夕焼けが少しずつ姿を消して、金星が西の地平線に沈むと、夜空にはたくさんの星が輝きだします。9月の夜空といえばまず思い浮かぶのが仲秋の名月。「お月見」と呼ばれる風習は、旧暦(太陰暦)の8月の十五夜に出る「仲秋の月」と、9月の十三夜に出る「後の月」に、その年に収穫された農作物をお供えして、天の恵みに感謝をするものと考えられています。
今年の旧暦の8月の十五夜は、9月21日になります。「旧暦」と呼ばれる太陰暦はカレンダー(こよみ=暦)の一種で、日本では、現在使われている「太陽暦」が使われはじめた明治6年より前に実際に使われていました。太陽暦が太陽のまわりを地球が一周するのを基準に作られたものであるのに対し、太陰暦は月の満ちかけを基準に作られたもので、同じ日付でも約1カ月のずれがあります。太陽暦と太陰暦についてはこちら(スタークリック!1999年夏号より)に簡単にまとめたものがありますので、興味のある方はご覧ください。
例年、仲秋の名月(旧暦の8月15日)は満月と数日ずれることが多いのですが、今年はちょうど満月と一致しています。太陽が沈んだ後の東の空から昇る月を見ながら、大地と太陽がくれたおいしい味覚に感謝しようではありませんか。
月は、星空を見るには明るすぎてちょっと邪魔になってしまいますが、今月の前半は月の影響もなくきれいな星空を見ることができます。9月10日ごろの星空のようすを見ると、宵空の高いところに、明るく輝く白い3つの一等星で作る大きな三角形を見つけることができます。こと座のベガ・わし座のアルタイル・はくちょう座のデネブで作られる「夏の大三角形」です。
一方、天頂付近の夏の星座たちにくらべて、少しおとなしめに輝くのが東の空に昇ってきた秋の星座たちです。「馬肥ゆる秋」のごとく、東の空に見えているのは、天馬ペガススの姿です。ペガススの四辺形は、おとなしめな秋の星たちの中では比較的わかりやすい星の並びです。
そのペガススの鼻先に、球状星団M15があります。地球から約3万光年の距離に有る天の川銀河(私たちの銀河系)の中の天体で、球状星団という名前の通り星がボール状に集まったもので、年老いた星がお互いのエネルギーをもとめて集まってきている様子と考えられています。天の川銀河(私たちの銀河系)の外側を取り巻くように存在する天体で、いまだに謎の多い天体のひとつです。
M15の他にも、みずがめ座のM2も秋の夜空で良く知られた球状星団です。これらの星雲や星団は、肉眼では見ることができないため、見つけるのが難しいものです。でも、天体自動導入望遠鏡なら、天体の名前を入力するだけで見つけることができます。
この他にも、秋の四辺形の北東の星アルフェラッツ(アラビア語で「馬のへそ」)から延びるアンドロメダ座や、北東の空に見えるカシオぺヤ座などが目にとまります。この付近にに望遠鏡や双眼鏡を向けると、「アンドロメダ大星雲」や、「二重星団」などの美しい星雲星団を見ることができます。是非あなたも双眼鏡や望遠鏡で楽しんでみてください。
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