池谷-Zhang彗星がゆっくりと遠ざかっています (C/2002 C1)

 静岡県周智郡森町のアマチュア天文家 池谷 薫(いけや かおる)さんは、2月1日夕方18時50分(日本時間)ごろ、25cm反射望遠鏡で天体観測中、くじら座に9等の彗星状天体を眼視観測で発見しました。天体は発見後30分で北東方向に角度の5分の移動が観測されました。その約1時間半後の日本時間20時20分頃、中国の河南省開封市近郊のアマチュア天文家 張 大慶(Zhang Deking)さんも、同じ彗星を20cm反射望遠鏡で発見しました。

 この彗星は国際天文連合(IAU 本部ベルギー)により、上記2名の独立発見と認定れ、Ikeya-Zhang 彗星(C/2002 C1)として登録されました。

 発見者の池谷さんは、1963年はじめて彗星を発見して以来5年連続で新彗星を発見し、特に1965年9月に発見した池谷・関彗星(C/1965 S1)は、20世紀最大級の彗星として非常に有名です。今回の彗星は、1967年12月の池谷・関彗星(C/1967 Y1)以来35年ぶりの新彗星発見となります!。

 その後の世界各国からの観測によりこの彗星の軌道が計算され、3月18日(日本時間では19日)に太陽に最も近付き、そのあと4月29日ごろに地球に0.4AU(天文単位 1AU=地球と太陽の平均距離)まで接近することがわかりました。

 また、軌道も放物線ではなく300〜400年程度の長周期彗星であることがわかりました。現在の軌道を遡ると、前回は1667年に太陽に接近していることになり、これに最も近い1661年2月3日にポーランドでヘベリウスが出現を記録している彗星(C/1661C1)ではないかという推測がたてられています。さらに、677年に日本や中国などで出現が記録されている彗星同じものとする推測も出ています。
 しかし、いずれの出現もまだ軌道を連結することはできていません。一部のHomePageなどで上記のヘベリウスの彗星(C/1661C1)と同じ彗星と思われる出現の記録が和歌山と岐阜の古文書から見つかり、これが池谷-Zhang彗星(C/2002C1)と同じだとする記述がありますが、現在計算されている軌道では前回の回帰は1667年10月(誤差3〜4カ月)となるため、まだ計算上の同定はされていません。

 彗星は、3月19日太陽に最も接近したあと、その後4月29日に地球に最も接近し、現在は少しずつ遠ざかっています。5月24日現在、この彗星は6等程度で観測されています。NASA JPLのサーバにあるComet Observation Home Pageにも、世界各地で最近撮影されたこの彗星の画像が掲載されています。また、オーストリアのAstro Studioのサイトにも、Gerald Rhemann氏やMichael Jager氏の撮影したすばらしい彗星の姿が掲載されています。この姿を見ても、百武彗星を遠くから見ている感じをいだきますね。Ikeya-Zhang彗星は現在0.5AUの距離にあり、地球から徐々に遠ざかっていきます。是非あなたの目で彗星の姿を確かめてください!。

 この彗星は、日本からはこれからしばらくは一晩中見えるようになります。明るさも5等程度と双眼鏡でも充分見える明るさです。是非皆さんも観測してみてください。


4月14日の池谷-Zhang彗星

長野県南牧村にて
吾妻秀一氏撮影
クリックすると拡大画像になります
フレームをはみ出すほど長い尾が写っていますね
コダックPORTRA 800 135mmF4 5分露出2枚コンポジット


4月2日の池谷-Zhang彗星
栃木県藤原町にて当社スタッフ撮影
コダックGold800 200mmF4 3分露出2枚コンポジット


3月8日の池谷-Zhang彗星
埼玉県幸手市にて当社スタッフ撮影
薄明と低い透明度のため、とても
解像度の悪い写真になってしまいました・・・


Ikeya-Zhang 彗星(C/2002 C1) 軌道要素

元期       = 2002/03/27.0 (TT)

近日点通過 = 2002/03/18.97932 (TT)
近日点距離 = 0.5070584 AU
近日点引数 =   34.66495
昇交点黄経 =   93.37037 (2000.0)
軌道傾斜角 =   28.12161
離心率     = 0.9899541

(Calcurated Brian G. Marsden from MPEC 2002-H23)


■彗星のファインディングチャート

 彗星は現在、真夜中の天頂付近を移動していますので、これからの時期は一晩中みることができます。どの星図もクリックするとプリントアウトできる大きさになります。これまでは地平座標(地平線からまっすぐに見上げた位置)でチャートを作っていましたが、彗星が天頂から南の空に移動していきますので、南側からみた位置に書き換えています。まわりの星の位置関係を参考に、星図を回転したりして見やすい方法で探してみてください。
 彗星を見つけるときは、なるべく視野の広い(倍率の低い)双眼鏡や望遠鏡で探してください。望遠鏡の場合は、彗星はファインダーでも十分見つけられる明るさですから、チャートを参考にその周囲を探してみてください。

●5月15日〜5月30日の深夜の北東の空(24:00)
※星図中の彗星の位置を示す日にちは翌日の未明の日付になっています。


カラー版


プリントアウト用

 彗星は宵のうちは北東の空のに見えていて、午前0時ごろ最も高い位置にきます。このファインディングチャートは午前0時ごろの天頂付近空の様子です。夜空の暗い場所では、かんむり座やヘルクレス座を直接見つけることができますから、その星の並びを目印に探してください。都市部など夜空の明るい場所では、こと座α星ベガ(αLyr)とうしかい座α星アルクトゥルス(αBoo)・北斗七星の柄の先端になるおおぐま座η星アルカイド(ηUMa)から、ヘルクレス座やかんむり座の星を探してみてください。16日はヘルクレス座η星のすぐ近くに見えていますから、すぐ見つけることができるでしょう。
 5月16日〜19日にかけては、ヘルクレス座の球状星団M13の近くを通ります。この星団は北天で最も大きく美しい球状星団です。望遠鏡を近くに向けたついでに是非楽しんでください。また、5月25日にすぐ近くを通過するかんむり座T(T CrB)という星は、普段は望遠鏡でも見えないほど暗い(10.8等)星ですが、突然前触れも無く2等星まで明るくなる変光星として有名です。ついでに、近くにあるかんむり座R(R CrB)は、反対に普段は5.8等星ですが、突然11等星くらいまで暗くなってしまう変光星です。

彗星の座標(日本時間午前0時の位置)
宵の空で見るときは、1日後の日付の数値を入力してください。
日付 赤経(R.A.) 赤緯(Dec.)
5/24 16h04m.7 +28゜18'
5/25 16h01m.6 +27゜06'
5/26 15h58m.6 +25゜56'
5/27 15h55m.9 +24゜48'
5/28 15h53m.3 +23゜42'
5/29 15h50m.9 +22゜38'
5/30 15h48m.6 +21゜36'
5/31 15h46m.5 +20゜36'

■チャートの中にLINEAR彗星(C/2001WM1)も加えてありますが、こちらは現在10等程度で見えています。空のきれいなところで望遠鏡を使用すれば見ることができるでしょう。

 天体自動導入望遠鏡をお使いの方は、左の表から、各日付の座標を入力してください。時間による差はほとんど考慮しなくてもOKです。もし視野をのぞいて彗星が見つからない場合は、その周囲を探してみてください。

●Meade オートスターの場合
テンタイ→ユーザーテンタイ→ツイカで右の座標を入力してから、その追加したデータを「センタク」して自動導入
※タイヨウケイ→スイセイ(コメット)で軌道要素を入力する方法では、正確な位置を計算できません。上の方法でその日ごとに入力してください。

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