2006年3月10日に発表されたアメリカNASAのプレスリリースによると、1997年にアメリカNASAとヨーロッパESA・イタリア宇宙機構によって打ち上げられた土星探査機カッシーニが観測したデータから、土星の衛星のうちの一つエンケラドゥスの地下に、液体の水が存在する可能性があるという発表がありました。

2006年2月17日にカッシーニ探査機が撮影したエンケラドゥスから吹き出す氷
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Copyright NASA/JPL/Space Science Institute

エンケラドゥスは、18世紀イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェル(1738-1822)が1789年に発見した土星の衛星です。エンケラドゥスの他にも土星にはたくさんの衛星がありますが、そのうち最大の大きさのティタン（直径約5,150km）をはじめとしたいくつかの衛星は、地球から望遠鏡で見ることができます。エンケラドゥスはその中では比較的小さい直径502kmの衛星で、土星のまわりを1.37日かけて1周しています。 　今回、カッシーニが撮影した画像を見ると、エンケラドゥスの表面から何かが吹き出している様子が見られます。これを詳しく解析したところ、これが霧状になった氷であることが判明しました。 　太陽から遠く離れた土星付近の宇宙空間では、温度が低いため当然水は氷となって存在します。ところが、このように氷となって吹き出しているということは、衛星内部の比較的表面に近いところに液体の水が存在し、それが何らかの原因で表面に出てこのように吹き出していると考えられるのです。 　また、エンケラドゥスの表面は左の写真のように一見滑らかで、表面に何かが流れた跡のような模様を見ることができますが、その表面温度を走査したところ、部分的に温度の高いところが存在することもわかりました。

カッシーニ探査機が撮影した エンケラドゥス クリックすると、NASAのサイトの該当する画像のページにリンクします Copyright NASA/JPL/Space Science Institute

　このようなことから、エンケラドゥスの内部では何らかの流動的な変化が起きていることが考えられ、衛星内部の液体の水の中に何らかの生命体が存在することも考えられるわけです。また、カッシーニの観測により明らかになった、土星本体に酸素原子が多かったこととも関係するかもしれません。

　カッシーニは、一旦エンケラドゥスから離れて他の衛星等の探査に向かいますが、2008年春に接近して、さらに詳しい観測が行われることになります。

●エンケラドゥスを地球から見てみよう！

　これまでにも書いてきたように、エンケラドゥスは1789年に発見した衛星です。ですから、地球からも望遠鏡でその光を見ることができます。しかし、明るさは12等級と、小型の望遠鏡では見ることができません。20cmクラス以上の望遠鏡であれば、エンケラドゥスを含め土星のまわりをまわる衛星のいくつかをみることができます。

　上の画像は、Meade LX90-30等、30cmクラスの望遠鏡で土星を見たときのシミュレーションです。土星のまわりに7つの衛星がまわっている様子をみることができます。内側からミマス(13等)・エンケラドゥス(12等)・テティス(10等)・ディオネ(10等)・レア(10等)・ティタン(8等)・イアペトゥス(10〜12等)です。ティタンは、8cmクラスの小望遠鏡でも、土星のすぐ近くにいる様子が見えるはずです。

　この画像の各衛星の動きの1コマは1時間分ですから、時間をかけてみていれば、衛星が動いていく様子も見ることができるはずです。これから注目されるエンケラドゥスの姿、是非あなたの目で確かめてみてください！。

●参考リンク

アメリカNASA　土星探査機カッシーニ・ホイヘンス
上記の画像以外にも、氷が吹き出している様子の動画や温度走査の様子も見ることができます。
http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/main/index.html

ヨーロッパESA　土星探査機カッシーニ・ホイヘンス　
http://www.esa.int/SPECIALS/Cassini-Huygens/

日本JAXA　土星探査機カッシーニ・ホイヘンス
http://moon.jaxa.jp/ja/topics/cassini/index.html