6月6日宵 しし座η星の掩蔽

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 薄雲がかかる中での観測となりましたが、潜入から出現まで確認することができました。雲の切れ間にあたれば、右の画像のように地球照もかすかに見ることができましたから、潜入の瞬間まで少しずつ近づいて行く様子じっくりと見ることができました。

潜入は20:45:21でした。その後月の裏側を通って再び出現したわけですが、月の明るい縁から出てくる瞬間を確認することはむずかしく、しばらく経った21:15に再び確認することができました。

■2003年6月6日 当社前にて撮影
 望遠鏡 Meade LX200GPS-25
 デジカメによるコリメート撮影


地球照としし座η星 20:38:20


20:22:15


20:37:52


20:43:50


 21:15:23


 6月6日(金)の宵空で、今年最も条件が良い「掩蔽」(えんぺい)という現象が起こります。掩蔽とは、遠くにある物体がその向こう側にある物体を隠すことを差しますが、天文での掩蔽は、太陽系内の天体がその移動により見かけ上その天体より向こう側にある天体を隠してしまう現象です。別名「星食」とも呼ばれる現象で、この方が皆さんには耳なじみがあるかもしれません。

 星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の方向に月が入り込んでくることによって、太陽が月に隠される現象ですね。月食は、太陽の光によって照らされている月が、地球の陰の中に入ることによって見えなくなる現象です。これらの「食」は、宇宙空間での位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、遠方にある天体が隠されることを差しています。最近日本で見られた現象では、昨年6月11日に部分日食が日本で見られました。また、先月7日に起こった水星の日面通過も、同じ「食」のひとつです。

 一方「星食」は、日食と同じ仕組みで月がその向こう側にある星を隠す現象を言います。もっと広い意味では、月以外の太陽系の天体にも適応されます。ですから、惑星や小惑星などにより、それより遠くにある星を隠してしまう「掩蔽」もあるわけですね。

 月は地球のまわりを約一カ月かけて公転しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。

 天球上を移動している月と見かけ上同じ位置に他の星が重なる場合に、月による「星食」がおきます。月がその星の前を通過することにより、星が隠される現象です。月のどの場所に隠されるかにもよりますが、長くて1時間くらい隠れている時間があります。

 今回は、薄明が終わった頃の南西の空の高いところで、半月直前の月によってしし座η星(3.5等星)が隠されます。星食の観測にはその星の明るさと月齢、そして月の高度が関係するため、条件の良い時は少ないのですが、この星食は今年起こる星食の中では最も観測しやすく、空の明るい都会でも楽しむことができます。初心者の方にもわかりやすい天文現象です。


6月6日のしし座ηの星食が見られる地域
薄緑色になっている新潟・福島より南の地域で見ることができます

 星食は、見る場所によって見え方が違うという特徴があります。左の図は今回の星食が見られる地域を示したものです。薄緑色になっている新潟・福島より南の地域では、星は月に隠されますが、青色の地域では、月がかすめていくだけで、隠される様子を見ることはできません。

 そして、その境界線の上地域では、「接食」と呼ばれる現象を見ることができます。今回は、山形県南部の温海町から長井市・南陽市・福島県福島市北部を通って双葉町に抜ける線上でこの現象を見ることができます。

 接食は、月の縁すれすれのところを星が通過することにより、月の表面のクレーターなどのでこぼこが星の光を遮るため、その星がちかちかと点滅して見えることがあります。

 接食が見られる地域は線上の幅100mから1kmほどの地域だけですので、ほんの少し場所が変わっただけでも、見られる現象が変わります。是非この線上に近い地域にお住まいの方は、望遠鏡を月に向けてこの様子を観察してみてください。



6月6日のしし座ηの接食が見られる地域
この線上の幅100m〜1kmの範囲で接食が見られるかも知れません。

 しし座η星が月に隠される東京では、星が月の太陽に照らされていない側から月の後ろに隠されるのは、20時44分40秒ごろです。

 福島市の飯坂温泉付近では、ちょうど接食が見られる限界線が通っています。20時35分ごろから星が月の縁すれれに近づき、この10分間くらいは、星がちかちかと点滅する可能性があります。是非お近くにお住まいの方は、望遠鏡を使って観察してみてください。

 今回の食は、空の高いところにある上弦の月によって起こりますから、月が見える場所であればどこでも観測できます。都会の住宅地などでも、南に開けたベランダなどで充分見ることができる現象です。


2003年6月6日のしし座η星の掩蔽
東京での様子のシミュレーション

 通常、星食の観測は、月と星の明るさの差が大きいため肉眼では見ることができません。今回は隠される星が3.5等とやや暗いため、望遠鏡を使ってご覧になることをおすすめします。

 20:30ごろ(大阪より西の地方では20:00ごろ)から月を視野に入れて、その近くにあるしし座η星をあらかじめ見つけておきます。空の透明度や望遠鏡の口径によっては、地球照(太陽に照らされた地球の光が反射して、月の太陽に照らされていない部分がうっすらと見える現象)が見られれますから、月の縁も確認できるはずです。月がまぶしくて星が見えにくいときは、ちょっと高めの倍率にして月の一部が見えるくらいにすると、月の裏側に入リ込む様子もじっくり見ることができるはずです。

 時間が経つと星は少しずつ月に近づき、隠される瞬間「ふっ」と消えるのがわかります。一昨年見られた土星食のような惑星食とはちがい、恒星食は非常に遠くにある星が隠されるため、月の裏側に入ると一瞬にして星の光が見えなくなります。その瞬間を見逃さないように、じっと見据えて観測する必要があります。

 星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。皆さんも是非ご自分の目で空の上で繰り広げられる天体ショーを確かめて見てください!。

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