星空案内はこちらのページと一緒にお読みください
 いよいよ6月です。今年も昨年に続き全国的に梅雨入りが遅く、関東では5月中にすでに真夏日を記録するなど、すでに梅雨入りしている沖縄・奄美地方以外では、概ねよい天気に恵まれています。

???? 6月ごろの夜空は、例年ですと明るい星が少なくおとなしい季節なのですが、今年は夕焼けの残る西の空に、明るい2つの星がとても目だって見えているのをご覧になっている方も多いと思います。 2つの星のうち、6月中、低いところに見えている明るいほうの星は宵の明星金星です。金星を天体望遠鏡で見てみると、右の写真のように月のように欠けている様子がわかります。
 金星のように、地球より内側をまわる惑星のことを内惑星といいます。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。
 金星は、来月中ごろまで夕焼け空の中で少しずつ地球に近づいてきます。今月の金星までの距離は、光の早さで約6分で、金星は6月7日に地球からの見かけ上最も太陽から離れたあと、急速に地球に接近しながら日に日に高度が低くなってきます。

 そして、その金星にも負けじ劣らず輝いているのが木星です。木星は2月7日に「衝」を迎え、今が最も良く見える時期です。木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えるます。木星をはじめとした太陽系の天体の大きさが解る図がこちらのページにあります。

 木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオエウロパガニメデカリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。

Meade LX200-25で見た木星
デジタルビデオカメラで撮影
 その金星と木星が、7月1日に地球からの見かけ上大接近します。下の画像は、東京での午後8時ごろの西の空の様子の1ヶ月間のシミュレーションです。金星も木星も、日に日に少しずつ低くなっていきますが、地球に接近してくる金星はすぐには高度は下がらず、木星との見かけの距離が狭くなっていきます。

6月10日の金星と木星
50mmF2.8 30秒露出
APS-Cデジカメ一眼レフ
nano.tracker使用
埼玉県日高市にて
金星の左にM44プレセペも
見えています

金星と木星の接近の様子のシミュレーション 東京での午後8時ごろ
大阪では約20分後・福岡では約40分後がほぼ同じ様子になります
 6月20日前後には、それに月も加わって、夕焼け空の中で美しい眺めになるはずです。2008年12月1日にも、同じ組み合わせによる接近が見られました。
 さらに6月30日から7月1日にかけては、天体望遠鏡で1つの視野の中に両方の星を見ることができるほどまで接近します。ここまで接近すると、肉眼では明るい1つの星に見えてしまうかもしれません。

 惑星と惑星が地球上から見て接近する現象はときどき見られますが、惑星の中でも1番めと2番めに明るい金星と木星が、肉眼ではほとんど1つの星に見えるほどまで大接近するのは、珍しいことです。1998年4月23日にあった金星と木星の会合の様子がこちらのページにあります。このときは明け方の現象でしたが、今回宵空で見られますから、多くの方にお楽しみいただけるのではないかと思います。是非見てみてくださいね。

50倍くらいの望遠鏡で見た7月1日の金星と木星の大接近
金星と木星の大きさは少し大きめに描いています
今回はたまたま金星と木星の視直径がほぼ同じになります
 その木星と金星が西の空に低くなる午後9時ごろの星空のようすを見ると、西の空から天頂近くの空には春の星座を見ることができます。春の星の中でも特に目立つのが、北の空に見える北斗七星です。北斗七星は星座ではなくおおぐま座という星座の一部になります。おおぐま座には、3月のこのページで紹介したM81M82があります。北斗七星は、北極星をさがす目印にもされますし、また、柄の部分のカーブをそのまま延ばして、春の星の中で最も明るいうしかい座アークトゥルス(約37光年)・おとめ座スピカ(約260光年)へと続く春の大曲線の一部としても使われます。その途中、春の大曲線の内側にあるりょうけん座という小さな星座には、先月のこのページで紹介したM51という銀河や、昨年4月のこのページで紹介した球状星団M3ながあります。
 北斗七星やりょうけん座の南には、春の夜空では数少ない一等星、しし座レグルスがあります。しし座というと、11月のしし座流星群で有名ですが、実際に宵の空に見えるのは春の季節になります。しし座にも、4月のこのページで紹介したM65・66があります。

 春の星座の方角は、太陽系のある天の川銀河の円盤状になっているちょうど薄くなった方角にあたります。このため、天の川銀河の中の星たちの数が少なく、その外側にある他の銀河をたくさん見ることができます。
 春の大曲線の先にあるスピカから、さらにその先にあるからす座という星座には、M104という銀河があります。写真に撮ると、メキシコの民族衣装の帽子であるソンブレロに似た形に見えるため、ソンブレロ銀河などとも呼ばれています。
 私たちの銀河系から4600万光年と、比較的近いところにある銀河で、明るさも9.3等級と銀河としては比較的明るいほうです。それでも天体望遠鏡で見ると、存在はわかるもののぼんやりとした光のしみのようにしか見えません。しかし、最近のデジタルカメラの性能の向上により、天体望遠鏡にカメラを取り付けて数十秒露出をするだけで、右の写真のようにはっきりとその姿を写し出すことができるようになりました。

 これまで紹介した銀河以外にも、おとめ座やかみのけ座にある銀河団や、M104よりさらに南西にあるうみへび座M83など、比較的明るい銀河がたくさんあります。遠い宇宙からたどり着いた星たちの光を、是非ご自身の眼で確かめてみてください。

M104 からす座ソンブレロ銀河
QV80A90鏡筒+Meadeシュミカセ用レデューサ併用
(500mmF6.3相当)
APS-Cデジカメ一眼レフ 30秒露出
セレストロンAdvanced VX赤道儀使用
埼玉県刈場坂峠にて

セレストロン Nexstar+での導入方法
「3」(Deep Sky)キー→メシエ
→「104」をキーパッドから入力

Sky-watcher Gotoドブソニアンでの導入方法
「4」(メシエ)キー→
→「104」をキーパッドから入力

 さらに目を東の空に向けると、南東の空に赤く光るさそり座の一等星アンタレス(550光年)と一緒に、土星が昇ってくるのが見えます。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。

 金星や木星・土星などの惑星たちは、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。

20cmクラスの望遠鏡で見た土星
デジタルカメラで撮影
 このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。

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