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 いよいよ今日から師走。今年の11月は比較的暖かな日が多かったですが、吹く風はもう冬を感じさせます。この時期、街はクリスマスムードが少しずつただよいはじめ、あちこちでデコレーションされたイルミネーションが艶やかに輝きだしています。そんな街のイルミネーションから、ふと空を見上げてみると、そこにも地上の星たちよりもっと美しい冬の星空が広がっています。

 今月の夕焼け空の中には宵の明星金星が見えています。今月の金星までの距離は光の速さで約5分で、来年1月9日の内合(太陽と地球の間を通過する)に向けて、地球に最も接近してきているところです。今年いっぱいまでは宵の明星として見ることができますが、来年1月後半になると明け方の東の空に明けの明星として見られるようになります。
 水星と金星は地球より内側をまわっているので内惑星と呼ばれています。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。

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天体望遠鏡で見た
昼間の金星
 さらにその金星より少し高い空にももう一つ、金色にとても目立って輝いている星が見えます。この星が木星です。木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡で見てみると、表面のしま模様が良く見えます。また、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星も見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオエウロパガニメデカリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。
Meade LX200-25で見た木星
デジタルビデオカメラで撮影
 さらにその木星と金星の間には土星も見えています。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。

 金星・火星・木星・土星などの惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。


20cmクラスの望遠鏡で見た土星
デジタルカメラで撮影

 その惑星たちが西の空に沈み、夜も深まる午後9時ごろの星空のようすを見ると、西から南の空には、まだ秋の星座たちが見えています。西の空の中ほどに見えるのは、天馬ペガススの姿です。ペガススの四辺形は、おとなしめな秋の星たちの中では比較的わかりやすい星の並びです。ペガスス座には、2013年10月のこのコーナーで紹介した球状星団M15があります。
 このペガススの四辺形を手がかりに、他の星座たちも探してみましょう。四辺形の西側(右側)の縦の辺をまっすぐ南のほうに延ばしていくと、まわりに明るい星がないところにひとつだけ1等星を見つけることができます。この星がみなみのうお座フォーマルハウト(22光年)です。日本ではその名の通り「みなみのひとつぼし」などと呼ぶ地方もあります。
 そして、ペガススの四辺形の北東の辺から、明るい星が4つ、やや広い間隔で並んでいるのを見つけることができます。この付近がアンドロメダ座です。ペガススの四辺形とアンドロメダ座との接点の星は「アルフェラッツ」という星で、アラビア語で「馬の中心」という意味があります。星座絵に描かれた天馬ペガススの、ちょうどおなかの部分にあたる星なのです。アンドロメダ座には、10月のこのページで紹介したアンドロメダ大銀河M31NGC8912006年10月のこのページで紹介した二重星アルマク2008年10月のこのページNGC752など、双眼鏡や望遠鏡で見て楽しい天体がたくさんあります。

 そのアンドロメダ座の北側には小学校の教科書にも載っているカシオペヤ座があります。アンドロメダは、ギリシャ神話のカシオペヤの娘で、父はカシオペヤの西となりにいるケフェウス・夫となったのが東隣のペルセウス・・・という具合に、この季節の星座たちはひとつの神話でつながっています。もし興味のある方は、図書館やインターネットで調べてみてはいかがでしょう。

 そのペルセウス座とカシオペヤ座の中間付近を見ると、空のきれいなところであれ、ば天の川の中に肉眼でもなにやらぼーっとした光のしみのようなものを見つけることができます。これが先月のこのページで紹介した二重星団です。

ぎょしゃ座散開星団M36 M37 M38を
双眼鏡で見たときのシミュレーション画像
夜空の暗い場所で
8倍40mmクラスの双眼鏡で見ると、
このように3つの星団をひとつの視野に見ることができます
双眼鏡での見つけ方は
こちら
 さらに東の空に目を転じると、明るい星が多くとてもにぎやかな冬の星座たちを見ることができます。北よりの高いところに見えるのがぎょしゃ座カペラ(42光年)です。ぎょしゃ座には冬の天の川が中央を流れていて、双眼鏡で見ると無数の星たちが輝いているのを見ることができます。この中に、明るい3つの散開星団があります。

 最も東よりにあるM37は、約4700光年とこの3つの中でも最も遠い距離にあり、望遠鏡で見ると小さな星たちが無数に群がっている様子を見ることができます。まん中のM36は、約3800光年の距離にあり、星の数はM37に比べて少なめで、明るめの星がバラっと散らばって見えます。いちばん西のM38は、約3600光年と最も近く、他の2つに比べると少し広がりのある星の集まりです。


M36


M38


M37

ぎょしゃ座散開星団M36 M37 M38の
望遠鏡で見たときのシミュレーション画像
50倍くらいの倍率で見たときの視野にしてあります
それぞれの星団に明るさや密集度など
個性があって面白い対象です

セレストロン Nexstar+での導入方法
「3」(Deep Sky)キー→メシエ
→「036」「037」「038」をキーパッドから入力

Sky-watcher Gotoドブソニアン
SkyExplorer SE-GTでの導入方法
「4」(M)キー→
→「036」「037」「038」をキーパッドから入力

Meade オートスターでの導入方法
Deep Sky→Messieir Object→
キーで「36
」「37」「38」を入力

天体自動導入装置のない望遠鏡や
双眼鏡での見つけ方はこちら

 ぎょしゃ座の南にはおうし座があります。おうし座の一等星アルデバラン(65光年)の付近は、ヒアデス星団という散開星団Mel25の一部で、この付近を双眼鏡で見てみると、40個程度の星が広く散らばっているのを見ることができます。アルデバランより少し高い空には、昨年12月のこのページで紹介したプレアデス星団M45(すばる)も見えています。さらにその下からは、冬の星座の王者オリオン座も見えています。

 12月22日は、一年の中で最も昼間の長さが短い冬至です。冬至や夏至・春分・秋分は、紀元前4世紀ごろに中国で使われていた二十四節季のうちのひとつです。二十四節季は、その当時に暦として使われていた太陰暦(月の動きを基準にした暦)とは別に、太陽の動きから季節ごとに起こる事象を綴った暦の一種です。

 天文学が発達した現代では、太陽の周りを回る地球の公転軌道を15度ずつに分けて計算し、その座標を通過する日にそれぞれの二十四節季を割り当てています。20世紀中ごろまでは、天文台の子午環と呼ばれる機械で天体を観測して、二十四節季を割り当てていました。このため、春分の日と秋分の日をはじめとした国民の祝日の日付を決めるのは、現在でも国立天文台の仕事で、前年の2月に次の年の祝日が発表されます(2022年の暦はこちら)。天文学と言うと浮世離れした難しい学問のように思われがちですが、実は私たちの生活に密接な関係のある基礎学問のひとつなのです。

 このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。

来年の天文現象をちょっとご紹介

来年の天文現象から、特に注目したい現象を3つご紹介します。

★7月21日(木)深夜(22日(金)未明) 火星食

 日本で夜に見られるものとしてはとしては24年ぶりとなる火星食が見られます。今回の火星食は、東の空から昇ってきた下弦の月に火星が隠される現象で、北日本では潜入・出現ともに見ることができますが、関東〜関西では出現のみ・関西以西では月出前に食が終わってしまいます

右写真:2001年1月25日の土星食
(クリックするとその時の様子を見ることができます)

11月8日(火) 皆既月食

 2022年は世界的に見ると2回の月食があり、その2回目となる11月8日(火)の皆既月食は日本で見ることができます。九州・沖縄地方では月が欠けた状態で東の空から昇りますが、それ以外の地域では月食の全過程をみることができます。
右写真:2018年1月31日皆既月食
(クリックするとその時の様子を見ることができます)

★12月1日(木) 火星の接近

 火星と地球は、約2年2ヶ月の周期で地球に接近しますが、今回は、火星の軌道と地球が近いところで接近し、最も接近する12月1日には、光の速さで5分の距離まで近づきます夜空に赤く輝く火星は、多くの人々の目に映ることになるでしょう。
右写真:2003年9月の大接近の時の火星
(クリックするとその時の様子を見ることができます)

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