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 今年の春はとても暖かく穏やかな日が続き、草花が美しく芽吹く季節になりました。ゴールデンウイークには、山や高原など星空のきれいなところに出かけられる方も多いことでしょう。

  春の夜空は、例年ですと明るい星が少なくおとなしい季節なのですが、午後9時ごろの星空のようすを見ると、今年の春は、肉眼で見える3つの外惑星(地球の外側を周る惑星)が宵空に勢ぞろいしていて、とてもにぎやかな星空になっています。西の空にはまだ冬の星座が残っています。空の中ほどに、横に並んで見える2つの明るい星は、ふたご座ポルックス(52光年)とカストル(32光年)です。ふたご座には、2015年1月のこのページで紹介した散開星団M35があります。
 一方、南から天頂近くの空に目を転じると、冬の星座に比べるとおとなしめに輝く春の星座を見ることができます。そんな春の星の中で、今年は天頂近くにひときわ明るく金色に輝く明るい星が輝いています。この星は木星です。木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えるます。

 木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオエウロパガニメデカリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです

Meade LX200-25で見た木星
デジタルビデオカメラで撮影
 今年、その木星が輝いているのはしし座です。木星は、太陽の周りを約12年の周期で一周しているので、地球からの見かけ上、星占いに使われている黄道12星座をちょうど1年で1つずつめぐっていきます。しし座には、春の夜空では数少ない一等星レグルスがあります。しし座というと、11月のしし座流星群で有名ですが、実際に宵の空に見えるのは春の季節になります。しし座にも、2015年4月のこのページで紹介したM65・66があります。

 しし座の北(左上)には、小学校の教科書にも出てくる春の代表的な星の並びである北斗七星が見えます。北斗七星は、星座ではなくおおぐま座という星座の一部になります。北斗七星は、北極星をさがす目印にもされますし、また、柄の部分のカーブをそのまま延ばして、春の星の中で最も明るいうしかい座アークトゥルス(約37光年)・おとめ座スピカ(約260光年)へと続く春の大曲線の一部としても使われます。その途中、春の大曲線の内側にあるりょうけん座という小さな星座には、2014年4月のこのページで紹介したM3という球状星団があります。
 さらに目を東の空に向けると、南東の空の低いところに、3つの一等星が小さな三角形を作るように昇ってくるのが見られます。その中でもひときわ赤い光で不気味な存在感に輝いているのが火星です。火星は地球のすぐ外側をまわる惑星ですが、2003年8月の大接近のことは記憶にある方も多いのではないでしょうか。

 今月の火星までの距離は光の早さで約4分で、5月31日に最接近になります。今回は「中接近」で、2003年8月の大接近ほどは近づきませんが、それでも天体望遠鏡で火星表面が見られるほどまで接近します。継続してみていると、その大きさや明るさが少しずつ変わっていく様子も見ることができます。この春の3月から5月の間だけでも、直径は2倍以上まで大きく見えるようになります。

Meade LX200-25で撮影した火星
 火星は、酸化鉄などを成分とした地表が太陽に照らされて、その反射した光が私たちの目に赤い色として見えています。表面には小望遠鏡でも見える細かい模様があり、また、地球の南極と北極にあたる部分には「極環」と呼ばれる白い部分も見られます。これは火星表面の二酸化炭素が凍ってドライアイスのようになっていると考えられています。ちょっと大きめの口径の望遠鏡で、毎日同じ時間に火星を見てみると、これらの模様が日に日に変化して行く様子も見ることができます。これは火星の自転周期が地球の時間で24時間37分と、地球よりちょっとだけ長いことから起こります。もちろん一日の中でもその様子は刻々と変化していきます。
火星の大きさの比較
3月から5月までで
これだけ変わります
 火星は、私たちの地球のすぐ外側を回っている惑星で、約2年2ヶ月ごとに地球に接近します。しかし、接近ごとにその距離が異なります。その理由は、火星の軌道が真円ではなくちょっとゆがんだ楕円をしているためです。
 右の図は、その軌道を上から見た図になります。地球軌道と火星軌道が接近している8月ごろに接近するときには大接近になり、反対に2月ごろに接近するときは小接近になるのです。
接近する日 距離 視直径
2016/05/31 0.50AU

18.6"

2018/07/31 0.38AU

24.3"

2020/10/06 0.41AU

22.6"

2022/12/01 0.54AU

17.2"

2025/01/12 0.64AU

14.6"

2027/02/20 0.68AU

13.8"

2029/03/30 0.65AU

14.5"

2031/05/12 0.55AU

16.9"

これから15年間の地球と火星の接近する日とその距離・大きさのシミュレーション
最遠のときは太陽の向こう側にあるので、地球からはみることができません。
 その火星とまるで明るさを競うかのように、少し低い空に赤く輝いているのは、さそり座の一等星アンタレス(550光年)、そしてもう一方の黄色っぽく輝く星が土星です。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。

 下の画像は、この春から夏にかけて、さそり座付近を移動していく惑星のシミュレーションです。アンタレスの付近を、火星が行ったりきたりする様子が見られます。古代の人々は、このように予測のつかない動きをする星たちのことを、ラテン語で「プラネタ」=放浪者と呼んでいました。これが欧米に現在まで伝わって、英語の「Planet」になりました。ラテン語を語源とする欧米各国では、どの言語でもほぼ同じ名前で呼ばれています。

 当時の人々は、そんな惑星の動きと星座たちの神話を関連して考えるようになります。この赤い星を戦争の神に見立て、「さそり座の中にあの赤い星がいるから、今年は戦争が起きるだろう」というように、現実の想像へとつながっていくようになりました。これが、後に占星術へとつながっていくことになるのです。


20cmクラスの望遠鏡で見た土星
デジタルカメラで撮影

 このように、惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。

3月から9月のさそり座付近の様子
火星とアンタレスの大接近は8月24〜25日
 このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。

4月6日朝のさそり座の様子 埼玉県堂平山にて撮影

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