●当日の様子 今回の月食は、新型コロナウイルス感染対策で、家で楽しめる天文現象として、前日に多くのメディアで報道され、東日本の天気予報はおおむね晴れだったこともあり、多くの方々に期待されました。私は近隣で地上の景色と合わせて撮影するつもりで準備していたのですが、前日の段階で薄雲の影響で低空はほとんど見えないと判断し、少しでも雲量の少ない東北地方にでかける予定で準備をしました。 実際の撮影は、福島県の吾妻山で行いました。標高1600mを越える浄土平周辺は、昔から星空の美しい場所としてよく知られていて、公開天文台の草分けでもある浄土平天文台もあります。吾妻山は活火山で、活動が激しかった時期は夜間は立ち入ることができなかったのですが、近年は小康状態が続き、夜間でも車で行くことができます。 夕方着いたときはとても良い天気で、低いところの雲も比較的薄かったのですが、時間が経つにつれてだんだんと雲が流れ込んできてしまい、雲越しに時々見える状態になってしまいましたが、それでも皆既中の赤い月も写真に収めることができました。 次の月食は、今年11月19日(金)の宵空で見られます。このときは皆既月食にはギリギリでなりませんが、「ほぼ」皆既まで隠れますから、ほとんど今回と同じような条件で見られることになります。この月食は、今年2番目に小さい(遠い)満月で起こります。今回写真に収められたかたは、次回も同じレンズや望遠鏡で撮影すると、その大きさの違いがよくわかると思います。次回も是非多くの方々に宇宙を見上げていただけれ幸いです。 |
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Nexstar Evolution 6-J + F6.3レデューサー マイクロフォーサーズミラーレスデジカメにて撮影 |
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19:12 |
19:54 |
20:10 |
20:21 |
21:38 |
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カメラレンズ + APS-Cデジカメによる画像 | ||
300mmF4 + 1.4倍テレコン 19:14 |
300mmF4 + 1.4倍テレコン 19:59 |
300mmF4 + 1.4倍テレコン 20:10 |
300mmF4 + 1.4倍テレコン 21:31 |
20mmF1.8→F2.5 10秒露出 20:08 |
30mmF1.4→F2.8 8秒露出 20:20 |
2021年5月26日(水)の夜、日本で見られるものとしては3年ぶりとなる皆既月食が見られます。 | |
左写真:2018年1月31日の皆既月食の様子 クリックするとそのときの様子を見ることができます。 |
●月食はどうしておこるの? |
月食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。 有名なところでは、「日食」と「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の前に月が入り込んでくることによって、太陽が月に直接隠される現象です。太陽と月と地球上での見る場所の位置関係により、太陽全体が隠されるものを皆既日食・見かけ上太陽の中に月がすっぽり収まってしまい、リング状に太陽の光が見える金環日食・太陽の一部だけが月に隠される部分日食の3種類があります。最近日本で見られた日食は2020年6月21日に、全国で部分日食がありました。 一方「月食」は、太陽の光によって照らされている月が、地球の影の中に入ることによって見えなくなる現象です。日食とは違って、直接月を何かの天体が隠しているわけではありません。しかし、ちょっと視点を変えると、月から見たときに、太陽が地球によって遮られている状態、つまり月での日食が起こっていると考えられるわけです。 これらの「食」は、宇宙空間での天体の位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、より遠方にある天体が隠されることを差しています。日食の場合は、太陽・月・地球の順に並んだ時に起こり、月食の場合は、太陽・地球・月の順に直線に並んだときに起こることになります。最近日本で見られた月食は2018年7月28日の皆既月食がありました。 なぜ、このように天体と天体が一直線上に並び、日食や月食が起こるのでしょうか?。その理由は月の公転が大きく関係します。月は地球のまわりを約一カ月かけて一周しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。 その天球上を移動している月が、ちょうど太陽の反対側を通過するときに月食が起こります。ですから、月食は必ず満月の日に起こります。また、月食の中でも「皆既月食」と呼ばれる現象は、月が地球の影にすっぽりと入ってしまう現象で、反対にすべてを隠しきることができない月食のことを「部分月食」と呼んでいます。 |
●今回の月食について |
今回の月食が起こる時刻は下の表の通りです。日本では、月がすでに欠けた状態で東の水平線から上り、月食の最後まで見ることができます。 世界的には、北アメリカ大陸・南アメリカ大陸およびカリブ海諸国では、月食の途中で月が沈みます。ハワイとオセアニアでは、ほぼすべての地域で全過程を見ることができます。ロシア極東地域と中国の東側および東南アジアでは、月食が始まってから月が上ります。一方、インド半島以西とヨーロッパ・アフリカでは、今回の月食を見ることはできません。 |
2021年5月26日(水)の月食の主な現象の時刻(日本時間) | |||||||||
時刻 | 各地での高度 赤字は月出の時刻 | ||||||||
札幌 | 仙台 | 東京 | 大阪 | 福岡 | 鹿児島 | 那覇 | |||
半影食の はじまり |
17:46 | ---- | 18:39 | 18:37 | ---- | ---- | ---- | ---- | ※下記参照 |
本影食の はじまり |
18:44 | 18:51 | 0.5 | 0.8 | 18:53 | 19:11 | 19:06 | 19:07 | 月が地球の影に入りはじめる |
皆既食の はじまり |
20:09 | 10.2 | 13.1 | 14.1 | 12.0 | 9.2 | 10.4 | 11.1 | 月が地球の影にすべて入る |
食の最大 (101.5%) |
20:18 | 11.3 | 14.4 | 15.5 | 13.4 | 10.7 | 11.9 | 12.8 | 月が地球の影に最も入り込む |
皆既食の おわり |
20:28 | 12.4 | 15.6 | 16.8 | 14.8 | 12.2 | 13.5 | 14.4 | 月の一部が地球の影から抜ける |
本影食の おわり |
21:52 | 20.8 | 24.9 | 26.8 | 25.8 | 24.2 | 25.9 | 28.3 | 月全体が地球の影から抜ける |
半影食の おわり |
22:51 | 24.0 | 28.6 | 30.9 | 30.8 | 30.3 | 32.1 | 35.8 | ※下記参照 |
※半影食とは、太陽の直径の分地球の影がぼやける現象で、月の表面が地球の影の中心に向かって、少しずつ暗くなっているように見えます。半影食のはじめのうちと終わりの方では、あまり変化は見られませんが、本影食の前後30分くらいの間は、一部が薄暗くなっているのがわかります。 |
下の画像は東京での月の欠け方のシミュレーション画像です。他の地方でも、時間と欠けかたはおなじように見られます。但し、各地域とも月出前は地平線の下になるため、見ることができません。 |
2021年5月26日の月食の様子 Java scriptの関係で上の図が見られない場合はこちら 中央の円は、月の位置に於ける地球の影を示しています。 月自体が左下に移動するのは、月の公転により起こるものです。 背景の星が西から東へゆっくり移動して見えるのは、 地球の公転により影が移動することにより起こります。 背景の星の位置は東京での様子をシミュレーションしていますが 実際には月出前は地平線の下になるので見えません。 |
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●どこで、どうやって見える? | ||
月食は必ず満月の日に起こりますが、満月の日には、太陽が西の空に沈むのとほぼおなじころに東の空から月が昇ります。今回の月食は、日本では月がすでにかけ始めた状態で東の水平線からあがってきますから、 なるべく東の空が水平線近くまで開けた場所で観察するとよいでしょう。 今回の月食の大きな特徴として、地球の影ぎりぎりのところを月が通過していくことがあげられます。一般的な皆既月食では、本影食が始まってから皆既食になるまで約1時間程度で進みますが、今回は本影食から皆既食になるまで約1.5倍(1時間25分)かかります。このため、すでに月の出の時には月食が始まっていても、皆既食がはじまる20:09には、高度10〜15度まで昇っています。 また、皆既食の時間が約20分と短いことも大きな特徴です。皆既食が始まる少し前の20:00ごろから、地球の影の部分がうすぼんやりと赤く見えるようになるはずです。この状態は、皆既食の後20:40ごろまで見られるはずです。 もう一つ大きな特徴として、今回の月食は、今年最も地球に近づいた満月(スーパームーン)の日に起こることも大きなポイントです。低いところに見える満月は、地上の景色と比べてとても大きく感じられますが、今回は月食とスーパームーンが重なることによって、さらに大きく感じて見えるのではないかと思います。 それから、月食中の月の近くにはさそり座の一等星アンタレスが見えています。アンタレスは「さそりの心臓」とも言われる赤い一等星ですから、皆既中の月の赤さと比較してみるのも面白そうです。また、この付近は天の川に近い領域なので星が多く、天体望遠鏡を使えば、月食中に動いていく月にその向こう側の星々が次々に隠されていく様子もみることができるはずです。 |
月食は肉眼でも十分に楽しむことができる天文現象ですが、皆既中の月は暗いので、望遠鏡や双眼鏡を使うと、刻々と変わる皆既中の月の模様や色の変化を、じっくりと楽しむことができます。当社オンラインショッピングでは、月食の観測に最適な双眼鏡や望遠鏡を揃えております。是非この機会にお買い求めいただき、宇宙で繰り広げられる天体ドラマを、ご自身の目でごゆっくりお楽しみください。 また、部分食の間の月は満月の明るさがあるため、大口径の望遠鏡で見ると非常にまぶしく感じます。このため、減光するムーングラスを使うと、長時間継続して観測することができます。まだお持ちで無い方は、各望遠鏡のオプションとして用意されていますので、この機会に是非お求めください。 ※ムーングラスは、食が進んでまぶしくなくなったら取り外してください。皆既中はムーングラスが無いほうが良く見えます。 |
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●月食の写真撮影 |
皆既月食はとても感動的な天文現象ですから、その感動を写真やビデオに残したいと思うでしょう。月食の写真は、特殊なフィルターなどを使わなくても、普通のデジカメで簡単に写真やビデオに収めることができます。でも、せっかくならもっと美しく撮りたい!。ちょっとしたノウハウで、より美しく月食を撮ることができます。 ■三脚を使いましょう! せっかくの月食ですから、大きくアップにして撮影したいでしょう。対象を大きく拡大して撮影するには、望遠レンズを使用することになります。しかし、望遠レンズは手ブレの影響が大きく現れますし、皆既食中の月は、地球の周りの大気により屈折した赤い光だけになるので、シャッタースピードが遅くなり、手持ちの撮影ではブレてします。是非三脚を用意してください。 月食の撮影でも、三脚はもちろんリモコンやセルフタイマーなど、星空を撮影するときのノウハウがそのまま生かせます。天体写真撮影の最も基本となる固定撮影については、こちらのページで紹介しています。是非一度ご参照ください。 ■連続撮影は自動追尾にすると便利 今回の月食は、月の出から皆既食を経て再び元の満月に戻るまで、3〜4時間程度かかります。地球の自転により動いていく月をその都度追いかけてシャッターを切っても良いのですが、毎回雲台の位置を変えて撮影するのは、慣れないとなかなかうまくいきません。また、ビデオ撮影を行う場合、手動で連続して追いかけ続けるのは、時間的に難しくなります。 そんなときに、天体自動導入望遠鏡を使えば、自動追尾が可能です。天体自動導入望遠鏡は、おすすめランナップ天体望遠鏡に取り揃えています。また、簡易星野写真儀や天体自動導入機能を内蔵した電動経緯台でも自動追尾できます。 ※設定ミスや電源の不具合などが原因で追尾ができない可能性もあるので、自動追尾を設定した後も、定期的に月がカメラの中にあるかどうか確認し、必要に応じて修正するようにしましょう。 ■レンズはどのくらいの焦点距離? 初めて月を撮る場合、どのくらいの望遠レンズを使えばいいのかわからないですよね。以下は、実際にいろいろな焦点距離のレンズで月食を撮影したサンプル画像です。使用するレンズや機材の選定の参考にご参照ください。 ※レンズ固定式のカメラやビデオカメラ・スマートフォンに内蔵されているカメラ等の場合は、各製品の仕様に記載されている「35mm版換算」の焦点距離が、下記の「35mm」の欄の数値に近いものを参考にしてください。 |
◇標準レンズ |
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35mm : 50mm前後 APS-C : 30mm前後 フォーサーズ : 25mm前後 一眼レフやミラーレスカメラに付属している標準レンズや、コンパクトデジカメの標準的なレンズで撮影した場合、このくらいの大きさに写ります。皆既中なら、月とその背景にある星と一緒に写しだすことができます。ただ、拡大率は低いので、かなり遠くから見ている感覚になるでしょう。 今回の月食は、日本では東の空の低いところで起こりますから、月食中の月と地上の風景を一緒に捉えると、臨場感のある写真になると思います。 |
2011年12月10日の皆既月食 APS-C一眼レフ + 30mmレンズ |
◇広角レンズ |
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35mm : 30mm前後 APS-C : 20mm前後 フォーサーズ : 16mm前後 当社オンラインショッピング取扱商品 トキナー ATX107 魚眼ズームレンズ 標準レンズより画角が広くなるため、月の像は小さくなりますが、その分周囲の星空や地上の風景も構図に入れることができます。スマートフォンに内蔵されたカメラや、コンパクトデジカメなどは、広角レンズを使用しているものが多いです。 時間と共に欠けていく月が日周運動により移動していく様子を撮影して合成する場合、標準レンズよりやや広めの広角レンズが適しています。 |
2008年8月28日の皆既月食 APS-C一眼レフ + 16mm魚眼レンズ |
◇中望遠レンズ |
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35mm : 85mm〜200mm前後 APS-C : 50mm〜135mm前後 フォーサーズ : 40mm〜100mm前後 今回の月食は、日本では空の低いところで起こりますから、比較的焦点距離が長いレンズでも、月と地上の風景を一緒に収めることができるでしょう。月食中に近くにみえるさそり座のアンタレスとすぐ近くにある球状星団M4を同じ構図に収める場合、このクラスの焦点距離のレンズがちょうどよいでしょう。 |
2018年1月31日の月食 M44(プレセペ)と皆既中の月 APS-C一眼レフ +135mmF2.5レンズ ARK-1経緯台自動追尾 |
◇望遠レンズや望遠鏡 | |
35mm : 500mm〜1500mm前後 APS-C : 300mm〜1000mm前後 フォーサーズ : 250mm〜800mm前後 当社オンラインショッピング取扱商品 オリジナルKV90M133マクストフカセグレン鏡筒 (\29,160) オリジナル屈折鏡筒 PV102E61 (\139,320) 他、おすすめランナップ天体望遠鏡各機種 月食の写真撮影で、最もよく使われるのがこの焦点距離です。刻々と変わる皆既中の月の模様や色の変化を、じっくりと楽しむことができます。 ※35mmで2000mm・APS-Cで1350mm・フォーサーズで1000mmを越えると、月がイメージセンサーからはみ出してしまいます。特に大口径の望遠鏡を使われる場合は注意してください。 |
2014年10月8日の皆既月食 セレストロン Nexstar 6SE-J + F6.3レデューサー APS-C一眼レフ使用 |
○○焦点距離別の月のサンプル画像○○ | ||
すべて同じ夜の1時間以内に同じAPS-C一眼レフカメラで望遠鏡(レンズ)だけを交換して撮影 どの写真も明るさの調整のみで、トリミングや複雑な画像処理は一切行っていません。それぞれの望遠鏡(レンズ)での大きさや解像度の比較としてお使いください。 |
200mmカメラレンズ 35mm版換算約300mm |
400mmレンズ 35mm版換算約600mm オリジナル屈折鏡筒 PV80E55 |
612mm望遠鏡 35mm版換算約900mm オリジナル屈折鏡筒 PV102E61 |
800mm望遠鏡 35mm版換算約1200mm オリジナルKV90M133 マクストフカセグレン鏡筒 + シンプルレデューサーM0.7x |
1200mm望遠鏡 35mm版換算約1800mm オリジナルKV90M133 マクストフカセグレン鏡筒 直焦点 |
●商品は十分在庫をご用意しておりますが、現象の日時が近づくと、注文が殺到し品切れになることもあります。ご注文はお早めにお願い致します。 |
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