀河(私たちの銀河系)の外側を取り巻くように存在する天体で、いまだに謎の多い天体のひとつです。

 M3の他にも、ヘルクレス座のM13や、いて座のM22、日本からは低空に見つけにくいですが、ケンタウルス座のω(オメガ)星団などが、良く知られた球状星団です。

 これまで、銀河や星雲や星団の名前に「M」の文字がついた天体をいくつか紹介してきましたが、これは、18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエが作った星雲星団のリストです。彗星の番人と呼ばれたメシエは、彗星と間違えやすい星雲や星団をあらかじめリストアップして、彗星探索をしやすくしようとしました。メシエ天体は全部110個あり、これらは18世紀の望遠鏡でも見ることができたことからもわかるように、現在の小望遠鏡でも容易に見ることができる天体ばかりです。

 しかし、そうは言っても肉眼では見ることができない天体ですから、望遠鏡の視野に入れるのはとても難しいものです。でも、天体自動導入望遠鏡なら、天体の名前を入力するだけで見つけることができます。

 その春の大曲線の終点に光るスピカからももう少し低い空に、今年は黄色く光る明るい星が見えています。この星が土星です。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。

 土星は4月29日に「衝」(太陽−地球−土星が一直線に並ぶ)を迎え、これからの季節が最も良く見える時期です。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。

 この土星をはじめ、夕方見られる水星・金星・木星といった惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。


20cmクラスの望遠鏡で見た土星
デジタルカメラで撮影

 そしてもうひとつ、この春の星空の中で注目してほしい天体として、3月10日に太陽に最も近づいたパンスターズ彗星(C/2011L4)が、北の空に見えています。5月中は一晩中見ることができますが、明け方の空のほうが空の高いところにあがってくるので見つけやすくなります。まだ見ていない方は、ちょっと早起きして太陽が昇る前の北東の空を注目してみてください詳しくは、こちらのページで随時情報を更新しています。

 このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。

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