タイトル画像および背景画像:マーズオービターカメラ(MOC)システムで撮影した火星
Image from (C)NASA
星空案内はこちらのPDFファイルと一緒にお読みください
今年1月に発生が確認された新型コロナウイルスの感染対策で、日本中が不穏な空気に包まれている昨今ですが、そんな地上の雰囲気とは対照的に、夜空の方はいつもと何も変わらず美しい星空が広がっています。外出することが制限されているこの機会に、是非夜空を見上げてみてください。 | |
この春の宵空では、太陽が沈んだ後の南西の空に宵の明星の金星が輝いています。今月の金星までの距離は光の速さで約7分で、太陽の向こう側を周って少しずつ地球に接近してきているところです。このあと5月まで、宵の明星として見ることができます。 |
天体望遠鏡で見た 昼間の金星 |
その金星が西の空に低くなり、夜も深まる午後9時ごろの星空のようすを見ると、北西の空には、まだ秋の星座のカシオペヤ座が見えています。そのカシオペアの上には、漢字の「人」という字を横にしたように星が連なるペルセウス座があります。そのペルセウス座とカシオペヤ座の中間付近を見ると、空のきれいなところであれば天の川の中に肉眼でもなにやらぼーっとした光のしみのようなものを見つけることができます。これが昨年11月のこのページで紹介した二重星団です。 さらに空の高いところに目を移すと、明るい星が多くとてもにぎやかな冬の星座たちを見ることができます。北よりの高いところに見えるのがぎょしゃ座のカペラ(42光年)です。ぎょしゃ座には、昨年12月のこのページで紹介したM36・37・38の3つの散開星団があります。 ぎょしゃ座の南にはおうし座があります。おうし座の一等星アルデバラン(65光年)の付近は、ヒアデス星団という散開星団Mel25の一部で、この付近を双眼鏡で見てみると、40個程度の星が広く散らばっているのを見ることができます。さらに、もう少し空の低いところにある数個の星がごちゃごちゃっと集まって見えるところが「すばる」ことプレアデス星団M45です。双眼鏡で見てみると、いろいろな明るさの100個くらいの星が群れを成しているのがわかります。 すばるやヒアデス星団より少し低いところには、冬の星座の代表オリオン座のベテルギウス(310光年)・全天で最も明るい恒星のシリウス(8.7光年)のあるおおいぬ座・そしてこいぬ座のプロキオン(11.2光年)が冬の大三角を形作っています。おおいぬ座には、2014年の2月のこのページで紹介した散開星団M41があります。また、シリウスから東に行った天の川の中には、1月のこのページで紹介したとも座の散開星団M46とM47があります。 冬の大三角の北には、ふたご座のポルックス(52光年)とカストル(32光年)も見えています。ふたご座には、先月のこのページで紹介したM35があります。 一方、東の空に目を転じると、冬の星座に比べるとおとなしめに輝く春の星座を見ることができます。北斗七星がめだって見えています。北斗七星は世界的には星座ではなく、おおぐま座の一部になります。北斗七星は、北極星をさがす目印にもされますし、柄の部分のカーブをそのまま延ばして、春の星の中で最も明るいうしかい座のアークトゥルス(約37光年)・おとめ座のスピカ(約260光年)へと続く春の大曲線の一部としても使われます。その途中、春の大曲線の内側にあるりょうけん座という小さな星座には、2019年5月のこのページで紹介した銀河M51や、2014年4月のこのページで紹介したM3という球状星団があります。 |
セレストロン CPC1100-J + HyperStar III APS-Cミラーレスデジカメ 30秒露出 埼玉県堂平山にて撮影
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春の星座の方角は、太陽系のある天の川銀河の円盤状になっているちょうど薄くなった方角にあたります。このため、天の川銀河の中の星たちの数が少なく、その外側にある他の銀河をたくさん見ることができます。その中でも、おおぐま座の中にあるM81とM82は、どちらも約1200万光年と比較的天の川銀河に近く、小望遠鏡でも見やすい天体です。 左の画像は望遠鏡にミラーレスデジカメを取り付けて撮影したもので、上の大きめの方がM81、下の細長い方がM82です。より空の条件のよいところでみると、この画像よりもっと細かいところまで見えるときもあります。特にM82のほうは、明るい部分が複雑に分裂している様子をみることができます。ここからは、強力なX線や電波が発せられていることが地上からの観測で解っており、銀河内部で大爆発が起こっていると考えられています。 おおぐま座周辺には、昨年4月のこのページで紹介したM97とM108など、この他にも小望遠鏡でも楽しめる銀河がたくさんあります。是非宇宙を延々と旅してきた星たちの光をあなたの目で確かめてみてください。 北斗七星の南には、春の夜空では数少ない一等星、しし座のレグルスがあります。しし座というと、11月のしし座流星群で有名ですが、実際に宵の空に見えるのは春の季節になります。しし座にも、2017年4月のこのページで紹介したM65・66があります。 |
この時期になると、真冬の時期と比べると夜明けの時間はだいぶ早くなってきますが、夜3時ごろになると、東の空にはもう夏の星座が顔を出してきます。空の高いころには、はくちょう座のデネブ・こと座のベガ・わし座のアルタイルで作られる夏の大三角が見え、南の空にはさそり座のアンタレスも見えています。 |
海から昇るさそり座と夏の天の川・火星・木星・土星 20mmF1.7レンズ→F2.2 + APS-Cカメラ 15秒露出 千葉県勝浦市にて撮影 4時間半のタイムラプスムービーはこちら |
木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えるます。木星をはじめとした太陽系の天体の大きさが解る図がこちらのページにあります。 木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。 |
デジタルビデオカメラで撮影 |
さらにその木星を追うように少し低いところに土星も見えてきます。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。 金星・火星・木星・土星などの惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。 |
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その木星や土星の近くに、もう一つ赤く鈍く光る星を見つけることができます。この星が火星です。火星は地球のすぐ外側をまわる惑星ですが、約2年2ヶ月ごとに地球に接近します。しかし、接近ごとにその距離が異なります。その理由は、火星の軌道が真円ではなくちょっとゆがんだ楕円をしているためです。 下の図は、その軌道を上から見た図になります。地球軌道と火星軌道が離れている2月ごろに接近するときには小接近になりますが、軌道が接近している8月ごろに接近するときには大接近になるのです。 |
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2016年から2029年までの地球と火星の接近する位置 地球の軌道を鉛直方向から見た図 2020年10月6日の大接近は大変良い条件になります |
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2016年から2029年までの地球と火星の接近する日とその距離・大きさのシミュレーション 最遠のときは太陽の向こう側にあるので、地球からはみることができません。 |
今月の火星までの距離は光の速さで約13分で、まだ望遠鏡で見ても小さいですが、これから10月6日の大接近に向けて、少しずつ地球に接近してきます。今月と10月6日の火星の見かけの大きさは約4倍・明るさにすると約20倍も変わります。是非毎月火星を観察して、その変化をご自身の目で確かめてみてください。 |
2020年の火星の見かけの大きさ(視直径)の変化の様子 右下の数値は地球から火星までの距離 1AU(=Astronomical Unit 天文単位)は地球と太陽の平均距離 |
宇宙から見た2020年の地球と火星の接近の様子 Java scriptの関係で上の図が見られない場合はこちら 緑が地球の軌道・赤が火星の軌道 その内側の水星と金星の動きにも注目してみましょう。 各惑星の大きさはわかりやすいように大きくしてあります。 地球が火星に接近して、離れていく様子がわかりますね。 |
このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。 |
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