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4月1日(土)夕方
アルデバランが月に隠される

●当日、当社の事務所のある埼玉では、残念ながら濃い雲の中で、アルデバラン食を見ることができませんでした。次回、夜に見られる一等星の食は、10月10日未明に北日本で見られるアルデバラン食と、11月11日深夜に関東以北で見られるレグルス食になります。

 4月1日(土)夕方、おうし座の一等星アルデバラン(65光年)が月に隠される「星食」という現象が見られます。
2017年1月9日に見られたアルデバラン食の様子  
クリックすると当日の様子の動画も見ることができます→

 星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。

 有名なところでは、「日食」と「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の前に月が入り込んでくることによって、太陽が月に直接隠される現象です。太陽と月と地球上での見る場所の位置関係により、太陽全体が隠されるものを皆既日食・見かけ上太陽の中に月がすっぽり収まってしまい、リング状に太陽の光が見える金環日食・太陽の一部だけが月に隠される部分日食の3種類があり、昨年3月9日には、日本で見られるものとしては4年ぶりとなる部分日食がありました。

 一方「月食」は、太陽の光によって照らされている月が、地球の影の中に入ることによって見えなくなる現象です。日食とは違って、直接月を何かの天体が隠しているわけではありません。しかし、ちょっと視点を変えると、月から見たときに、太陽が地球によって遮られている状態、つまり月での日食が起こっていると考えられるわけです。最近日本で見られた月食は、2015年4月4日皆既月食が見られました。

 これらの「食」は、宇宙空間での天体の位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、より遠方にある天体が隠されることを差しています。日食の場合は、太陽・月・地球の順に並んだ時に起こり、月食の場合は、太陽・地球・月の順に直線に並んだときに起こることになります。

 なぜ、このように天体と天体が一直線上に並び、日食や月食が起こるのでしょうか?。その理由は月の公転が大きく関係します。月は地球のまわりを約一カ月かけて一周しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。

 その天球上を移動している月が、私たちからの見かけ上恒星の手前を通過するときに星食が起こります。今回のアルデバラン食では、アルデバラン・月・地球が一直線上に並び、見かけ上アルデバランの手前に月が入り込んでくることにより、月がアルデバランを隠す現象です。

●どこで、どうやって見える?

 今回のアルデバラン食は、4月1日(土)の夕方、西の空の高いところにある月が、アルデバランを隠します。下の図は、東京でのその様子をシミュレーションしたものです。

2017年4月1日の東京でのアルデバラン食の様子
太陽が沈んだあとの夕焼け空の高いところに見える月のすぐ近くに、
隠される前のアルデバランが見えます。
月の位置の関係で、日本国内でも場所によって見え方が少し異なります

2017年4月1日(土) アルデバラン食の時刻(日本時間)

地名

日没

暗縁潜入

明縁出現

札幌

18:01

18:43

19:45

仙台

18:00

18:45

19:52

東京

18:03

18:45

19:53

大阪

18:19

18:40

19:50

福岡

18:39

18:33

19:45

鹿児島

18:37

18:36

19:45

那覇

18:46 18:43 19:36
明縁とは、月の太陽に照らされている(光っている)側の縁のことをいい、暗縁とは、月の太陽に照らされていない(光っていない)側の縁のことをいいます。暗縁に潜入する瞬間ははっきりと見ることができますが、明縁から出現する瞬間は月が明るいため見つけにくいです。
 上の表は、全国の主な都市でのアルデバランが月に隠される時間です。1日(土)に太陽が沈んだあと、空の高いところに見える月のすぐ近くに、アルデバランが光っているのが見えます。ただし、中国地方以西では、アルデバランが月に隠されるときには、まだ太陽が沈んでいないため、肉眼ではアルデバランを確認できないかもしれません。
 月は時間とともにアルデバランに接近して隠し、さらに1時間ぐらい経つと、再び月の後ろから現れます特に潜入の時が最も見やすい現象になります。この時間には、月は西の空の高いところにありますから、月が見える場所であればどこでも観測できます。

2017年4月1日のアルデバラン食の各地での潜入・出現の位置
月面の傾きは、東京で19時30分ごろに西の空を見上げたときの角度に合わせてあります。
時間と場所によって多少月面の傾きが変わりますが、
潜入・出現の位置は月面座標に対してマッピングしています。

 アルデバランの潜入と出現の場所を示したのが上の図です。月面の模様を参考にして、記載の時間の2分くらい前からアルデバランが潜入・出現する位置を注意深く見ていると、突然「ふっ」とアルデバランが潜入・出現する様子を見ることができるはずです

 今回は月齢4と月が比較的細いため、肉眼でもアルデバランが隠される瞬間を見ることができそうです。さらに、双眼鏡や天体望遠鏡を使えば、月の向こう側にふっと消える瞬間や出現したりする様子も容易に捉えることができるはずです。
●今年は一等星の食の当たり年!

 全天には21の一等星がありますが、このうち月に隠される可能性があるのは、今回のおうし座のアルデバランの他に、しし座のレグルスおとめ座のスピカさそり座のアンタレスの4つしかありません。星食は月によってそのはるか向こうにある星が隠される現象ですから、天球上で月が地球からの見かけ上通る道(白道といいます)の近くにある星しか隠されないのです。

天球上での月の通り道(白道)が毎年変わる様子
クリックすると拡大します
1年分の月の通り道の移り変わりと、
4つの一等星がどの時期に月に隠されるかがわかります
 しかし、実際には天球上の月の通り道は毎回少しずつ変わっています。これは、月が地球のまわりをまわっている軌道面が、地球が太陽のまわりをまわっている軌道面(黄道面・・・黄道=天球上で太陽が地球からの見かけ上通る道)に対して約5゜傾いていて、その傾く方角が約18年周期で変わるために起こります。このため、月に隠される星はいつも同じ星ではなく、ある期間に限って隠される現象が見られることになります。

 さらに、月は地球から最も近い「星」で、地球上の見る場所によっても天球上での位置が変わりるため一等星の星食を良い条件で見られることは、非常にめずらしいことなのです。

月の軌道面の傾きが変わる様子
この傾きの周期が約18.2年
 今年は、今回も含めて5回のアルデバラン食が日本で見られ、さらに11月にはレグルスの食もあり、一等星の食の当たり年になります。今回はその中で最も良い条件になります。星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。当社の毎月の星空案内のコーナーでは、アルデバラン食はもちろん、星空を気軽に楽しむことができる双眼鏡や望遠鏡を用意しています。この機会に是非お求めいただき、ご自身の目で宇宙の星々が繰り広げるショーをお楽しみください。

商品は十分在庫をご用意しておりますが、現象の日時が近づくと、注文が殺到し品切れになることもあります。ご注文はお早めにお願い致します。

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