背景画像:マーズオービターカメラ(MOC)システムで撮影した火星 Image from (C)NASA
今日から6月。沖縄や薩南諸島ではすでに梅雨入りしていますが、梅雨入り前の晴れた空はとてもすがすがしい気持ちになりますね。
右の写真は、先月6日の満月の日の月の出の様子です(月の下には開業前の東京スカイツリーも見えています)。この日の満月は、今年の満月で最も月が地球に近づいたときのものでした。月は、地球の周りを楕円軌道を描いて公転していて、さらに太陽の重力の影響も受けるため、軌道が複雑に変化します。このため、地球との距離が離れたり近づいたりして、見かけ上の大きさが最大で8.85%も変わります。
さて、先月21日の金環日食では、雲間から見える太陽をご覧になった方も多いのではないでしょうか?。その太陽を隠した月が、今度は地球に隠される月食が今月4日に起こります。今回の月食は、先月21日の金環日食の後、月が地球の反対側に回りこむことによって起こるもので、太陽に照らされている月の一部だけが地球の影に入る、部分月食として見られます。日食や月食は、地球と月の公転運動により起こるため密接な関係があり、今回のように半月の間隔をおいて起こることが多い現象です。前回月食が見られたのは、昨年12月10日の皆既月食でした。
今回の月食が起こる時刻は、下の表の通りです。日本では、ほとんどの地域で夕方東の空から月が昇ってくるときに、すでに欠けた状態になっている月出帯食になります。最も早く月が昇る関東地方では、時間的にはまだ月が本影に入る前に昇ってきますが、すでに半影食により一部が暗くなった状態になっているため、右上の写真のように大気の減光で赤く染まった月は、すでに欠けたように見えるはずです。その後、徐々に大きく欠けてゆき、20時03分に最も大きく欠けて見えることになります。是非皆さんの目で確かめてみてくださいね。
2012年6月4日(月)の月食の主な現象の時刻(日本時間)
半影食のはじまり
17時46分
本影食のはじまり
18時59分
食の最大(37.6%)
20時03分
本影食のおわり
21時07分
半影食のおわり
22時19分
日食や月食も楽しい天文現象ですが、それ以外にも夜空にはたくさんの星たちが輝いています。6月の午後9時ごろの星空のようすを見ると、西から南の空にはおとなしめに輝く春の星たちを見ることができます。西の空の中ほどに、白っぽくおとなしめに光るのが、春の夜空では数少ない一等星、しし座のレグルス(77光年)です。しし座というと、11月のしし座流星群で有名ですが、実際に宵の空に見えるのは春の季節になります。しし座をはじめとした春の星座は、「銀河ののぞき窓」とも言われるとおり、銀河系の外側のはるかかなたにある銀河が、数多く見られるところでもあります。 そのうちのいくつかには、小望遠鏡でも見える明るい銀河があります。先月のこのページで紹介したM65・66もそれらの銀河のひとつです。
そのレグルスとは対照的に、不気味な存在感で赤く明るく輝く星が見えます。この星が火星です。火星は地球のすぐ外側をまわる惑星ですが、2003年8月の大接近のことは記憶にある方も多いのではないでしょうか。
現在、火星は光の早さで約10分で、3月5日に再接近したあと、少しずつ地球から遠ざかっています。今回の接近は2003年ほどの大接近にはなりませんでしたが、火星は私達の地球と良く似た惑星として、近年探査機が頻繁に向かっている注目の惑星です。いつか人類が立つかもしれない火星の様子を、いち早く自分の目確かめてみませんか?。
●2003年の6月・7月・8月・9月のこのコーナーでは、火星についてより詳しくコメントしています。興味のある方は是非ご覧ください。
★火星をよりはっきりと見るためのポイント 天体観測をする場所は、空気がきれいで空の透明度が高く、まわりに明かりが少ない場所が良いとされています。しかし、火星をはじめとした惑星の観測は必ずしもそうとは限りません。それは、惑星たちは地球から比較的近い天体で、太陽の光に照らされて十分な明るさをもっているからです。ですから、都会のように透明度がわるく明るい空でも十分見ることができます。
しかし、惑星観測にもよりよい条件で見ることによって、同じ望遠鏡でも表面の模様をよりはっきりと見ることができます。私たちの地球には、それを取り巻く大気(空気)があります。大気は、地表が温められたり冷めたりすると地表を移動します。これが風となるわけですが、上空の風(気流)が激しく吹くと、空気によってその向こうの宇宙からくる光がかき乱されて、モヤモヤと動いて見えてしまいます。これを天体望遠鏡で高い倍率で見ると、ぼやけてはっきりとした模様を見ることができなくなってしまうわけです。 火星は、今月には太陽が沈んだ後に最も空の高いところに見えていて、夜半前に西の空に沈んで行きます。ですから、最も高いところに来るのは19〜20時ごろになります。空の低いところは、宇宙からの火星の光は地球の大気をたくさん通ってきますから、気流の影響も受けやすくなります。ですから、空の高いところにくるころを狙って観測してみてください。
また、ヒートアイランド現象などにより、都市部は常時空気が対流を起こしていて、大気の状態は決して良くありません。また、標高が低い分大気の影響も受けやすくなります。その点、標高の高い高原や山の上では、都市部よりは空気が薄くなり、地表の温度も安定しているため対流も起こりにくく、大気も安定してきれいな惑星像を見ることができます。
しし座から、今度は目を北の空に向けてみると、暗い星が多い春の星座の中ではとても目立つ北斗七星があります。北斗七星はおおぐま座という星座の一部です。おおぐま座にも、昨年5月のこのページで紹介したM81・M82をはじめとして、小望遠鏡でも見ることができる銀河がたくさんあります。是非宇宙を延々と旅してきた星たちの光をあなたの目で確かめてみてください。
北斗七星は、北極星をさがす目印にもされますし、また、柄の部分のカーブをそのまま延ばして、春の星の中で最も明るいうしかい座のアークトゥルス(36.7光年)・おとめ座のスピカ(260光年)へと続く春の大曲線の一部としても使われます。その途中、春の大曲線の内側にあるりょうけん座という小さな星座には、2005年の5月のこのページで紹介したM3という球状星団があります。
その春の大曲線の行き着いた先に青白く光るスピカと一緒に、もうひとつ黄色く光る明るい星が見えています。この星は土星です。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。
このように、惑星たちはそのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。
20cmクラスの望遠鏡で見た土星 デジタルカメラで撮影
さらに、明け方太陽が昇ってくる1時間くらい前に、金色に輝く明るい星が東の空から昇ってくるのが見えます。この星が木星です。木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えるます。木星をはじめとした太陽系の天体の大きさが解る図がこちらのページにあります。
木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。
そして今月下旬になると、その木星を追いかけるように煌々と輝く星が昇ってくるのも見られます。この星が明けの明星の金星です。金星は、先月中旬までは宵の明星として夕方の西の空に見えていたのですが、地球を猛スピードで追いかけてきて、6月6日には太陽と地球の間を通過していく太陽面通過が起こります。次回、金星の太陽面通過が見られるのは105年後の2117年になります。この機会を是非見逃さないようにしましょう。
金星を天体望遠鏡で見てみると、左の写真のように月のように欠けている様子がわかります。水星や金星のように、地球より内側をまわる惑星のことを内惑星といいます。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。
金星は、このほかも、8月14日には月に隠される金星食もあり、このころには深夜2時前にも深夜の金星を見ることができるなど、主役級の活躍を見せてくれます。
このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。
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各マークについての解説はこちら
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