ポーランドのワルシャワ大学観測所(Warsaw University Observatory)やアメリカのプリンストン大学(Princeton
University)等が共同で運用している全天自動捜索システムASAS(The All Sky Automated Survey)が1月1日(世界時)に撮影したデータに新彗星らしい天体が写っていることを、ワルシャワ大学観測所のGrzegorz
Pojmanski氏が発見しました。ASASの他のデータを確認したところ、12月29日と1月4日・5日の画像にもこの彗星が移動して写っており、徐々に明るくなっているもようです。詳しくは以下のページをご参照ください。
●ASAS Alert Service
http://www.astrouw.edu.pl/cgi-asas/asas_mkframes/asas_alerts_intro.html,ALERTS.comet
●ASASで撮影された彗星の画像
http://www.astrouw.edu.pl/~gp/asas/asas_c2006.html
12月28日15時45分(日本時間)にASASで撮影された画像では、明るさは13.20等で、赤経21h50m29s
赤緯-69°40.6(2000年分点)付近にあり、1月5日15時52分には赤経21h28m45s 赤緯-67°08.8'付近に移動し、明るさは11.92等と観測されていますから、少しずつ東北東に移動しているもようです。位置的にはインディアン座とくじゃく座の境界線付近になり、現在は日本からは見ることはできません。
現在までの位置から軌道を計算すると、この彗星は現在地球から1.5AU付近の距離にあり、2月20日ごろに太陽に0.5〜0.6AU付近まで接近する可能性があり、その後3月はじめごろに地球に0.7〜0.8AUまで接近し、このころ北半球でも明け方の東の空に良い条件で見られるかもしれません。
(1月5日 18:20) その後、この彗星は12月25日から太陽観測衛星SOHOのSWAN画像にも写っていたことがわかり、これらの観測からこの彗星はC/2006A1の符号が確定し、最初に彗星を画像上から発見したPojmanski氏の独立発見と認定され、Pojmanski彗星と命名されました。
これらの観測から、計算された暫定軌道は以下のとおりです。この軌道は昨日書いた上記の位置関係と一致します。日本からは、3月上旬に明け方の東の空で7等級程度まで明るくなることが予想されます。
(1月6日 10:20) ニュージーランドのアマチュア天文家John Drummond氏が、1月6日にデジカメ一眼+41cmF4.5反射望遠鏡で撮影したこの彗星の画像が、同氏のHomePageのこちらにて公開されています。同氏は撮影された写真から明るさを10.5等と見積もっています。中央集光を伴った青白い拡散状天体として写っています。
(1月6日 22:00)
1月8日に国際天文連合の小惑星センターから発表されたMPEC 2006-A40による軌道要素は以下のとおりです。世界各地の天文台の計測光度は比較的暗めで、特に核光度は15等前後と暗いため、彗星がかなり拡散した天体であることがわかります。このため、小望遠鏡で撮影した方が明るく写ると思われます。
(1月11日 11:40)
オーストラリアやニュージーランドのアマチュア観測家からは、すでに6等級で見えているという報告も相次いでいます。オーストラリアのTerry
Lovejoy氏のHomePageのこちらの写真では、すでに淡いながら尾をひいている様子も見ることができます。
(2月5日 13:00)
すでにこれまでに紹介しているニュージーランドのJohn Drummond氏のHomePageのこちらの写真やオーストラリアのTerry Lovejoy氏のHomePageのこちらの写真では、長く美しい尾をひいている様子が見られ、明るさも5〜6等程度と報告されています。ます。どちらも強い月明かりや薄明の中での撮影でもここまで写されていることを考えると、今週末以後月明の影響が無くなると、もっと美しい姿を見せてくれるのでないでしょうか?。
日本でも今週末ごろから観測可能になると思います。以下にファインディグチャートを掲載しますので、是非ご自身の目で確かめてみてください!。
(2月23日 12:00)
2月28日のポユマンスキ彗星(C/2006A1)
栃木県那須町にて撮影
デジカメ一眼レフ+85mmF2→F2.8 2分露出
Meade
LXD75赤道儀に同架 |
2月28日のポユマンスキ彗星(C/2006A1)
栃木県那須町にて撮影
デジカメ一眼レフ+300mmF4 1分露出
Meade
LXD75赤道儀に同架 |
●2月28日の写真(上の2枚)について
関東地方はこのところお天気が悪く、なかなか彗星をとらえることができなかったのですが、今日がいちばん晴れの可能性が高いと考えて、朝の那須へ足を運びました。地平線近くにには雲があり、彗星の姿を確認できたのは薄明がはじまる直前だったため、カメラの構図やピントを追い込む時間がなく、ご覧のような少しぼけた画像になってしまいましたが、きれいに尾をひいた彗星の姿をとらえることができました。
明るさは全体光度で5等程度でしょうか?。肉眼では確認できませんでしたが、双眼鏡では尾をひいた姿を確認することができました。
右の写真は彗星が昇ってくるまでの間に撮影したおまけ写真です。
|
2月28日に国際天文連合天文電報局小惑星センターより発表されたMPEC 2006-D63によると、その後の継続した観測により、この彗星は周期彗星であることがわかりました。軌道要素はこのページの一番下をご参照下さい。この軌道によると、約11万年の周期ということになります。
(3月3日 10:00) ■彗星のみつけかた
●3月17日〜3月27日の明け方4時30分ごろの東の空
このファインディングチャートは東京での日の出約1時間前の午前4時30分ごろの東の空の図です。大阪では約20分後・福岡では約40分後がほぼ同じ空になります。彗星は、太陽が昇る直前の地平線近くに見えています。チャートの水色の●が彗星の位置を示します。
現在彗星は地球から遠ざかっており、6〜7等級で観測されていますが、地平線から彗星が昇ってから太陽が昇ってくるまでのわずかな時間に彗星を見つける必要があるため、北東の空が開けた山の上などが最も観測に適しています。また、これからしばらくは明け方の空に月があるため、淡い彗星を見るには少し条件が悪いかもしれません。しかし、彗星は十分な明るさを持っているので、双眼鏡でも十分見ることがでできると思います。
今週末ごろははくちょう座東部からとかげ座にかけて少しずつ北上しています。はくちょう座のデネブ(αCyg)やペガスス座のシェアト(βPeg)・ペガスス座π星(πPeg
4.3等星)・カシオペア座β星(βCas)を目印にして、その下の地平線付近を探してみてください。
彗星を見つけるときは、など、なるべく口径が大きく視野の広い(倍率の低い)双眼鏡や、2インチ広視界アイピースや焦点距離の長いアイピースを使って倍率を低くした望遠鏡で探してください。望遠鏡の場合は、彗星はファインダーでも十分見つけられる明るさですから、チャートを参考にその周囲を探してみてください。
彗星の座標(日本時間午前4時30分の位置) |
日付 |
赤経(R.A.) |
赤緯(Dec.) |
3/17 |
21h19m.6 |
+29゜32' |
3/18 |
21h24m.1 |
+31゜22' |
3/19 |
21h28m.7 |
+33゜06' |
3/20 |
21h33m.3 |
+34゜46' |
3/21 |
21h38m.0 |
+36゜20' |
3/22 |
21h42m.7 |
+37゜49' |
3/23 |
21h47m.4 |
+39゜14' |
3/24 |
21h52m.2 |
+40゜34' |
3/25 |
21h57m.0 |
+41゜50' |
3/26 |
22h01m.8 |
+43゜03' |
3/27 |
22h06m.6 |
+44゜11' |
|
天体自動導入望遠鏡をお使いの方は、左の表から、各日付の座標を入力してください。観測する時間による位置の差はほとんど考慮しなくても良いでしょう。
●Meade オートスターの場合
テンタイ→ユーザーテンタイ→ツイカで右の座標を入力してから、その追加したデータを「センタク」して自動導入
※#497オートスターVer.2.3以前および#494オートスターVer.1.1以前のモデルでは、タイヨウケイ→スイセイ(コメット)で軌道要素を入力する方法では、正確な位置を計算できません。上の方法でその日ごとに入力してください。
|
Pojmanski 彗星(C/2006 A1) 軌道要素
元期 = 2006/03/06.0(TT) = JDT 2453800.5
近日点通過 = 2006/02/22.18158 (TT)
近日点距離 = 0.5553965 AU
近日点引数 = 351.18786
昇交点黄経 = 211.34279 (2000.0)
軌道傾斜角 = 92.73593
離心率 = 0.9997686
(Calculated by Brian G. Marsden from MPEC 2006-E43)
|