熊本県阿蘇郡南小国町の宇都宮章吾さんは、10/3に25倍150mm双眼鏡を使って彗星を捜索中に、ケフェウス座付近に10.5等の彗星状天体を発見しました。翌々日の10/5に移動した彗星の姿を確認し、報告を受けた東亜天文学会の中野主一氏の依頼により国内各地で同定観測され、仮符号C/1997T1が付与されました。
中野主一氏が報告を受けた観測から、以下のような暫定軌道が計算されました。これによると、近日点通過は12/10ですが、今後彗星は少しずつ南に移動し、11月に入ると日本からの観測はむずかしくなりそうです。また、地球との距離も10/11に1.006AUまで近づいたあと離れていってしまうため、今月中が観測の好期となります。まだ絶対観測数が少ないですから、継続的な観測が必要ですね。
10/10 19:1810/10 19:37MegaStar予報図
日時 :1997年10月10日 19:18(30sec) 19:37(60sec) (JST)
架台 :Meade LXD600赤道儀
光学系:ビクセンR200SS(D=200mm fl=800mm F=4) 直焦点
カメラ:武藤工業 CV−04
撮影地:当社ベランダ
地球からの距離が比較的近いため、案外彗星らしい姿をしていますね。広がって見えるために観測者によって光度の見積もりが異なるのもうなづけます。移動速度が早い彗星なので、わずか20分の撮影間隔でもこれだけ移動していることがわかりますね。
一番右の画像は、当社取り扱いソフト「MegaStar」で宇都宮彗星の軌道要素から出力した位置予報図です。観測の手引きとして非常に有用であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
宇都宮彗星 (C/1997T1) 軌道要素 (放物線)
近日点通過 = 1997/12/10.836(TT)
近日点距離 = 1.34933 AU
近日点引数 = 96.950
昇交点黄経 = 53.942 (2000.0)
軌道傾斜角 = 128.182
時刻/ 0h ET 赤経 (2000.0) 赤緯 Δ r 光度
1997 Oct. 4 23 16.2 +72 36.5 1.033 1.670 10.3
5 22 52.2 +72 14.2 1.026 1.662 10.3
6 22 29.2 +71 40.3 1.019 1.654 10.2
7 22 07.5 +70 55.6 1.014 1.646 10.2
8 21 47.5 +70 01.1 1.011 1.638 10.2
9 21 29.33 +68 58.2 1.008 1.630 10.1
10 21 12.89 +67 47.9 1.006 1.622 10.1
11 20 58.17 +66 31.6 1.006 1.614 10.1
12 20 45.02 +65 10.4 1.006 1.607 10.1
13 20 33.32 +63 45.3 1.008 1.599 10.1
14 20 22.90 +62 17.2 1.011 1.591 10.0
15 20 13.62 +60 46.9 1.015 1.584 10.0
16 20 05.35 +59 15.2 1.019 1.577 10.0
17 19 57.96 +57 42.7 1.025 1.569 10.0
18 19 51.34 +56 09.9 1.032 1.562 10.0
19 19 45.41 +54 37.2 1.040 1.555 10.0
20 19 40.07 +53 05.0 1.049 1.548 10.0
21 19 35.27 +51 33.7 1.058 1.541 10.0
22 19 30.92 +50 03.6 1.069 1.534 10.0
23 19 26.99 +48 34.8 1.080 1.527 10.0
24 19 23.43 +47 07.7 1.092 1.521 10.0
25 19 20.19 +45 42.3 1.105 1.514 10.0
26 19 17.24 +44 18.7 1.118 1.508 10.0
27 19 14.56 +42 57.1 1.133 1.501 10.0
28 19 12.10 +41 37.5 1.147 1.495 10.0
29 19 09.86 +40 20.0 1.163 1.489 10.1
(Ephemeris from IAUC6753 by S.Nakano)
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