Meade LX90-20 テストリポート2 昼間の金星編はこちら 2001.3.8 (有)スターゲイズ 船本 Meadeから、新しい自動導入望遠鏡が発売されました。Meadeが創業以来製造している20cmシュミカセのニューモデルで、これまでのフラッグシップモデルLX200の普及版としての位置づけから「LX90」という番号が付けられていますが、近年Meadeがリリースしてきた天体自動導入コンピュータ「オートスター」を20cmシュミカセに接続できるようにしたもので、機能的には、LX200を凌ぐものを持っており、大きな期待を持って実機の到着を待ちました。 3月5日に届いたLX90-20を、早速組み立ててテスト稼働してみました。組立はLX200同様いたって簡単で、三脚の上に架台と鏡筒がひとつになったユニットを付けるだけ。ユニットを持つと、LX200より圧倒的に軽くなっていることに気がつきます。鏡筒はこれまでのLXシリーズから一新され、余分なリブがなくなりスマートな外観になっている。対物キャップもプラスチックのハメコミ式に変わっている。 動作テストが終わったところで、天候をにらんで実際に星のもとでテストをするために、長野県野辺山のペンションに向かうことにしました。ここには当社のデモ機としてLX200-20を貸し出しているので、この2台での比較をするのも目的です。今年の野辺山は大変な大雪で、ペンションへの道も一面の雪に覆われていました。天候はときどき雲が通過するもののまずまずの天気。風が非常に強く、気流はかなり悪いようです。 21:00ごろからテスト開始。まずは望遠鏡を外に出し温度になじませる。乾電池駆動のため、気温による能力低下の影響はきちんとテストする必要がある。この時点での気温は氷点下9度でした。15分後に電源を投入し、オートスターの表示通りにセッティングをはじめる。液晶の表示は若干遅いものの、きちんと表示されている。ホームポジション(北の地平線)にだいたいセットし、「イージー」モードで自動的に基準星を検索し移動開始。1つめの基準星は少し西に傾いたアルデバランに向かった。近くまで行ったところで一旦停止し、そこから微動を繰り返してしばらくするとアルデバランを中心に入れる指示が出る。モーターの回転は非常にスムーズで、ETXやDSシリーズでは必要なギアの遊びを補正する「トレーニング」も必要ないようだ。視野の中心にアルデバランを入れEnterキーを押すと、、続いて自動的に次の基準星を検索してカペラへ移動。子午線をはさむため半周する。これも中心に入れてEnterを押すと、「アライメント セイコウ」と表示されて準備完了。ここまでの動作はETXやDS用と同じでした。 さて、問題の導入精度。今回はデジカメを接眼部に取りつけて、無修正の導入位置で画像を撮影して実用性を調べました。結果が以下の5枚の画像です。ベテルギウス・シリウス・プロキオンの3つはアライメント直後に連続して導入したもので、デジカメの狭い視野の中にしっかりとはいっているのがわかる。ベガとミザールは、この導入の後恒星時追尾のまま5時間放置してから(アライメントはし直していない)導入したもので、多少モーターの回転が鈍くなったものの、導入はしっかりとこなしているのがわかる。きちんとした基準星の設定とトレーニングを行えば、もっと高い導入精度を実現することも可能ではないかと思います。液晶画面もさすがにかなり動作が鈍くなっていましたが、実用的には問題ないレベルでした。
計測しています。LX90-20では、実際の導入はこの時間より1〜2秒早く完了しています。
これらの恒星の導入までにかかった時間は上記の表の通りです。さすがにLX200の速度にはかないませんが、この程度の時間を要しても実用上十分と考えられます。また、電源のことやモーターの静かさなどを考えれば、かなり良い数字が上がっているのではないかと感じています。 もうひとつ気になる見え味について。この日は非常に風が強く気流も安定しなかったため、終始星像は安定することがなく、分解能について直感的に判断することはできませんでしたが、昨日(3/7)改めてテストしてみると、いままでのLXシリーズとほぼ同等の見え味だと感じました。鏡筒の内面反射の処理がもうちょっと良ければ、コントラストは良くなるような気がします。 また、コントローラーの使い勝手について、星の名前は知っているという程度の女性に使ってみてもらいましたが、ほとんど助言することなくセッティングから導入まですることができました。それだけオートスターのナビゲーションも洗練されてきていると言えると思います。 最後に大きさと重さについて、LX200-20と比較してみると、この画像のように一回り小さくなったように見えます。アームはメインの部分のみがアルミダイキャスト製となり、モーターや基板などの収納されている部分はプラスチック製のカバーが付いています。これにより、実測で約5kgも軽くなっています 実際に使ってみての希望としては、専用のオプションパーツの充実をすれば、もっと魅力のある商品になると思います。日本では湿気の関係で夜露対策が必須になります。対物フードに軽量で安価な物を是非用意して欲しいと思います。また、三脚がLX200-20と同等というのは、安定面では非常に良いことなのですが、実際に持ち運びをするとなるともうちょっと小型で軽量な物があると、より使いやすいと思います。是非メーカーさんに検討していただければと思います。 これらを総合して、かなり洗練された望遠鏡である印象を受けました。天体を見て楽しむことを主眼においたLXシリーズの新しいモデルとして、おすすめできるレベルに達していると思います。
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