背景画像:マーズオービターカメラ(MOC)システムで撮影した火星
Image from (C)NASA

星空案内はこちらのページと一緒にお読みください

 桜咲く4月!。学校や職場などであたらしいスタートを切られる方も多いのではないでしょうか?。昨年は東日本大震災の影響で華やいだ雰囲気はほとんどありませんでしたが、今年は穏やかな春の日和を迎えることができそうですね。

 しかし、まだ津波や原子力発電所の事故による被災地では、深刻な状況が続いていることを忘れてはいけないと思います。電気というエネルギーは、自然に作り出されるものではありませんし、無尽蔵にあるわけではありません。それなのに、私たちはそれに頼りすぎたがために、なにか「大切なこと」を忘れてきたのかもしれません。その結果、発電所の事故によりその周辺の人々がさらに大きな被害に巻き込まれる結果になってしまいました。

 地震は、私たちが住む地球の「活動」のうちのひとつです。そして、地球は太陽系の仲間のうちのひとつです。太陽は、原子力発電所の数億倍の規模の核爆発で、エネルギーを私たちにもたらします。さらに太陽系は銀河系の仲間のうちのひとつです。さらにその外側には、多数の銀河があります・・・。

 この機会に、是非宇宙に目を向けてみてください。 地球上に住む私たちは、自然には逆らえないのだということを実感するとともに、いかにして共存していかなければならないのか、その答えが見つかるのではないかと思います。

???? さて、今年の春の宵空では、なんといっても目だっているのが宵の明星金星です。金星を天体望遠鏡で見てみると、左の写真のように月のように欠けている様子がわかります。水星や金星のように、地球より内側をまわる惑星のことを内惑星といいます。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。

 金星は、3月27日に東方最大離角(地球からの見かけ上、太陽の東側に最も離れて見える)を過ぎて、徐々に地球に接近してきています。そして、4月30日に最大光輝を迎えると、日に日に夕方の高度を下げていき、6月6日には太陽と地球の間を通過していく太陽面通過が起こります。次回、金星の太陽面通過が見られるのは105年後の2117年になります。この機会を是非見逃さないようにしましょう。

 空がすっかり暗くなった午後9時ごろの星空のようすを見ると、この時間になっても、西の空の低いところにまだ金星が見えています。 特に今月は深夜10時ごろまで金星が見え、例年に無い深夜の金星を見ることができます。さらに、上にも書いた6月6日の太陽面通過・8月14日には月に隠される金星食と、主役級の活躍を見せてくれます。このころには、深夜2時前にも深夜の金星を見ることができます。

 金星が輝く西の空には、明るい星が多くとてもにぎやかな冬の星座たちを見ることができます。金星の北よりの高いところに見える明るい一等星がぎょしゃ座カペラ(41光年)です。ぎょしゃ座には1月のこのページで紹介したM36・37・38の3つの散開星団があります。

 ぎょしゃ座の南にはおうし座があります。おうし座の一等星アルデバラン(65光年)の付近は、ヒアデス星団という散開星団Mel25の一部で、この付近を双眼鏡で見てみると、40個程度の星が広く散らばっているのを見ることができます。一方、もう少し空の低いところに見える数個の星がごちゃごちゃっと集まって見えるところが、2010年12月のこのページで紹介した「すばる」ことプレアデス星団M45です。双眼鏡で見てみると、いろいろな明るさの100個くらいの星が群れを成しているのがわかります。ヒアデス星団までは約150光年・プレアデス星団までは約440光年の距離があり、それぞれの大きさの差はこの距離の違いによるものです。しかし、プレアデス星団の星の輝きは、ヒアデスよりずっと明るく、高温で非常に高いエネルギーを放出していることがわかります。

 すばるやヒアデス星団からさらに南に視線を移すと、冬の星座の代表冬の星座の王者オリオン座ベテルギウス(310光年)・全天で最も明るい恒星のシリウス(8.7光年)のあるおおいぬ座・そしてこいぬ座プロキオン(11.2光年)が冬の大三角を形作っています。おおいぬ座には、2004年の1月のこのページで紹介した散開星団M41があります。

 冬の大三角の上には、ふたご座ポルックス(52光年)とカストル(32光年)も見えてきています。このふたごは、ギリシャ神話では大神ゼウスとスパルタ王妃レダとの間に生まれた双子の兄弟と言われています。そのふたご座のお兄さんのカストルの足もとには、先月のこのページで紹介したM35という散開星団があります。

 一方、ポルックスやカストルから東の方の空には、明るい星の少ない春の星座がおとなしく光っています。ふたご座より少し低いところに、かに座があります。かに座は最も明るい星でも3等星しかなく、街中の明るい空では残念ながらその姿をみることはできませんが、双眼鏡や望遠鏡で探してみると、そこには2003年の4月のこのページで紹介したプレセペという散開星団があります。

 かに座からさらに空の高いところに目を移すと、春の夜空では数少ない一等星、しし座レグルスがあります。しし座というと、11月のしし座流星群で有名ですが、実際に宵の空に見えるのは春の季節になります。しし座をはじめとした春の星座は、「銀河ののぞき窓」とも言われるとおり、銀河系の外側のはるかかなたにある銀河が、数多く見られるところでもあります。 そのうちのいくつかには、小望遠鏡でも見える明るい銀河があります。先月のこのページで紹介したM65・66もそれらの銀河のひとつです。

 そのレグルスとは対照的に、不気味な存在感で赤く明るく輝く星が見えます。この星が火星です。火星は地球のすぐ外側をまわる惑星ですが、2003年8月の大接近のことは記憶にある方も多いのではないでしょうか。


Meade LX200-25で撮影した火星

 現在、火星は光の早さで約6分で、3月5日に再接近したあと、少しずつ地球から遠ざかっています。今回の接近は2003年ほどの大接近にはなりませんが、火星は私達の地球と良く似た惑星として、近年探査機が頻繁に向かっている注目の惑星です。いつか人類が立つかもしれない火星の様子を、いち早く自分の目確かめてみませんか?。

●2003年の6月7月8月9月のこのコーナーでは、火星についてより詳しくコメントしています。興味のある方は是非ご覧ください。

火星をよりはっきりと見るためのポイント
 天体観測をする場所は、空気がきれいで空の透明度が高く、まわりに明かりが少ない場所が良いとされています。しかし、火星をはじめとした惑星の観測は必ずしもそうとは限りません。それは、惑星たちは地球から比較的近い天体で、太陽の光に照らされて十分な明るさをもっているからです。ですから、都会のように透明度がわるく明るい空でも十分見ることができます。

 しかし、惑星観測にもよりよい条件で見ることによって、同じ望遠鏡でも表面の模様をよりはっきりと見ることができます。私たちの地球には、それを取り巻く大気(空気)があります。大気は、地表が温められたり冷めたりすると地表を移動します。これが風となるわけですが、上空の風(気流)が激しく吹くと、空気によってその向こうの宇宙からくる光がかき乱されて、モヤモヤと動いて見えてしまいます。これを天体望遠鏡で高い倍率で見ると、ぼやけてはっきりとした模様を見ることができなくなってしまうわけです。

 火星はこの春、20〜21時ごろほぼ天頂付近を通って、夜半過ぎに西の空に沈んで行きます。ですから、
最も高いところに来るのは21時ごろになります。空の低いところは、宇宙からの火星の光は地球の大気をたくさん通ってきますから、気流の影響も受けやすくなります。ですから、空の高いところに来る21時ごろを狙って観測してみてください。

 また、ヒートアイランド現象などにより、都市部は常時空気が対流を起こしていて、大気の状態は決して良くありません。また、標高が低い分大気の影響も受けやすくなります。その点、標高の高い高原や山の上では、都市部よりは空気が薄くなり、地表の温度も安定しているため対流も起こりにくく、大気も安定してきれいな惑星像を見ることができます。

 しし座から、今度は目を北の空に向けてみると、暗い星が多い春の星座の中ではとても目立つ北斗七星があります。北斗七星はおおぐま座という星座の一部です。おおぐま座にも、2003年の4月のこのページで紹介したM81・M82をはじめとして、小望遠鏡でも見ることができる銀河がたくさんあります。是非宇宙を延々と旅してきた星たちの光をあなたの目で確かめてみてください。

 北斗七星は、北極星をさがす目印にもされますし、また、柄の部分のカーブをそのまま延ばして、春の星の中で最も明るいうしかい座アークトゥルス(約37光年)・おとめ座スピカ(約260光年)へと続く春の大曲線の一部としても使われます。その途中、春の大曲線の内側にあるりょうけん座という小さな星座には、昨年4月のこのページで紹介したM3という球状星団があります。

 その春の大曲線の行き着いた先に青白く光るスピカと一緒に、もうひとつ黄色く光る明るい星が見えています。この星は土星です。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。

 このように、惑星たちはそのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。

 このページで紹介している星雲星団や土星の輪は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。


20cmクラスの望遠鏡で見た土星
デジタルカメラで撮影

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