静岡県在住のアマチュア天文家 池谷 薫さん(67)は、11月3日午前4時58分に25cm反射望遠鏡で彗星捜索中、おとめ座に8.5等の彗星状天体があるのを発見しました。翌日の4日午前4時13分、新潟県在住のアマチュア天文家 村上 茂樹さん(48)は、46cm反射望遠鏡で彗星捜索中、おとめ座に9等の彗星状天体を発見しました。
両氏の発見の報告を受け、各国の天文台が確認観測を行い、この天体は新彗星であることが確認され、確定符号C/2010V1(2010年11月前半に発見された1番目の彗星)がつけられました。
池谷氏は、1963年に出現した関彗星(C/1963A1)以来7個目の彗星発見で、2002年2月の池谷・チャン彗星(153P)の発見以来8年ぶりの新彗星発見となります。また、村上氏も、2002年.3月のシュナイダー・村上彗星(C/2002E2)の発見以来8年ぶりの新彗星発見です。
CCDカメラとコンピュータを使った掃天システムが実用化され、新天体の発見は自動システムやCCDによる観測がほとんどである時代に、根気強く眼視での観測を続けて新彗星を発見されたことは、とてもすばらしいことだと思います。
発見後、世界各国の観測者からは、双眼鏡や焦点距離の比較的短い小望遠鏡では、8等程度で見えているとの報告もあります。また、天文台の望遠鏡や焦点距離の長い望遠鏡とCCDカメラによる撮影では、10〜11等で写っているとのことです。
日本時間11月4日朝以後、現在までに各国の観測者が報告した位置から計算すると、10月はじめごろに太陽に最も近づいて、現在は地球から遠ざかっているのではないかと思われます。まだ正確な軌道を計算するにはデータが足りないため、軌道を確定するにはもうしばらく時間がかかります。
(11月4日 19:00)
その後、国際天文連合 天文電報局によりこの彗星は池谷さんと村上さんの独立発見として認定されて、池谷・村上彗星(C/2010V1 Ikeya-Murakami)となりました。
日本時間11月4日深夜までに観測された結果から、国際天文連合 天文電報局のブライアン マースデン(Brian G Marsden)氏により暫定軌道が計算されました。これによると、彗星は10月18日にすでに太陽に接近した後で、現在は地球から遠ざかっている状態です。このため、これ以上明るくなることは考えにくいでしょう。しかし、今朝の時点でもまだ8〜9等程度で見えていますので、是非観測してみてください。
軌道は暫定的に計算されたもので、現在までのデータからは周期6年程度の彗星である可能性もあります。今後の観測でり詳しいことが解ってくると思われます。
(11月5日 9:00)
■彗星のみつけかた
●11月8〜28日の未明5時ごろの東の空
このファインディングチャートは東京での明け方5時ごろの東の空の図です。より西の地方では数十分程度後になります。図には、11月8日〜28日までの2日おきの予想位置を書き込んでいます。
彗星は3時半ごろに東の空から上ってきて、朝焼けが始まるまで見ることができます。彗星が昇ってきてから朝焼けがはじまるまでの時間は限られていますので、上の図の他の星の位置関係から、なるべく早く彗星を見つける必要があります。彗星のすぐ近くには土星が見えていますから、そこから探せば容易に見つけられると思います。
彗星を見つけるときは、なるべく低い倍率で見たほうが、淡く広がった彗星の姿を鮮明に見ることができます。7倍50mmや8倍56mmの双眼鏡など、なるべく視野の広く(倍率の低く)口径の大きな双眼鏡や、2インチ広視界アイピースや焦点距離の長いアイピースを使って倍率を低くした望遠鏡で探してください。
|
日付 |
赤経(R.A.) |
赤緯(Dec.) |
11/8 |
12h45m.3 |
-03゜23' |
11/9 |
12h47m.6 |
-03゜43' |
11/10 |
12h50m.4 |
-04゜03' |
11/11 |
12h52m.9 |
-04゜24' |
11/12 |
12h55m.4 |
-04゜43' |
11/13 |
12h58m.0 |
-05゜03' |
11/14 |
13h00m.5 |
-05゜23' |
11/15 |
13h03m.0 |
-05゜43' |
11/16 |
13h05m.5 |
-06゜02' |
11/17 |
13h08m.0 |
-06゜22' |
11/18 |
13h10m.5 |
-06゜42' |
11/19 |
13h13m.0 |
-07゜00' |
11/20 |
13h15m.5 |
-07゜20' |
11/21 |
13h18m.0 |
-07゜39' |
11/22 |
13h20m.5 |
-07゜59' |
11/23 |
13h23m.0 |
-08゜18' |
11/24 |
13h25m.5 |
-08゜36' |
11/25 |
13h28m.0 |
-08゜55' |
11/26 |
13h30m.4 |
-09゜14' |
11/27 |
13h32m.9 |
-09゜32' |
11/28 |
13h35m..3 |
-09゜51' |
|
天体自動導入望遠鏡をお使いの方は、左の表から、各日付の座標を入力してください。
●Meade オートスターの場合
テンタイ→ユーザーテンタイ→ツイカで右の座標を入力してから、その追加したデータを「センタク」して自動導入
※#497オートスターVer.2.3以前および#494オートスターVer.1.1以前のモデルでは、タイヨウケイ→スイセイ(コメット)で軌道要素を入力する方法では、正確な位置を計算できません。上の方法でその日ごとに入力してください。
|
池谷・村上彗星(C/2010V1) 暫定軌道要素
近日点通過 = 2010/10/24.555 (TT)
近日点距離 = 1.73761 AU
近日点引数 = 158.852
昇交点黄経 = 5.865 (2000.0)
軌道傾斜角 = 8.970
離心率 = 1.0 (放物線)
(Ephemeris from 2010-V63 Culculated by B. G. Marsden)
|