アメリカNASAが1991年にスペースシャトルにて放出した、上層大気観測衛星UARSが、9月23日前後に大気圏に再突入し、一部が地上または海上に落下する可能性があります。各メディアでの報道により知った方から若干問い合わせがありましたので、情報としてこちらにまとめておきます。
●UARSとは?
オゾン層など、地球の大気のうち対流圏より高い上層部の大気の状況を観測するために、地球を周回していた人工衛星 Upper Atmosphere Research Satellite です。2005年に観測を終えて使用できなくなった後も地球の周りを周回していて、宇宙のごみ=スペースデブリの中でも大型のもののひとつです。
●いつ落下するの?
UARSは、観測終了後は地上からの制御ができなくなり、徐々に高度を下げてきていました。地球再突入の可能性についてNASAからアナウンスがあったのは9月8日で、その後も日に日に高度が下がってきています。下記のNASA UARSのページのRSSフィードにて、逐次状況を広報しています。
現時点では、その時刻は9月23日とその前後1日という予測だけで、場所の確定はできません。下記のNASA UARSのページでは、大気圏再突入の24時間前と12時間前・6時間前・2時間前に情報を更新するとしています。
●日本からは見られるの?
UARSは人工衛星の中でも比較的大きく、現在は220km〜240kmと高度も低いため、太陽が沈んだ後と昇る前の数時間程度の間に上空を通過するときには、夜空の中に太陽に照らされて光るのが見えます。下記のREAL TIME SATELLITE TRACKINGのページ(アメリカのアマチュア衛星愛好家 Ciprian Sufitchi 氏作成のサイト)等で、現在の衛星の位置や住んでいる場所からの見え方などを知ることができます。大気圏に再突入するときがたまたま日本上空やその近くであった場合、その様子を見ることができる可能性があります。
●日本に落ちる可能性はあるの?
あります。現在UARSは北緯約57度〜南緯約57度の間の軌道を約90分で地球を一周しているので、日本も衛星の軌道が通る範囲に入ります。NASAの推計では、衛星が大気圏に再突入する際には、約6トンの衛星が燃えながら26の部品に分解され、大半の部品は落下しながら燃え尽きてしまいますが、一部が燃え尽きずに地上に落下し、最大に見積もった場合で合計約500kgの部品が、約800km四方の範囲にばら撒かれる可能性があります。大気圏に再突入するときがたまたま日本上空やその近くであった場合、日本の陸地やその近海に落下する可能性はあります。
●落下物が人に当たる確率は?
NASAが9月8日の会見で発表した内容では、UARSの破片が地球上の「誰か」に当たる確率は約1/3200と推計しています。但しこれは全世界の面積と人口から計算したものですので、人口が密集している陸地近くに落下した場合は、より確率が高くなる可能性もあります。
●落下物は人に有害?
同じ宇宙からの落下物である隕石とは違って、もともと地上にあったものなので即害を及ぼす危険は低いですが、宇宙空間を長期にわたって周っていたものなので、宇宙線(放射線)などの影響を受けている可能性もまったく無いわけではありません。もし落下物を見つけた場合は、触ったりせずにまずは警察に届け出るようにしてください。
◆参照URL
NASA UARS
http://www.nasa.gov/mission_pages/uars/index.html
REAL TIME SATELLITE TRACKING
※アクセスが集中して大変つながりにくくなっています
http://www.n2yo.com/
文部科学省 衛星の落下に関する情報
(NASA UARSのRSSフィードを日本語訳したものを、公式facebookに掲載したものへのリンクもあります)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaihatu/satellite/index.htm
BINARY SPACE - Satellite Tracking
※上記のREAL TIME SATELLITE TRACKINGがつながりにくいため、代わりのサイトとして紹介します。スイスの人工衛星関連ソフトウェアの開発会社 BINARY SPACEの衛星追跡サイト。Microsoft Silverlight が必要ですが、最新の軌道要素から衛星の現在位置や1日の軌道を表示できます。
http://www.binary-space.com/satellitetracking/index.html
(9月20日 15:00→一部修正9月22日 16:30→リンク先追加9月24日 1:00)
上記のNASA UARSのページのRSSフィードにて公表されている最新情報(#9 日本時間9月23日11時01分発表)によると、アメリカ東部時間の9月23日午後から夕方にかけて、大気圏に再突入する可能性が高いとのことです。この時間は日本時間では9月24日未明から昼過ぎにあたります。
この時間帯で日本付近を衛星が通過する時間は、1回目が深夜2時ごろに北海道北東沖のオホーツク海を北西から南東へ・2回目がその約90分後(深夜3時30分ごろ)に北陸から東海に向けて北西から南東へ・3回目がその約90分後(早朝5時少し前ごろ)八重山諸島付近を北西から南東へと移動します。その後は日本上空を通過することはありませんが、ヨーロッパから中東・東南アジア・オセアニア等の地域が通過域になります。
上記の2回目の通過は、太陽に照らされた衛星を夜空の中に見ることができる時間帯です。高度がだいぶ低くなってきていますので、大気圏再突入前でも明るく見える可能性があります。興味のある方は、この時間帯の夜空を注意してみてください。
東京都心では、3時25分〜30分にかけて、西から南西の空高くを通って南に通過していきます。この時間、南西の空高くには木星が見えていますが、それより少し低い空を通過していくでしょう。
但し、衛星はすでに大気の影響を受けているため、軌道は随時変化していきます。この軌道よりずれが生じ、時間の前後や見える空の位置が変わる可能性もあります。
(9月23日 14:00)
9月24日午前3時25分〜30分ごろの、東京都心でのUARSの通過予想経路(南西の空)
首都圏ではほぼこの図と同じ経路になると思われます。
軌道直下になる地域(北陸・東海地方)では天頂付近を通過、関西では北東の空に見えることになります。
NASA UARSのページのRSSフィードにて公表されている最新情報(#10 日本時間9月23日23時45分発表)によると、ここ数日衛星の高度を急激に下げていた原因のひとつである太陽活動(太陽風)が収まる傾向にあり、衛星が大気圏に再突入する時刻は、当初予測されていた時間より遅くなる見込みです。現時点で可能性が高いのは、アメリカ東部時間の9月23日夕方から24日の未明にかけてで、この時間は日本時間では9月24日午前から夕方にあたります。
この時間帯では、24日17時40分ごろに小笠原沖の太平洋を南西から北東に移動するまで、日本付近を衛星が通ることはありません。
但し、衛星はすでに大気の影響を受けているため、軌道は随時変化していきます。高度が低くなるにつれて地球を回る周期も少しずつ短くなるので、この時間より早く、東よりの海域を通過していく場合もあります。また、太陽風が収まりつつある状況から、落下日時がさらに遅くなった場合は、再び日本上空やその周辺を通過することになります。
(9月24日 00:20)
NASA UARSのページのRSSフィードにて公表されている最新情報(#11 日本時間9月24日8時30分発表)によると、現在の衛星の高度は145km〜150kmとだいぶ低くなり、このままで行くとアメリカ東部時間の23日の深夜23時から24日未明の3時の間に大気圏に再突入するだろうとの予測です。この時間は日本時間では9月24日正午12時から夕方16時にあたります。
この時間帯では、24日17時40分ごろに小笠原沖の太平洋を南西から北東に移動するまで、日本付近を衛星が通ることはありません。
但し、衛星はすでに大気の影響を受けているため、軌道は随時変化していきます。高度が低くなるにつれて地球を回る周期も少しずつ短くなるので、この時間より早く、東よりの海域を通過していく場合もあります。また、太陽風が収まりつつある状況から、落下日時がさらに遅くなった場合は、再び日本上空やその周辺を通過することになります。
(9月24日 09:00)
北アメリカ航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense Command = NORAD)が運営している人工天体等の追跡をし軌道データを提供しているSpace-Track.Org に登録された最新データ(日本時間15時24分)によると、衛星は日本時間13時16分ごろにアメリカ西岸沖〜ハワイ沖の太平洋(北緯30.9度 西経141.1度)付近に落下したものと推測されます。但し、この時刻には最大で+/-53分の誤差が含まれているため、現在、正確な落下位置と時刻の確定を行っているとのことです。
(9月24日 17:30)
|