オーロラを求めて北欧へ

        横浜市 中谷一樹 33歳・コンピュータ技術者


◇前書き◇
◇時期と場所◇
◇準備◇
◇機内からオーロラ観望◇
◇地上からオーロラ観望◇
◇オーロラ関係販売物◇
◇帰りの機上にて◇

◇前書き◇


長文なので、ゆっくり読んで下さい。

よろしければ、 私のホームページ もご覧下さい。以下は、その内容を(これでも)短くまとめたものです。


◇時期と場所◇


2000年の3月上旬、私はノルウェーまでオーロラを見に行ってきました。 この時期と場所を決めるまで、自分なりに色々と考えました。

オーロラが見れる場所は、アラスカとかカナダとか色々あります。 私が思うに、観測条件としてはアラスカが良く、 日本からのアクセス(飛行機の乗り継ぎ他)はカナダが良いと思います。 北欧が良い点は、楽できて昼も退屈しないことです。 北欧であれば、都市が近くにあり昼に観光できます。

自然現象が相手の場合、絶対に見れるものではありません。 オーロラも曇っていたら、観測をあきらめるしかありません。 しかし、遠くまで行って収穫無は悲しすぎます。 これは天体観測に限りませんが、私は次の3つを考えて行動を選択することが多いです。 機会が悪くても最低限得られるもの、期待値として得られるもの、 機会が良ければ最大限得られるもの。 この3つを考え、今回はノルウェーに向かいました。

「北欧が楽」であるのは、メキシコ暖流の影響です。 この影響でアイスランドとノルウェーは冬でも過ごしやすいのです。 3月上旬、私が行ったノルウェーのトロムソは0〜−8℃ぐらいでした。 国内では野辺山や富士山五合目での観望会にしばしば参加していますが、 そこでも同じぐらいまで下がることが、何度となくありました。 また、実際にノルウェーに行ってみると思ったより寒くないのです。 一緒にいた人達も同じことを言っていました。 寒暖計を見ると確かに氷点下なのですが、湿度の影響で寒くないのだと思います。

時期は場所より悩みました。オーロラが確実に見れる日はわかりません。 1週間(ツアーの日数)の休みが取れ、オーロラが見えやすい期間を探すしかありません。 それも半年前に!  安く(20万円弱)、条件が良い(観測日数や場所など)ツアーはすぐ満席になります。 実際、申し込んでみれば、その出発日の最後の一人でした!  今回、知っている人を誘ってみたものの、すべて断られていました。 いきなり一人で行ってもわからないことが多すぎるのでツアーにもぐりこむことにしました。

私はコンピュータ関係企業に勤務しています。 日本を含め、世界中でY2K問題対策で四苦八苦していることを思うと 1999年のうちに行くことは無理ですし、口にすることもできません。 職場の同僚の何名かは正月に職場待機でしたし、 既に「2000年の正月休みはないぞ!」と部長から前の年末に言われていたのです! 

もう1つ、年度末も忙しくなるので無理です。せいぜい3月上旬までがリミット。 上司に休暇申請するのは正月あけになりますから、1月中旬以降。

空が暗くオーロラを見るのに適しているのは新月の頃。 そうなると2月上旬か3月上旬。

ノルウェー北部では2月には太陽が昇りませんが、 それでは都市観光に不便です。消去法で3月上旬に決まりました。


◇準備◇


まずは情報収集です。 北欧観光のガイドブックを買い、 スカンジナビア政府観光局 からFAXサービスで公開されている情報も入手しました。 オーロラの撮影方法はこのFAXサービスでも入手できました。

観望で知りあった人達からは撮影方法を聞きまくりました。 このような時、電子メールは本当に便利です!  いつもの私は「見てるだけ」のお気楽モード(笑)。 撮影は人任せだったのですが、今回のツアーでは自ら撮影にトライすることにしました。

インターネットでも北欧情報を集めました。 ところが、夏に北欧へ旅行した人のページは多いものの、 冬に北欧へ旅行してオーロラを見てきた人のページは見つかりません。 オーロラ関係の情報はアラスカのアンカレッジや、 カナダのイエローナイフで観測した人達のページを参考にしました。

出発日が近づくと(約半月前頃から)、天候が気になります。 これもインターネットでわかります。 行き先であるノルウェートロムソは雪が多く、たまに"partially cloudy"。 イエローナイフも悪天候が多く、アンカレッジは晴れていることが多いようです。 ライブカメラの映像を眺めながら、何度もうなりました。

一番重要な準備は、お仕事がたまらないようにしておくことです!  帰国後翌日から出社なので、出発日に寝坊しない範囲で仕事を片付けました。


◇機内からオーロラ観望◇


成田を発ち、コペンハーゲンとオスロを経てトロムソへ入りました。 オスロを出たのは既に夜です。それならば、オーロラが機内から見れる可能性があります。 席は自由だと聞いて考えました。

オーロラ帯の南から北上するのだから、オーロラは北側に出現しやすいはず。 北東方向に飛ぶのだから、左手方向に見えるはず。 そう考えた私は一番左側の席に座りました。

深夜のトロムソ空港

ノルウェー時間で23時頃だったと思います。 機内アナウンスで「オーロラが見えます。左側をご覧下さい」 と英語でアナウンスがあって、機内の照明が消えました。 そのアナウンス前から気づいていましたが、照明が消えてよりはっきり見えました。 左側やや後方にカーテン状のオーロラが!  動きはゆっくりとしており、 5秒程じっと見ていると筋が消えたり別にできたりするのがわかりました。 色はほとんどわからず、白に見えました。 10分か20分、ずっと見ていましたが、やがて消えていきました。

後で聞きましたが、地上からは吹雪でオーロラが見えなかったそうです。 深夜のトロムソで吹雪の歓迎を受けた私達は、すぐに寝ることにしました。


◇地上からオーロラ観望◇


到着二日目、昼間午前中はバスで観光、午後は自由行動、 夜はオーロラ観測です。 ノルウェーでは21時、23時、深夜1時頃にオーロラが見られることが多いので、 この時間が要チェックです。人数がありますから交代で見張ります。 こういうとき、一人よりツアーの方が有利です!

空には雲が多く、所々晴れ間がのぞく状態。 北斗七星やカシオペア座が天頂にやっと見えました。 風があるので雲が流れてくれるし、 夜露がつきにくいのはよいのですが、 すっきりと晴れてくれません。 それどころか、時々吹雪く状態!  吹雪くとカメラと三脚を抱えてホテルの中へと退避します。 なお、カメラは温かい部屋へ持ち込むと露結してしまいます。 ホテルの玄関は2重扉になっていますから、その間にカメラを退避させました。 ここなら風は入らず、温度も良い範囲。

最初にオーロラを見たのは19時頃でした。 南の空に白い雲のように見えました。 しかし、他の雲と比べて動きがはやく、流れる方向が違うのでオーロラだとわかりました。 下の画像の左側でも、白い雲がわずかにしか動いていないのに、 緑色のオーロラは動いているのがわかります。

21時頃、今度は細長いオーロラが出ました。 その形状は飛行機雲か流星痕のよう。 それが並列に何本かあらわれては消えていきました。

かなり活発なオーロラが見えたのは23時頃です。 南の空に細長く見えたかと思うと、それがくねり、カーテン状に変化しました。 わずか数秒の間の変化で、見ていた人達の間から歓声があがりました。 プロが撮影に成功した映像に比べれば数段見劣りするでしょうし、 色などまったくわからず白色にしか見えません。 それでも自分の眼で見れば感動するものです! 

その他、全天の150度以上にも渡る長いオーロラも見ました。 雲がなければ、180度に達していたかも!?  オーロラは1本が2本や3本になったかと思うと、場所をかえて出現したり、 本当に気まぐれで1つとして同じものがありません。

これら23時頃に見えたオーロラを撮影しました。 オーロラ撮影で嬉しいのは、オーロラを自分の目で見ながら撮影できることです。 方向をあわせ、露光時間を変えながら何度もレリーズを押し捲るだけ!  素人撮影でも何かしら写ります、私がそうでしたから(笑)。 露光時間の目安はありますが、 オーロラの明るさは毎回異なるために何秒が最適だったかは現像するまでわかりません。 とにかく数で勝負するしかありません。

帰国後に現像して気づきましたが、オーロラの緑色が写っていました。 肉眼で見ているときには暗いためか、色はわかりませんでした。 到着三日目の夜に緑色がわかるオーロラが出ましたが、 色がわかるオーロラはこれ一回きりでした。

観測後に気づいたことがもう1つ。右手の甲がひび割れて血がにじんできました。 撮影時、邪魔に感じた右手の手袋を脱いだからです。 やはり寒いのですね!  もし次回があるなら、指先だけを切った手袋 (釣りをする人がよく使っています)を用意したいと思います。

オーロラの画像 各画像はクリックすると大きくなります
(拡大した画像は編集部にて見やすいように簡単に画像処理しました)

◇オーロラ関係販売物◇


ノルウェーでは、オーロラ関係のお土産はあまり販売されていません。 街中でも飛行場でもオーロラに関係するものを目にすることは少なく、 オーロラに興味を持つ人も少ないです。 ノルウェーに住むアマチュア観測者や研究者はいますが、多くの人は無関心です。

本来、北欧の観光シーズンは5〜8月です。 冬にオーロラを見にわざわざ来るのは東洋人ぐらいなものです。 皆既日食や流星雨などの天体現象であれば一般の西洋人も関心を持ちますが、 オーロラは違います。 私が思うに、西洋人は太陽を欲する気持ちが強く、冬より夏の方を好むのでしょう。 そのため、冬を意味するオーロラには関心が向かないのではないでしょうか?

北欧の冬は厳しく、その生活も厳しいものです。 食事をしていると野菜や果物が少ないことに気づきます。 ホテルの朝食ではビタミン剤が出ました。 本当にビタミン剤か確認を取りましたが、 現職医師からもスカンジナビア政府観光局からも間違い無いと答えてくれました。

さて、その中で、一番目にするオーロラ関係販売物と言えば、 オーロラの絵葉書でしょう。 ホテルのフロントでも販売されていました。

次にオーロラのTシャツ。これが販売されていたのは、 POLARIA水族館とトロムソ飛行場で、値段は130クローネ(約1700円)でした。 Tシャツはともかく、トロムソに行ったらPOLARIA水族館には是非入るべきです。 トロムソで訪れるべき施設の1つです。 POLARIA水族館は下の画像のように変わった形状の建物です。

POLARIA水族館

オーロラの時間変化 販売物ではありませんが、 ノルウェーの200クローネ札はオーロラと多いに関係あります。 200クローネ札の肖像となった人こそ、Kristian Birkeland 教授。 研究室内で人工のオーロラをはじめて作った人です。 教授が使った機械も200クローネ札に見ることができます。 そう言えば、200クローネ札の模様もオーロラに見えてきませんか?

上記の話はアルタ博物館のパンフレットにのっています。 アルタ博物館があるアルタ市まで行けなくても、 トロムソにあるトロムソ博物館でこのパンフレットを買うことができます。 私が買ったときには60クローネ(約800円)でした。 このパンフレットの表紙には3本のオーロラがあるので、 すぐに見つけられるでしょう。

そうそう、トロムソ博物館ではノルウェーの星図早見盤も65クローネで販売されています。 表記はすべてノルウェー語です。


◇帰りの機上にて◇


北極圏を飛行する飛行機の上からオーロラを見たことがある人も多いと思います。 帰りの飛行機では、偶然にも一番左側の席でした。 隣の席の人から「このコースでこの時間であればオーロラが見えるかもしれません。 私は飛行機の上から見たことがあります」 と言われたので、2人で探すことにしました。 そして、ノルウェー時間で23時頃に左後方にオーロラを見ることができました。 高度から判断してオーロラに間違いなく、隣の人もオーロラであると確認してくれました。 ただ、形がはっきりしていないので他の人を起こすのはやめることにしました。 ほとんどの人はぐっすり寝ているのですから。

今回、私は4晩オーロラを見たことになります。 ツアーの案内では、オーロラ観測のチャンスは3晩だったのに(笑)。 もう1つ嬉しかったのはグリーンフラッシュが見れたことです。

成層圏から見た日没 成層圏から見る夕焼けはそれだけで十分にきれいです。 特に、今回は水平線上にグラデーションが見えてすごくきれいでした。 水平線が赤く、天頂がきれいな青。 その間は段階的に色が変わり、 緑まで見えていて巨大な横倒しの虹を見ているかのようでした。

その中、ゆっくりと太陽が沈み、水平線よりわずかに浮いた黒い雲の上縁と、 太陽の上縁が近づいたときに緑の点が見えました。 肉眼で緑がわかるグリーンフラッシュを初めて見ました。 かつて、富士山須走五合目の朝にグリーンフラッシュを見たことがありますが、 肉眼では黄色にしか見えませんでした。

欲を出した私は朝日も狙ってみました。 しかし、今度は水平線上のグラデーションも見えず、 太陽が半分程昇った頃に寝てしまいました(笑)。 その後、午後の香港から夜の日本へ帰る機上でも狙ってみましたが、 水平線上のグラデーションもグリーンフラッシュも見れませんでした。 聞いた話では、ハワイ路線でもグリーンフラッシュが見れる可能性があるそうです。 ヨーロッパ方面から帰国する人と、ハワイへ行く人は日没をしっかり見ましょう。 ただし、時差ぼけには気をつけて(笑)。

[[ おしまい ]]



●中谷さんからは、この他にも旅行中に撮影されたたくさんの写真や思い出をお送りいただきました。こちらのページからご覧いただくことができます。