2021年11月8日の金星食についてはこちらをご参照ください

 2012年8月14日(火)未明(13日(月)深夜)、日本で夜間に見られたものとしては前回1989年12月2日以来、23年ぶりとなる金星食が見られます。そして次回日本で夜間に起こるのは、51年後の2063年5月31日になります。


 金星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」と「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の前に月が入り込んでくることによって、太陽が月に直接隠される現象です。太陽と月と地球上での見る場所の位置関係により、太陽全体が隠されるものを皆既日食・見かけ上太陽の中に月がすっぽり収まってしまい、リング状に太陽の光が見える金環日食・太陽の一部だけが月に隠される部分日食の3種類があり、2012年5月21日には、本州で見られるものとしては129年ぶりとなる金環日食がありました。

 一方「月食」は、太陽の光によって照らされている月が、地球の影の中に入ることによって見えなくなる現象です。日食とは違って、直接月を何かの天体が隠しているわけではありません。しかし、ちょっと視点を変えると、月から見たときに、太陽が地球によって遮られている状態、つまり月での日食が起こっていると考えられるわけです。最近日本で見られた月食は、2011年12月10日に日本全国で皆既月食が見られました。

 これらの「食」は、宇宙空間での天体の位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、より遠方にある天体が隠されることを差しています。日食の場合は、太陽・月・地球の順に並んだ時に起こり、月食の場合は、太陽・地球・月の順に直線に並んだときに起こることになります。

 なぜ、このように天体と天体が一直線上に並び、日食や月食が起こるのでしょうか?。その理由は月の公転が大きく関係します。月は地球のまわりを約一カ月かけて一周しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。

 その天球上を移動している月が、ちょうど金星の手前を通過するときに金星食が起こります。つまり、金星・月・地球が一直線上に並び、見かけ上金星の手前に月が入り込んでくることにより、月が金星を隠す現象です。

●今回はどう見えるの?

 今回の金星食は、8月14日(火)の未明(13日(月)の深夜)、東の空で起こります。金星食は、日食と同様に地球の周りを周っている月によってその向こう側にある金星が隠される現象なので、地球上の場所によって見えかたや時間が変わります。今回の金星食の各地での時刻は下の表の通りです。金星が隠され始める時刻は全国で数分程度の差しかありませんが、隠されている時間は概ね西に行くほど短くなるため、隠され終わる時間も早くなります。また、西に行くほど月が昇ってくる時間が遅くなるため、なるべく東の空が開けている場所で見るようにしましょう

2012年8月14日の金星食の主な現象の時刻(日本時間)

地名

金星の一部が月に入る

金星の全部が月に入る

金星の一部が月から出る

金星の全部が月から出る

札幌

02:46:50

02:47:48

03:50:05

03:51:09

仙台

02:44:36

02:45:44

03:37:26

03:38:42

東京

02:44:30

02:45:49

03:29:19

03:30:45

大阪

02:42:24

02:43:36

03:27:35

03:28:55

福岡

02:40:48

02:41:55

03:26:34

03:27:46

鹿児島

02:41:51

02:43:09

03:20:31

03:21:55

那覇

02:52:41

02:56:28(最も金星が月に入る)

03:00:20
※那覇では、金星は完全に月に入り込まず、一部だけが隠される「接食」になります。但し、月が昇ったばかりなので、観察には東の空が水平線近くまで開けた場所を選んでください。

今回の金星食の東京での様子のシミュレーション画像
肉眼ではおおよそこのような感じで見ることができます。
金星が月から再び姿を現したあと、昇ってくる水星にも注目してください。

 上の画像は、今回の金星食の東京での様子のシミュレーション画像です。東京では、1時半ごろに東の空から月と金星がそろって昇ってくるのが見られます。三日月より少し太った月と寄り添う金星は、まるで月から落ちたしずくのように美しい眺めになるはずです。

 月はその後どんどん金星との距離を縮めていき、2時44分30秒(東京でも場所によって数秒の差があります)から金星を隠し始めます。しかし、金星の太陽に照らされていない側から隠されるので、明るさの変化が起こるのは2時45分10秒ごろからになります。金星が完全に隠れる2時45分49秒まで、肉眼では徐々に金星が暗くなっていくように見えます。

 そして、約45分後の3時29分19秒から、月の裏側に隠されていた金星が再び姿を現します。まるで「復活」するかのように、約1分16秒かけて少しずつ明るくなっていく様子を見ることができます。

 東京では、このころから東の空の朝焼けが始まりますが、そのころになると東の空から水星が昇ってくるのが見えます。水星は金星よりさらに内側を公転しているため、条件の良いときでなければみることができません。是非この機会に見てみてください。

●コラム● 西方最大離角・最大光輝ってなに?

 今回の金星食の翌日8月15日には、金星が「西方最大離角」になります。水星も、その翌日8月16日に西方最大離角になります。

 地球の内側を回る内惑星(水星や金星)は、太陽に近いところを公転しているため、地球から見て太陽の反対側になる深夜の空では、通常見ることはできません。この「最大離角」とは、地球からの見かけ上、内惑星がもっとも太陽から離れて見えるときのことを指します。地球から見て最も西側に離れる(明け方の東の空に見える)のが西方最大離角・最も東側に離れる(夕方の西の空に見える)のが東方最大離角です。

 最大離角のときには金星や水星が見つけやすくなりますが、実際にはそのときの季節(地球の自転軸の傾き)によって、見つけやすいときと見つけにくいときがあります。大まかに、9月の西方最大離角と3月の東方最大離角のときは、軌道傾斜角の関係で太陽が沈んだ後の高度が高くなるので、内惑星が見やすい位置になります。特に金星が7〜8月に西方最大離角を迎える時には、太陽が昇ってくる時間も早いので、普段は見られない深夜の金星を見ることができることになります。

 また金星は、東方最大離角の約1ヶ月後と西方最大離角の1ヵ月前に「最大光輝」になります。内惑星は、大まかに太陽と地球の間を通過する内合(今年は6月6日の太陽面通過)のときに地球に最も接近しますが、このときは太陽の光を受けている面をほとんど地球に向けていないため、明るさはそれほど明るくありません。一方、地球から見て太陽の向こう側を通過する外合のときは、太陽の光を受けている面をほぼ全部地球に向けていますが、距離が遠いため明るくありません。

 このようなことから、内惑星は内合から最大離角までの間の短い期間が、最も明るく見える時期になります。今回の金星食は、西方最大離角と最大光輝とも関連して、よく見える条件が整っているといえるでしょう。潜入・出現の両方が暗夜に見られる金星食は、2063年5月31日までありません。


内惑星の視直径(地球からの見かけの大きさ)と
見かけの形の関係

●双眼鏡や望遠鏡も使ってみよう!

 金星食は、肉眼でも十分に楽しめる天文現象ですが、双眼鏡や望遠鏡を使うと、さらに興味深く見ることができます。

 双眼鏡を使うと、肉眼では見えない地球照が見えるようになります。地球照とは、月の太陽に照らされている明るい面に対して、照らされていない影の面が薄ぼんやりと見える現象です。宇宙空間から見ると、私たちの地球も太陽に照らされて輝いて見えるわけですが、その光を月の影の側が反射して見られるのが、この地球照です。双眼鏡を使うと、この地球照があるおかげで金星が出てくる側も見えるため、出現の瞬間も容易に見ることができるようになります。


今回の金星食の東京での双眼鏡でみた様子のシミュレーション画像

 さらに、天体望遠鏡を使うと金星そのものの形も見ることができるようになります。金星が月に隠れるときや出てくるときには、金星がゆっくりと見え隠れする様子をじっくりと見ることができます。これは、天体望遠鏡でなければ見ることができないものです。


今回の金星食の東京での50倍くらいの望遠鏡でみた様子のシミュレーション画像

●コラム● 金星食は太陽系を実感するチャンス!

 上のシミュレーション画像を見て気づかれた方も多いと思いますか、月と金星が同じような形をしていますね。皆さんもご存知の通り、月や金星をはじめとした太陽系の星たちは、太陽の光を反射することにより、私たちが見ることができる「星」として見えています。ですから、金星食のときの月も金星も、この後東の空から昇ってくる太陽によって照らされているので、地球からの見かけ上ほぼ同じ形に見えるわけです。これらを立体的に捉えることで、私たち地球を含めた太陽系の位置関係を実感できると思います。

 今回の金星食では、月までの距離は約397,600kmで、金星までの距離は約104,302,500kmですから、金星は月までの約260倍遠いところにあります。しかし、金星は月の直径の約3.5倍の大きさがあるので、見かけ上月は金星の約75倍の大きさに見えていることになります。

 当社の毎月の星空案内のコーナーでは、金星食はもちろん、星空を気軽に楽しむことができる双眼鏡や望遠鏡を用意しています。この機会に是非お求めいただき、ご自身の目で宇宙の星々が繰り広げるショーをお楽しみください。

商品は十分在庫をご用意しておりますが、現象の日時が近づくと、注文が殺到し品切れになることもあります。ご注文はお早めにお願い致します。

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