オーストラリアのサイディングスプリング天文台のマルコーム ハートレー(Malcolm Hartley)氏が、1986年9月に発見した彗星 (103P)が、5〜6等級で観測され始めました。彗星は、これから地球や太陽に接近するため、これまで以上に明るくなることが予想され、10月下旬には4〜5等と、肉眼でも見える程度まで明るくなることが期待されています。
ハートレー第2彗星 (103P)は、6.46年の周期で木星軌道の少し外側と太陽の間を、楕円軌道で周回している周期彗星です。彗星は、その発見者の名前がつけられるルールになっていますが、ハートレー氏は、この他にもたくさんの彗星を発見しており、そのうちハートレー氏が単独で発見した周期彗星が、103P彗星の他に2つ(100P・110P)あるため、それぞれ発見順にに第1・第2・第3と番号をつけて呼んでいます。
このハートレー第2彗星 (103P)は、その中で最も太陽に近づくことから、回帰ごとに明るくなって話題になります。右の画像は、前々回に太陽に戻ってきた1997年12月の回帰のときに撮影した画像です。
今回は10月20日に地球に0.12AUまで接近しますが、NASAが2005年に打ち上げた宇宙探査機Deep Impactの2つめの観測対象になっていて、11月4日に彗星に約700kmまで近づいて、さまざまなデータを収集することになっています。彗星は、太陽系や地球の形成の謎に迫る鍵とも言われている天体で、今回の探査によって、新しい発見があるかもしれません。
右の写真は、オーストリア中部シュティクセンドルフのアマチュア天文家ミヒャエル イェーガー(Michael Ja:ger)氏が、10月3日に15cmF2.9シュミットニュートン式望遠鏡と冷却CCDカメラで撮影したハートレー第2彗星(103P)です(イェーガー氏に掲載承認済み)。
彗星は現在地球から約0.15AU付近にいて、今月中に0.12AUまで近づきます。地球からの見かけ上、ちょうど秋から冬の天の川に沿って彗星が移動するため、天の川の中のいろいろな星雲星団に接近していきます。10月8日の二重星団・14日のNGC1528とNGC1491・21〜22日のM36&37&38・25〜26日のM35は、特に見ごたえがありそうです。但し、地球からの距離が近く、淡く大きく広がって見えているため、高い倍率の望遠鏡で見たり、焦点距離の長い望遠鏡で撮影すると、大きく広がりすぎてあまりよく見えないかもしれません。
(10月5日 22:00)
■ハートレー第2彗星(103P)起源の流星群が出現するかも?
10月27日にリリースされたScience@NASA Headline Newsによると、11月上旬にハートレー第二彗星(103P)を起源とする流星群が出現する可能性があるとのことです。
●Scientists Watch for a "Hartley-id" Meteor Shower - NASA Science
http://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2010/27oct_hartleyids/
(全天カメラで撮影された流星の画像を見ることができます)
NASA 流星環境室のビル クック(Bill Cooke)氏とカナダの西オンタリオ大学のピーター ブラウン(Peter Brown)氏によると 、10月16日にNASAが設置しているアラバマ州とジョージア州の全天カメラと、西オンタリオ大学が設置している別の全天カメラに、とてもよく似た性質の火球(流星の一種で速度が遅くて明るい)が写っていたとのことです。この流星の起源を計算していくと、ハートレー第2彗星(103P)の軌道と一致している可能性が高いことがわかりました。
ブラウン氏によると、彗星は10月20日に地球に最も接近したのですが、その軌道とその後の太陽からの放射などを考慮すると、地球が11月上旬に彗星が通過した後の塵の中に入ることになり、このときに流星群が見られる可能性があるそうです。最も可能性があるのは日本時間2日の未明から3日の未明にかけてで、流星群の放射点ははくちょう座付近になるとのことなので、日本でも運がければたくさんの流星を見ることができるかもしれません。放射点は明け方には地平線の下にありますが、流星が見られる可能性が高いのは明け方です。地平線から飛び出すように流れる流星が見られるかもしれません。
(10月27日 14:00)
■宇宙探査機 ハートレー第2彗星に接近!
11月4日、宇宙探査機Deep Impact(現ミッション名EPOXI)が、2つめの対象となっていたハートレー第2彗星に約700kmまで接近し、すばらしい映像を届けてくれました。初期段階で得られた画像が、以下のURLに掲載されています。
(C) アメリカ航空宇宙局(NASA) / ジェット推進研究所-カリフォルニア工科大学(JPL-Caltech) / メリーランド大学(UMD)
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●NASA EPOXI Mission
http://www.nasa.gov/mission_pages/epoxi/index.html
●メリーランド大学 EPOXI Mission
(回転しながら接近する前後の連続画像が掲載されています)
http://epoxi.umd.edu/
(11月5日 8:30)
■彗星のみつけかた
●11月20日〜12月30日の24時ごろの東の空
このファインディングチャートは東京での24時ごろの東の空を見上げたときの図です。この時刻の前後に見る場合は、チャートを回転させて、おおいぬ座やこいぬ座の星々の位置を合わせながら探してください。日本国内では、どの場所でもほぼ同じように見えます。左に日付のある水色の●が、その日の彗星の位置を示します。彗星は地球から遠ざかりつつあり、天球上での移動が遅くなるため、今回からは5日おきに位置をプロットしています。間の日付に見るときには、各日付の中間付近を捜してみてください。特に、11月25〜30日前後はとも座の散開星団M46・M47に接近するので、見つけやすいはずです。
彗星は22時ごろに東の空から上ってきて、その後は一晩中見ることができます。11月も12月も、下旬は月明の影響がありますので、なるべく月が沈んだあと(または昇る前)に見るようにしましょう。また、空の高いところに対象があるほうが、大気の影響をが少なくなり、より見つけやすくなりますから、満月前の場合はなるべく遅い時間に見るほうがよいでしょう。
彗星は10月20日に最も地球に接近し、その後10月28日に太陽に最接近しました。各国の観測者からの報告では、倍率の高い(焦点距離の長い)望遠鏡では7〜8等・双眼鏡など倍率の低い(焦点距離の短い)望遠鏡では6〜7等級で観測されており、双眼鏡や望遠鏡を使えば十分見つけられると思います。
彗星を見つけるときは、なるべく低い倍率で見たほうが、淡く広がった彗星の姿を鮮明に見ることができます。7倍50mmや8倍56mmの双眼鏡など、なるべく視野の広く(倍率の低く)口径の大きな双眼鏡や、2インチ広視界アイピースや焦点距離の長いアイピースを使って倍率を低くした望遠鏡で探してください。
●観測したら、報告しよう!
国立天文台のHomePageでは、「地球に近づくハートレイ彗星を捉えよう」キャンペーンを行っています。実際に彗星を観測して、その様子を報告しましょう!。
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日付 |
赤経(R.A.) |
赤緯(Dec.) |
11/20 |
07h36m.2 |
-10゜31' |
11/25 |
07h38m.6 |
-13゜20' |
11/30 |
07h39m.0 |
-15゜24' |
12/5 |
07h37m.8 |
-16゜51' |
12/10 |
07h35m.3 |
-17゜45' |
12/15 |
07h31m.9 |
-18゜11' |
12/20 |
07h27m.9 |
-18゜12' |
12/25 |
07h23m.7 |
-17゜51' |
12/30 |
07h19m.3 |
-17゜11' |
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天体自動導入望遠鏡をお使いの方は、左の表から、各日付の座標を入力してください。
●Meade オートスターの場合
テンタイ→ユーザーテンタイ→ツイカで右の座標を入力してから、その追加したデータを「センタク」して自動導入
※#497オートスターVer.2.3以前および#494オートスターVer.1.1以前のモデルでは、タイヨウケイ→スイセイ(コメット)で軌道要素を入力する方法では、正確な位置を計算できません。上の方法でその日ごとに入力してください。
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ハートレー第2 彗星 (103P) 軌道要素
元期 = 2010/10/11.0(TT) = JDT 2455480.5
近日点通過 = 2010/10/28.2598 (TT)
近日点距離 = 1.058686 AU
近日点引数 = 181.2005
昇交点黄経 = 219.7602 (2000.0)
軌道傾斜角 = 13.6184
離心率 = 0.695121
(Ephemeris from MPC 71683)
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