今年は関東以南では例年より非常に早い梅雨明けとなった一方、東北地方では梅雨前線が停滞し、なかなか梅雨が明けません。さらに、梅雨明け後に南下した前線により、日本海側を中心に豪雨被害も見られています。被害に遭われた方々にお見舞い申し上げるとともに、早く梅雨が明け、きれいな星空が見られることを祈っています。
そんな今年の夏の星空ですが、太陽が沈んだ後の夕焼け空の中に、宵の明星の金星が輝いているのを見ることができます。金星を天体望遠鏡で見てみると、右の写真のように月のように欠けている様子がわかります。今月の地球から金星までの距離は約11分です。金星のように、地球より内側をまわる惑星のことを内惑星といいます。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。
金星が西の地平線に沈んだあとの午後9時ごろの星空のようすを見ると、北西の空には、北斗七星が目だって見えています。北斗七星という名前は星座ではなく、おおぐま座という星座の一部になります。その柄の部分のカーブをそのまま延ばして、うしかい座のアークトゥルス(36.7光年)・おとめ座のスピカ(260光年)へと続く春の大曲線を見つけることができます。
その春の大曲線の終点に光るスピカの東に、今年はもうひとつ黄色く光る明るい星が見えています。この星が土星です。土星は4月29日に「衝」(太陽−地球−土星が一直線に並ぶ)を迎え、だんだんと西の空に低くなってきているため、そろそろ見納めになります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。
金星や土星などの惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。
20cmクラスの望遠鏡で見た土星 デジタルカメラで撮影
街中の夜空ではなかなか見ることができませんが、夏休みに都会から離れた山の上や海辺などで夜空を見上げると、空の高いところから南の地平線にむかって、淡い光の帯を見ることができます。これが「天の川」です。実際に見たことが無いという方も多いと思いますが、夏の天の川は他の季節に比べて濃くはっきりと見えます。アウトドアやキャンプなどで昼間体を動かした後、食後のひとときに是非機会を作って夜空を見上げてみてください。
その天の川が特に濃く明るく見えるのが、さそり座やいて座のある方向。ちょうど今の時期の夜9時ごろに真南の空に見えてきます。この方角が、私達の天の川銀河の中心の方向になります。私達の地球がある太陽系は、天の川銀河の中心から少し離れたところにあります。このため、中心方向を見ると、たくさんの星が集まっている様子を見ることができるのです。
天の川が最も濃く見えるところのやや東側に、赤く光る一等星が見えるはずです。この星がアンタレス(550光年)です。さそり座は、このアンタレスから釣り針のようにS字型をした星の連なりで、夏の星空の中ではとてもわかりやすい星座です。是非、実際の星空で探してみてください。さらに、さそり座の西側の天の川が特に濃く明るく見える付近がいて座です。さそり座には、アンタレスのすぐ東にある球状星団M4や、昨年7月のページで紹介したさそりのしっぽの毒針の先あたりにあるM6とM7という2つの散開星団があり、いて座にも2008年7月のこのコーナーで紹介したM11やM8など、たくさんの星雲星団があります。
こんどはいて座から、天の川に沿ってさらに空の高いところに目を移すと、明るく輝く白い3つの一等星で作る大きな三角形を見つけることができます。こと座のベガ(25光年)・わし座のアルタイル(17光年)・はくちょう座のデネブ(2000光年)で作られる「夏の大三角」です。中国から伝わった七夕伝説の「織り姫」と「彦星」は、それぞれベガとアルタイルだと言われています。その夏の大三角のひとつ、こと座の中には、先月のこのページで紹介したM57と呼ばれる星雲があります。地球からの2150光年の距離にあり、今から約2000万年前に中心にある星が星の一生を終え、放出されたガスがリング状に広がっていく過程が見えているのです。中心にはこれからガスを放出しきって死んで行くであろう白色わい星も見ることができます。
さらに、夏の大三角のほぼまん中、はくちょう座のくちばしにあたるところにあるのが、先月のこのページで紹介したアルビレオという星。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも出てくる名前で、肉眼ではひとつの星に見えますが、望遠鏡で見ると2つの色の異なる星が寄り添って、とてもきれいな二重星です。地球から380光年の距離にあって、30万年という長い周期でゆっくりとまわりあっている星です。
そして、アルビレオのすぐ近くにあるこぎつね座という星座の中には、M27と呼ばれる星雲があります。地球から980光年の距離にあり、中心にある星が星の一生を終え、放出されたガスが広がっていく過程が見えているのです。中心にはこれからガスを放出しきって死んで行くであろう白色わい星も見ることができます。
この種の、小さく円形に広がった星雲のことを、惑星のように見えることから「惑星状星雲」と呼んでいます。M57もこの仲間で、その中でもM27やM57は比較的明るい星雲で、8cmクラスの望遠鏡でも簡単に見ることができます。
Meade オートスターでの導入方法
さらに時間が過ぎて明け方2時ごろ、東の空から金色に輝く明るい星が昇ってくるのが見えます。この星は木星です。木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えるます。木星をはじめとした太陽系の天体の大きさが解る図がこちらのページにあります。
木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。
このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。
8月12日の東京でのスピカ食の様子
そして、この夏注目の天文現象として忘れてはいけないのが、12日の夕方におとめ座の一等星スピカが月に隠される「スピカ食」という現象です。日本で夜間に見られる一等星の食は、2005年3月31日のアンタレス食以来、8年ぶりとなります。
今回のスピカ食は、天球上を移動している月が、私たちからの見かけ上恒星の手前を通過するときに星食のうちのひとつで、スピカ・月・地球が一直線上に並び、見かけ上スピカの手前に月が入り込んでくることにより、月がスピカを隠す現象です。秋田〜岩手以北を除く、全国で見ることができます。詳しくは、こちらのページで紹介しています。是非ご自身の目で確かめてみてください。
今年のペルセウス座流星群の見える状況 クリックすると拡大します 8月13日午前3時ごろの北東の空の様子
もう一つ、そのスピカ食の夜の12日の夜(13日の明け方)には、一年の流星群の中でも最も有名なペルセウス座流星群です。今年のペルセウス座流星群は夜半前に月が沈み、暗い夜空にたくさんの流れ星を見ることができると思います。
流星群を見るときには、なるべく近くに建物や高い山や森などの無い開けた場所で、まわりに街灯やネオンサインなどが少ない空の暗い場所を選んでください。また、流星は双眼鏡や望遠鏡を使ってみるものではなく、皆さんの目で空を見上げて見つけるものです。グラウンドシートなどを広げて、寝ころがって空をぼーっとながめているのが、もっとも流れ星を見つけやすい方法です。
是非この夏は、天の川が見えるほど星空のきれいなところに出かけてみませんか?。都会よりもっとたくさんの流れ星を見ることができるはずです。そして、流星だけではなく、是非他の星たちも楽しんで見てくださいね。そんなときに、当社オンラインショッピングおすすめラインナップで取りそろえた双眼鏡や望遠鏡を使えば、きっと楽しい夜の一時を過ごすことができるでしょう!。
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