ゆううつな梅雨空が毎日が続いていますね。東西に長い日本列島では、すでに沖縄地方ではすでに梅雨が開けていますが、当社の事務所のある埼玉では、今年は大雨と晴天が交互にやってきて、ちょっと荒れ気味の天気が続いています。
そんな梅雨空の日々でも、時折見られる晴れた夜空は、空気の汚れがすっかり洗われて、とてもきれいな星空が見られます。夕焼けが終わる午後9時ごろの星空のようすを見ると、西の空にはおとなしめに輝く春の星たちを見ることができます。暗い星が多い春の星座の中ですが、北西の空には北斗七星がよく目立って見えています。北斗七星という名前は星座ではなく、おおぐま座という星座の一部になります。おおぐま座には、先月のこのページで紹介したM81とM82の2つの銀河があります。北斗七星は、北極星をさがす目印にもされますし、また、柄の部分のカーブをそのまま延ばして、春の星の中で最も明るいうしかい座のアークトゥルス(約37光年)・おとめ座のスピカ(約260光年)へと続く春の大曲線の一部としても使われます。その途中、春の大曲線の内側にあるりょうけん座という小さな星座には、4月のこのページで紹介したM3という球状星団があります。
さらに春の大曲線をたどっていくと、終点にあたるスピカのすぐ近くに、不気味な存在感で赤く明るく輝く星が見えています。この星が火星です。火星は地球のすぐ外側をまわる惑星ですが、2003年8月の大接近のことは記憶にある方も多いのではないでしょうか。
現在、火星までの距離は光の早さで約8分で、4月15日に再接近しました。今回の接近は2003年ほどの大接近にはなりませんが、火星は私達の地球と良く似た惑星として、近年探査機が頻繁に向かっている注目の惑星です。いつか人類が立つかもしれない火星の様子を、いち早く自分の目確かめてみませんか?。
●2003年の6月・7月・8月・9月のこのコーナーでは、火星についてより詳しくコメントしています。興味のある方は是非ご覧ください。
Meade LX200-25で撮影した火星
スピカや火星より少し高い南の空には、もうひとつ黄色く光る明るい星が見えます。この星が土星です。土星までの距離は光の速さで約80分かかります。土星を望遠鏡で見ると、右の画像のようにくるっとドーナツ状の輪が取り巻いている様子を見ることができます。
これらの惑星は、そのまわりの星座の星々と毎日少しずつ位置関係を変えています。その様子を毎日スケッチしていくと、私たちの地球やこれらの惑星が、太陽のまわりをまわっていることが理解できるようになります。15世紀ポーランドの天文学者コペルニクスがはじめて唱えた地動説以後、世界中の天文学者が現在まで宇宙を見つめ続けて、現在も様々な角度から研究が進められています。そして2006年には、冥王星が惑星から除外されました。その太陽系宇宙の変遷をこちらのページにまとめています。
20cmクラスの望遠鏡で見た土星
街中の夜空ではなかなか見ることができませんが、夏休みに都会から離れた山の上や海辺などで夜空を見上げると、夏の大三角を貫いて南の地平線にむかって、淡い光の帯を見ることができます。これが「天の川」です。実際に見たことが無いという方も多いと思いますが、夏の天の川は他の季節に比べて濃くはっきりと見えます。アウトドアやキャンプなどで昼間体を動かした後、食後のひとときに是非機会を作って夜空を見上げてみてください。
その天の川が特に濃く明るく見えるのが、さそり座やいて座のある方向。ちょうど今の時期の真夜中ごろに真南の空に見えてきます。この方角が、私達の天の川銀河の中心の方向になります。私達の地球がある太陽系は、天の川銀河の中心から少し離れたところにあります。このため、中心方向を見ると、たくさんの星が集まっている様子を見ることができるのです。
天の川が最も濃く見えるところのやや東側に、赤く光る一等星が見えるはずです。この星がアンタレス(550光年)です。さそり座は、このアンタレスから釣り針のようにS字型をした星の連なりで、夏の星空の中ではとてもわかりやすい星座です。是非、実際の星空で探してみてください。さらに、さそり座の西側の天の川が特に濃く明るく見える付近がいて座です。ちょうど今の時期の真夜中ごろに真南の空に見えてきます。
さそり座には、アンタレスのすぐ東にある球状星団M4や、昨年7月のページで紹介したさそりのしっぽの毒針の先あたりにあるM6とM7という2つの散開星団があり、いて座にも2008年7月のこのコーナーで紹介したM11やM8など、たくさんの星雲星団があります。
こと座の惑星状星雲M57のシミュレーション画像 80倍くらいの倍率で見るとこのように見えます 比較的明るく見つけやすい星雲で、小望遠鏡から十分楽しめます
Meade オートスターでの導入方法
こんどはいて座から、天の川に沿ってさらに空の高いところに目を移すと、明るく輝く白い3つの一等星で作る大きな三角形を見つけることができます。こと座のベガ(25光年)・わし座のアルタイル(17光年)・はくちょう座のデネブ(2000光年)で作られる「夏の大三角」です。中国から伝わった七夕伝説の「織り姫」と「彦星」は、それぞれベガとアルタイルだと言われています。
その夏の大三角のひとつ、こと座の中には、M57と呼ばれる星雲があります。地球からの2150光年の距離にあり、今から約2000万年前に中心にある星が星の一生を終え、放出されたガスがリング状に広がっていく過程が見えているのです。中心にはこれからガスを放出しきって死んで行くであろう白色わい星も見ることができます。
この種の、小さく円形に広がった星雲のことを、惑星のように見えることから「惑星状星雲」と呼んでいます。このM57は、その中でも比較的明るい星雲で、8cmクラスの望遠鏡でも簡単に見ることができます。50倍くらいからその形をとらえることができるようになり、100倍くらいでタバコの煙のわっかのようなかわいい姿をみることができます。
もうひとつ、M57から少し離れた夏の大三角のほぼまん中、はくちょう座のくちばしにあたるところに、アルビレオという星があります。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも出てくる名前で、肉眼ではひとつの星に見えますが、望遠鏡で見ると2つの色の異なる星が寄り添って、とてもきれいな二重星です。地球から380光年の距離にあって、30万年という長い周期でゆっくりとまわりあっている星です。
このアルビレオのすぐ近くにあるこぎつね座という星座の中にには、2013年8月のこのページで紹介したM27と呼ばれる星雲もあります。
はくちょう座β星アルビレオのシミュレーション画像 50倍くらいで見るとこのように見えます 色の対比のとてもきれいな二重星です
もうひとつ、夜が更けた明け方の空にも、是非見て欲しい星があります。朝3時前に東の空に見える明けの明星の金星です。金星は、昨年12月の下旬までは夕方の西の空で宵の明星として見えていましたが、1月11日に太陽と地球の間を通過する内合を迎え、今年の前半は明け方の空に輝くようになります。今月の地球から金星までの距離は約12分で、だんだんと地球から離れていっています。金星を天体望遠鏡で見てみると、左の写真のように月のように欠けている様子がわかります。
このページで紹介している星雲星団や惑星の様子は、口径7cmクラスの望遠鏡から見ることができるようになります。当社オンラインショッピングで紹介している望遠鏡も、最も小さなもので口径7cmですから、充分見ることができます。是非あなたの目で確かめてください!。
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