背景画像:マーズオービターカメラ(MOC)システムで撮影した火星 Image from (C)NASA
早くも1月が過ぎてしまいましたね。この冬は全国的に寒さが厳しく、特に日本海側や北東北・北海道では雪害も多く発生しています。一方で、冬型の気圧配置が強くなると、関東や太平洋側では乾燥した天気が続き、星空を見るには良い季節でもあります。晴れた夜には、是非星空を見上げてみてくださいね。
もともと冬の宵空には明るい星が多い時期なのですが、今年の宵空には、さらに2つの明るい星が見えています。そのうちのひとつ、太陽が西の空に沈んですぐ、夕焼け空にひとつの明るい星が見えてきます。この星が宵の明星の金星です。金星を天体望遠鏡で見てみると、左の写真のように月のように欠けている様子がわかります。 金星のように、地球より内側をまわる惑星のことを内惑星といいます。内惑星は、地球と太陽との位置関係により、見かけの大きさと明るさが変化します。その様子はこちらのページで解説しています。 金星は、今年6月6日に内合(地球から見て太陽の手前を通過する)を迎えますが、それに向けて少しずつ地球に接近しているところです。今月の金星までの距離は、光の早さで約8分で、金星は日に日に空の高いところに見られるようになります。今年前半は、この金星が宵空の高いところに輝きます。特に4月ごろには深夜10時ごろまで金星が見え、例年に無い深夜の金星を見ることができます。さらに、内合となる6月6日には太陽面を通過していく現象・8月14日には月に隠される金星食と、主役級の活躍を見せてくれます。このころには、深夜2時前にも深夜の金星を見ることができます。
金星が西の空に見えるころ、南の空の高いところにもうひとつ明るく輝いている星が見えます。この星が木星です。木星までの距離は光の速さで約40分かかりますが、木星は太陽系最大の惑星で、その直径は地球の11倍もあるため、望遠鏡でも表面の模様が良く見えます。木星をはじめとした太陽系の天体の大きさが解る図がこちらのページにあります。
木星を望遠鏡で見ると、本体にある縞模様や、まわりをまわるガリレオ衛星と呼ばれる4つの衛星を見ることができます。これは、1610年にイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で木星を見たときに発見した衛星で、イオ・エウロパ・ガニメデ・カリストという名前が付けられています。木星はその明るさと大きさから大神ゼウスのローマ神話での呼び名ユピテル(Jupiter=英語でジュピター)と呼ばれており、そこをまわる衛星には、ゼウスに仕えていたニンフなどの名前が付けられているのです。
金星が西の空に沈み、空がすっかり暗くなった午後9時ごろの星空のようすを見ると、北西の空にはW字型の星が連なるカシオペヤ座が見えています。カシオペヤ座からもう少し空の高いところに、漢字の「人」という字を横にしたように星が連なるペルセウス座があります。この、ペルセウス座とカシオペヤ座の中間付近には、昨年12月のこのページで紹介した二重星団です。地球から7600 光年にある2つの星団で、低倍率の望遠鏡や双眼鏡見ると、天の川のたくさんの星の中に見える様子は感動的です。
一方、視線を南の空に向けると、明るい星が多くとてもにぎやかな冬の星座たちを見ることができます。天頂近くの高いところに見える明るい一等星がぎょしゃ座のカペラ(41光年)です。ぎょしゃ座には先月のこのページで紹介したM36・37・38の3つの散開星団があります。
ぎょしゃ座の南にはおうし座があります。おうし座の一等星アルデバラン(65光年)の付近は、ヒアデス星団という散開星団Mel25の一部で、この付近を双眼鏡で見てみると、40個程度の星が広く散らばっているのを見ることができます。一方、もう少し空の高いところに見える数個の星がごちゃごちゃっと集まって見えるところが、2010年12月のこのページで紹介した「すばる」ことプレアデス星団M45です。双眼鏡で見てみると、いろいろな明るさの100個くらいの星が群れを成しているのがわかります。ヒアデス星団までは約150光年・プレアデス星団までは約440光年の距離があり、それぞれの大きさの差はこの距離の違いによるものです。しかし、プレアデス星団の星の輝きは、ヒアデスよりずっと明るく、高温で非常に高いエネルギーを放出していることがわかります。
すばるやヒアデス星団より少し低いところには、冬の星座の代表冬の星座の王者オリオン座のベテルギウス(310光年)・全天で最も明るい恒星のシリウス(8.7光年)のあるおおいぬ座・そしてこいぬ座のプロキオン(11.2光年)が冬の大三角を形作っています。おおいぬ座には、2004年の1月のこのページで紹介した散開星団M41があります。さらにその南には、昨年1月のこのページで紹介したカノープス(310光年)も見えているはずです。
冬の大三角の北には、ふたご座のポルックス(52光年)とカストル(32光年)も見えてきています。このふたごは、ギリシャ神話では大神ゼウスとスパルタ王妃レダとの間に生まれた双子の兄弟と言われています。そのふたご座のお兄さんのカストルの足もとには、先月のこのページで紹介したM35という散開星団があります。
さらにその下には、かに座やしし座といった春の星座もすでに顔をのぞかせ始めています。しし座の一等星レグルス(77光年)の後を追うように、もうひとつ赤く明るく輝く星が昇ってくるのが見えます。この星が火星です。火星は地球のすぐ外側をまわる惑星ですが、2003年8月の大接近のことは記憶にある方も多いのではないでしょうか。
現在、火星は光の早さで約6分で、ゆっくりと地球との距離を狭めており、今年3月6日に再び地球に接近をします。今回の接近は2003年ほどの大接近にはなりませんが、火星は私達の地球と良く似た惑星として、近年探査機が頻繁に向かっている注目の惑星です。いつか人類が立つかもしれない火星の様子を、いち早く自分の目確かめてみませんか?。
●2003年の6月・7月・8月・9月のこのコーナーでは、火星についてより詳しくコメントしています。興味のある方は是非ご覧ください。
★火星をよりはっきりと見るためのポイント 天体観測をする場所は、空気がきれいで空の透明度が高く、まわりに明かりが少ない場所が良いとされています。しかし、火星をはじめとした惑星の観測は必ずしもそうとは限りません。それは、惑星たちは地球から比較的近い天体で、太陽の光に照らされて十分な明るさをもっているからです。ですから、都会のように透明度がわるく明るい空でも十分見ることができます。
しかし、惑星観測にもよりよい条件で見ることによって、同じ望遠鏡でも表面の模様をよりはっきりと見ることができます。私たちの地球には、それを取り巻く大気(空気)があります。大気は、地表が温められたり冷めたりすると地表を移動します。これが風となるわけですが、上空の風(気流)が激しく吹くと、空気によってその向こうの宇宙からくる光がかき乱されて、モヤモヤと動いて見えてしまいます。これを天体望遠鏡で高い倍率で見ると、ぼやけてはっきりとした模様を見ることができなくなってしまうわけです。 火星はこの冬から春にかけて、日が沈んだ後の東の空に昇ってきて、夜半ごろほぼ天頂付近を通って、明け方西の空に沈んで行きます。ですから、最も高いところに来るのは夜半ごろになります。空の低いところは、宇宙からの火星の光は地球の大気をたくさん通ってきますから、気流の影響も受けやすくなります。ですから、空の高いところに来る夜半ごろを狙って観測してみてください。
また、ヒートアイランド現象などにより、都市部は常時空気が対流を起こしていて、大気の状態は決して良くありません。また、標高が低い分大気の影響も受けやすくなります。その点、標高の高い高原や山の上では、都市部よりは空気が薄くなり、地表の温度も安定しているため対流も起こりにくく、大気も安定してきれいな惑星像を見ることができます。
このように、惑星たちはそのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。
さらに時間が過ぎ23時ごろになると、東の空から青白く光るおとめ座のスピカ(約260光年)と一緒に、もうひとつ黄色く光る明るい星が見えてきています。この星は土星です。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。
このページで紹介している星雲星団や土星の輪は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。
20cmクラスの望遠鏡で見た土星 デジタルカメラで撮影
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