アメリカ ハワイ大学天文学研究所が主体となって、太陽系小天体の探索等を目的として進められているパンスターズ(Pan-STARRS = Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System)プロジェクトが、マウイ島ハレアカラ山に設置した口径1.8mのPS1望遠鏡で、5月21日にりゅう座付近を撮影した4枚の画像に、20.8〜21.1等の移動する彗星のような天体があるのを検出しました。
この発見を受け、翌日の22日に各国の天文台等により確認観測がされました。各国の天文台等の観測で得られた画像からも「明らかな彗星」であることが確認されており、この天体は新彗星としての確定符号C/2017 K2(2017年5月後半に発見された2番目の彗星)がつけられました。
6月6日までの観測データから、現在彗星は約16AUの距離にあることがわかり、6年後の2023年4月ごろに太陽に約1.7AUまで接近することがわかりました。また、地球の軌道面に対してほぼ直角の軌道を持ち、周期365年程度の長周期彗星であることもわかりました。
※2023年4月20日には、オーストラリア北西部〜インドネシアの西パプア州・ビアク島・オセアニア北部で金環皆既日食があります。
16AUというと、天王星(18AU〜20AU)より少し近いくらいの距離ですが、ハレー彗星(1P)を1994年1月にチリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO: European Southern Observatory)の3.6m NTT望遠鏡で観測したときが約18AUで26.5等ですから、これと比較してもかなり大きな天体であることが想像できます。
但し、まだ距離が遠く観測期間も短いため、正確な軌道は求められていません。また、世界各国の確認観測では、18.8等から21.3等と明るさにばらつきがあり、現時点ではこの彗星がどの程度の大きさがあるかはわかりませんが、現在見えている明るさと軌道から単純に予想した場合、5〜6等と肉眼でも見えるほどに明るくなるかもしれません。
各天文台などが積極的に観測を続けていますので、1ヶ月程度でより正確な軌道がわかることと思います。引き続き注目していきましょう。
(2017年6月8日 15:00)
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6月18日に国際天文連合小惑星センター(The International Astronomical Union (IAU) Minor Planet Center (MPC))からリリースされた軌道によると、近日点通過が若干早まって1月中旬になりましたが、近日点距離は遠ざかって1.8AU程度になり、軌道がより細長くなって、周期は約2800年・遠日点距離約400AUと大幅に長くなってます。
この軌道だと、2022年の夏ごろへびつかい座付近を移動していき、このころ地球に最も近づく(約2AU)ので、日本からは比較的条件がよくなりますが、近日点通過時はくじゃく座になり、太陽の向こう側になってしまうため、南半球でも条件はよくありません。
これまでは、天文台などの比較的大きな望遠鏡での観測が主でしたが、彗星の軌道が注目されるようになってからセミプロやアマチュアからの観測報告が多く入るようになっていて、口径20cmの望遠鏡での観測報告もあります。日本では、鳥取県鳥取市のさじアストロパーク佐治天文台の織部 隆明さんが103cm反射望遠鏡(キラット望遠鏡)で6月14日に18.4等・高知県芸西村の芸西天文台の関 勉さんが6月15日に70cm反射望遠鏡で19.0等と観測しています。
総じて、口径が大きい望遠鏡では暗く観測され、口径の小さい望遠鏡では明るく観測される傾向があるようです。おそらく、彗星のような拡散状の大きさのある天体の場合、結像面での拡大率の大小が原因で、拡大率が大きいほうが面積単位での明るさが低下するため、暗く観測されているのではないかと思います。アマチュアの望遠鏡で観測できる限界に近い明るさで、星が少ない領域に彗星がいるので、是非観測にチャレンジしてみてください。
(2017年6月21日 12:00) |
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7月1日に国際天文連合小惑星センター(The International Astronomical Union (IAU) Minor Planet Center (MPC))からリリースされた軌道によると、近日点通過がさらに早まって2022年12月になりましたが、近日点距離はほとんどかわらず、軌道は開いて双曲線になってます。
この軌道だと、2022年の夏ごろへびつかい座からさそり座付近を移動していき、このころ地球に最も近づく(約2AU)ので、日本からは比較的条件がよくなりますが、近日点通過時はさいだん座からくじゃく座付近になり、太陽の向こう側になってしまうため、南半球でも条件はよくありません。
(2017年7月2日 8:00) |
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明け方の東の空の月と惑星が並んでいる様子を撮影しにいくついでに、太陽に接近してきたC/2017 K2彗星を撮影してきました。現在約2.9AUまで近づいてきていて、この12月に太陽に約1.8AUまで近づきます。地球からは7月14日に約1.8AUまで近づきますが、その後は太陽の向こう側に行ってしまうため、残念ながらあまり条件は良くありません。
この写真から見た感じとこれからの彗星の位置を考えると、残念ながら今後あまり明るくなることはなさそうです。
(2022年4月25日) |
4月25日のC/2017 K2(Pan-STARRS)彗星
右下の星団はNGC6709
Celestron Nexstar Evolution-J + HyperStar
マイクロフォーサーズミラーレスカメラ 30秒露出
埼玉県堂平山にて撮影 |
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異常に早い梅雨明けと同時に猛暑になってしまった事務所を抜け出して、野辺山まで行ってきました。彗星は、もうじき地球への再接近(約1.8AU)になりますが、明るさはほぼ予想通りで、肉眼で見えるほどまで明るくなることは期待できなさそうです。
それでも、望遠鏡では彗星らしい姿を見ることができ、写真に撮るとある程度の焦点距離より長くなれば、見ごたえのある画像が得られます。
現在彗星はへびつかい座を南に移動していて、ちょうど地球最接近の7月15日ごろには、球状星団M10に見かけ上大接近します。少し長めの焦点距離で狙うと、良い対比になるのではないでしょうか?。
(2022年6月30日) |
6月29日のC/2017 K2(Pan-STARRS)彗星
Celestron Nexstar Evolution-J + HyperStar
APS-Cミラーレスカメラ 30秒露出
長野県野辺山高原にて撮影 |
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Pan-STARRS彗星(C/2017 K2) 軌道要素
近日点通過 = 2022/12/19.98688 (TT)
近日点距離 = 1.7967014 AU
近日点引数 = 236.20854
昇交点黄経 = 88.23485 (2000.0)
軌道傾斜角 = 87.56315
離心率 = 1.0007451
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(Ephemeris from M.P.E.C. 2017-N58 Culculated by G. V. Williams ) |