タイトル画像および背景画像:マーズオービターカメラ(MOC)システムで撮影した火星
Image from (C)NASA
星空案内はこちらのPDFファイルと一緒にお読みください
残暑お見舞い申し上げます。当社の事務所のある埼玉では、8月は連日の猛暑となり、空の方も今一つきれいに晴れ上がらない日々が続いていましたが、下旬になってからは青空も見られるようになりました。皆さんのお住まいの地域ではいかがでしょうか?。 今年の旧暦の8月の十五夜は、10月1日になります。旧暦と呼ばれる太陰暦はカレンダー(こよみ=暦)の一種で、日本では、現在使われている「太陽暦」が使われはじめた明治6年より前に実際に使われていました。太陽暦が太陽のまわりを地球が一周するのを基準に作られたものであるのに対し、太陰暦は月の満ちかけを基準に作られたもので、同じ日付でも約1カ月のずれがあります。 |
9月の夜空は、夏の星座が空の高いところに見え、まだまだにぎやかな季節です。今年はそこにさらに3つも惑星が加わり、大賑わいとなっています。午後9時ごろの星空のようすを見ると、空の高いところに明るく輝く白い3つの一等星で作る大きな三角形を見つけることができます。こと座のベガ(25光年)・わし座のアルタイル(17光年)・はくちょう座のデネブ(2000光年)で作られる「夏の大三角」です。中国から伝わった七夕伝説の「織り姫」と「彦星」は、それぞれベガとアルタイルだと言われています。こと座の中には、先月のこのページで紹介したM57と呼ばれる星雲があります。また、夏の大三角のほぼまん中、はくちょう座のくちばしにあたるところには、、先月のこのページで紹介したアルビレオという星があります。 |
そのアルビレオのすぐ近くにあるこぎつね座という星座の中には、M27と呼ばれる星雲があります。地球から980光年の距離にあり、中心にある星が星の一生を終え、放出されたガスが広がっていく過程が見えているのです。中心にはこれからガスを放出しきって死んで行くであろう白色わい星も見ることができます。 この種の、小さく円形に広がった星雲のことを、惑星のように見えることから「惑星状星雲」と呼んでいます。M57もこの仲間で、その中でもM27やM57は比較的明るい星雲で、8cmクラスの望遠鏡でも簡単に見ることができます。 |
こぎつね座M27のシミュレーション図
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夏の大三角からさらに南の空の低いところに目を移すと、少し西寄りの空にさそり座のアンタレス(620光年)が見えています。さそり座には、アンタレスのすぐ東にある球状星団M4や、2012年7月のページで紹介したさそりのしっぽの毒針の先あたりにあるM6とM7という2つの散開星団があり、いて座にも2014年8月のこのコーナーで紹介したM11やM8など、たくさんの星雲星団があります。 |
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そして、さそり座の東(左)の同じくらいの高さに、金色に明るく光る星があります。この星が木星です。木星は7月14日に「衝」を迎え、今が最も良く見える時期です。 木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えます。 木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。 |
デジタルビデオカメラで撮影 |
さらにその木星と並んで少し東には土星も見えてきます。土星も7月21日に「衝」を迎え、今が最も良く見える時期です。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。 金星・火星・木星・土星などの惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。 |
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今年、木星と土星が見えているのはいて座の方向になります。この方角は私たちの天の川銀河の中心方向にあたるため、明るく太い天の川が見えます。ちょうど今の時期の20時ごろに真南の空に見えてきます。この方角が、私達の天の川銀河の中心の方向になります。私達の地球がある太陽系は、天の川銀河の中心から少し離れたところにあります。このため、中心方向を見ると、たくさんの星が集まっている様子を見ることができるのです。 |
さらに、東の空の低いところからもう一つ赤く鈍く光る星を見つけることができます。この星が火星です。火星は地球のすぐ外側をまわる惑星ですが、約2年2ヶ月ごとに地球に接近します。しかし、接近ごとにその距離が異なります。その理由は、火星の軌道が真円ではなくちょっとゆがんだ楕円をしているためです。 下の図は、その軌道を上から見た図になります。地球軌道と火星軌道が離れている2月ごろに接近するときには小接近になりますが、軌道が接近している8月ごろに接近するときには大接近になるのです。 |
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2016年から2029年までの地球と火星の接近する位置 地球の軌道を鉛直方向から見た図 2020年10月6日の大接近は大変良い条件になります |
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2016年から2029年までの地球と火星の接近する日とその距離・大きさのシミュレーション 最遠のときは太陽の向こう側にあるので、地球からはみることができません。 |
今月の火星までの距離は光の速さで約4分で、これから10月6日の大接近に向けて、少しずつ地球に接近してきます。是非毎月火星を観察して、その変化をご自身の目で確かめてみてください。 |
2020年の火星の見かけの大きさ(視直径)の変化の様子 右下の数値は地球から火星までの距離 1AU(=Astronomical Unit 天文単位)は地球と太陽の平均距離 |
宇宙から見た2020年の地球と火星の接近の様子 Java scriptの関係で上の図が見られない場合はこちら 緑が地球の軌道・赤が火星の軌道 その内側の水星と金星の動きにも注目してみましょう。 各惑星の大きさはわかりやすいように大きくしてあります。 地球が火星に接近して、離れていく様子がわかりますね。 |
16世紀ポーランドの天文学者コペルニクス(Nicolaus Copernicus 1473〜1543)がはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そのなかでも、私たちに身近な天体である太陽系天文学の変遷をこちらのページにまとめています。それぞれの時代の天文学者やアマチュア天文家が火星を観測し、火星が地球に接近する度に新たな発見を繰り返してきたのです。 天体にはじめて望遠鏡を向けたイタリアの天文学者ガリレイ(Galileo Galilei 1564〜1642)は、その表面にもやっとした模様があることを記録に残しています。オランダの ホイヘンス(Chritiaan Huygens 1629-1695)は、赤い火星の表面に逆三角形の黒いところがあることを発見し、それが約24時間ごとに現れることを発見しました。つまり、火星も地球と同じように約24時間で自転していることを発見したのです。イタリア出身でフランスで研究をしていたカッシーニ(Giovanni Domenico Cassini 1625-1712)は、ホイヘンスが発見した自転軸の方向に白い部分があることを発見しました。火星の北極と南極にあたる場所にあるため、これを極冠(Corona polare)名づけました。 さらに18世紀に入り、ドイツ出身でイギリスで研究していたハーシェル(Frederick William Hershel 1738〜1822)は、その極冠の大きさが南北交互に変わることを発見し、地球と同じように火星にも季節があることを発見しました。(余談ですがハーシェルはもともとオーケストラのオーボエ奏者でした。実は私もオーボエ吹きです(笑)。) 天体望遠鏡も時代とともに大きな進化を遂げ、世界中で大口径の望遠鏡が作られるようになった19世紀後半、1877年に火星が大接近したとき、アメリカ海軍天文台のホール(Asaph Hall 1829-1907)は、ワシントンD.C.近郊にある「大赤道儀」と呼ばれていた26インチ(66cm)反射望遠鏡を使って、2つの衛星(フォボス・ダイモス)を発見しました。 |
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この接近のときには、イタリアの天文学者スキアパレリ(Giovanni Virginio Schiaparelli 1835-1910)が、ミラノ郊外にあるブレラ天文台にドイツの光学技師メルツ(Georg Merz 1793-1867)が作った22cm屈折望遠鏡を使って火星をくまなく観測し、精密なスケッチを残しています。このスケッチにはそれぞれの模様に名前が書き込まれていて、それが現在もそのまま火星の地名として使われています。このとき、スキアパレリは火星表面に溝のような地形が多数あることを発見しました。これを"Caneli"(イタリア語で「溝」の意味のCaneloの複数形)と名づけています。 |
それがフランスのフラマリオン(Nicolas Camille Flammarion 1842-1925)によってフランス語に訳され、さらに英語の"Canal"(運河)と訳されたため、これがアメリカに渡ってからひとつの論争に発展します。アメリカのアマチュア天文家ローウェル(Percival Lowell 1855〜1916)は、自身の作った天文台でスキアパレリの書いたスケッチをもとに火星を観測し、その溝が「火星人が作った運河ではないか?」との仮説をたてました。ここからアメリカでの大論争が繰り広げられ、ローウェル氏を中心とする火星人肯定派と、その溝を工作物ではないとする天文学者バーナード(Edward Emerson Barnard 1857-1923)等の否定派が、いろいろな仮説を立ててお互いの正当性を主張しました。その検証をするためにより分解能の高い望遠鏡が必要となり、世界的に巨大望遠鏡建設がブームとなったのもこの時期です。この火星人の論争を題材にしたイギリスのウェルズ(Herbert George Wells 1866-1946)のSF小説「宇宙戦争」(原題"The War of the Worlds")は後に映画化されたことでも有名です。 |
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