彗星が相次いで接近中!
夕方の西の空に2つの彗星がが6〜7等級
(このページは随時更新します Last update 04/08/02 PM)

 「肉眼でも見える彗星になるか?!」。今年の天文現象の中でも特に注目されている2つの彗星、「NEAT彗星」(C/2001Q4)「LINEAR彗星」(C/2002T7)が、太陽と地球に接近し、さらに、それと期を合せるようにしてもうひとつ、「Bradfield彗星」(C/2004F4)も新たに発見されました。このように、3つの彗星が相次いで太陽と地球に接近し、肉眼でも見られるほど明るくなるのは、非常に珍しい現象と言えます。

3つの彗星が太陽と地球に接近する様子を、宇宙から見たシミュレーション画像
各天体の大きさは、見やすい大きさに変えてあります。
彗星の尾は延びる方向を示すもので、実際の長さは太陽に接近してからでないとわかりません。

 彗星の見え方は、地球や太陽との位置関係と距離により変わってきます。今回の彗星の中では、NEAT彗星(C/2001Q4)が太陽の反対側に位置して非常に条件がよく、日本では太陽に近づく5月から良い条件で見ることができます。

●NEAT彗星(C/2001Q4)

 アメリカNASAのJPL(ジェット推進研究所)のNEAT(Near-Earth Asterios Tracking:地球接近小惑星追跡)チームが、2001年8月24日と26日・27日にアメリカ カリフォルニア州のパロマ山天文台1.2m望遠鏡で差撮影したCCD画像から、ろ座に20.0等の彗星状天体を発見しました。この天体には国際天文連合によって仮符号C/2001Q4が付けられ、この彗星を「NEAT彗星」Comet C/2001 Q4 (NEAT)と命名しました。
 継続した観測計算された軌道により、この彗星はその当時11天文単位(土星軌道より外側)というとても遠いところにいることがわかり、2004年5月に近日点を通過する巨大彗星らしいことが判明しました。
 その後も順調に明るくなり、現在(7/22)夕方の北西の空の高いところで7等級で見ることができます。

5月7日夕のNEAT彗星(C/2001Q4)
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左上の星団はM47です

6月4日夕のNEAT彗星(C/2001Q4)
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6月17日夕のNEAT彗星(C/2001Q4)
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この画像のみ 栃木県那須岳峰の茶屋にて
スターゲイズ船本撮影

●LINEAR彗星(C/2002T7)

  アメリカ マサチューセッツ工科大学付属リンカーン研究所の地球接近小惑星(LINEAR = Lincoln Laboratory Near-Earth Asteroid Research)プロジェクトチームが、2002年10月14日にふたご座に17.5等の移動天体を発見され、同月下旬に他の天文台での同定観測により彗星状天体であることが判明し、彗星としての仮符号C/2002T7が付けられました。
 その後の観測データから、その当時彗星はまだ7AU(木星と土星軌道の中間付近)にいて、2004年4月に近日点通過し、肉眼でも見られるほど明るくなると期待されていました。
 その後も順調に明るくなり、今年1月までは日本からも観測されていましたが、太陽と同じ方角に向かってしまったためしばらく観測することができませんでした。4月下旬には一時日本でもとらえることができましたが、現在(7/12)、南下してしまうため、日本から見ることはできなくなっています。


4月25日朝のLINEAR彗星(C/2002T7)
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6月4日夕のLINEAR彗星(C/2002T7)
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●Bradfield彗星(C/2004F4)

 オートスラリア・サウスオーストラリア州Yankalilla在住のブラッドフィールド(Willliam A. Bradfield)氏は、3月23日と24日の夕方、25cm反射望遠鏡で眼視による天体観測中に、8等級の彗星状天体を発見しました。ブラッドフィールド氏はこれまでに17個の彗星を発見しているベテラン彗星探索家ですが、夕方の西の空に沈みかけた天体だったためその後の確認が取れず、今回の天体が新彗星であることが確認できませんでした。
  4月10日、今度は明け方の東の空にまわってきたこの彗星をブラッドフィールド氏自身が再発見し、同じオーストラリアのサイディングスプリング天文台でも確認され、この彗星は国際天文連合(IAU 本部ベルギー)により、ブラッドフィールド氏の独立発見と認定れ、Bradfield 彗星(C/2004 F4)として登録されました。ブラッドフィールド氏にとっては、9年ぶり18個めの新彗星発見となります。
 その後、彗星は再び太陽に接近し、4月16日から20日にかけて、太陽観測衛星SOHOの画像に写っていました(下記参照)。

 現在、すでに遠く離れてしまっているため、大きな口径の望遠鏡でないと見ることができなくなっています。


4月25日朝のBradfield彗星(C/2004F4)
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4月29日朝のBradfield彗星(C/2004F4)
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上記6枚とも、吾妻 秀一氏撮影
撮影地 4月25日:長野県野辺山高原 4月29日:富士山須走口五合目 5月7日・6月4日:富士山富士宮口五合目

コンパクトデジカメやデジタルビデオでも撮影できました


4月24日朝のBradfield彗星(C/2004F4)
地平線から山の稜線から昇って来たところを
デジタルビデオカメラ(キヤノンFV-M10)で撮影
クリックするとMPEG動画が見られます


4月25日朝のBradfield彗星(C/2004F4)
コンパクトデジカメ(カシオQV2900UX)にて撮影 3枚合成
この画像は、天体自動導入望遠鏡(Meade LX200GPS-25)の上にカメラを同架し、カメラのレンズでそのまま撮影したものです。この程度の明るさの天体であれば、デジカメやビデオでもそのまま撮影することができます。


5月7日夕のNEAT彗星(C/2001Q4)
コンパクトデジカメ(カシオQV2900UX)にて撮影 合成無し

■Bradfield彗星(C2004F4)が太陽観測衛星SOHOの画像を横切りました

 太陽観測衛星SOHO(The Solar and Heliospheric Observatory)は、アメリカNASAとヨーロッパ天文連合ESAが共同で打ち上げたもので、地球と太陽の重力が釣り合う「ラグランジュ点」と呼ばれるところを、地球と同じ周期で公転しながら、太陽を観測している人工衛星(というより人工惑星というほうが正しい?)です。アメリカ・ヨーロッパの各研究期間が開発した機材が搭載されていて、SOHOのHomePageでリアルタイムに観測された画像が写し出されています。
 このうち太陽周辺のコロナの活動を観測する「LASCO」(Large Angle and Spectrometric Coronagraph)の画像は、太陽とその背景にある星や惑星が同時に映し出されていて、コロナの瞬間的な活動も見られるため、見ていてとても面白い画像なのですが、このうちC3と呼ばれる最も広い範囲を写している画像に、Bradfield彗星(C/2004F4)が4月16日から4月20日まで写っていました

●SOHO The Solar and Heliospheric Observatory
  http://sohowww.nascom.nasa.gov/

 上記のサイトの左側メニューから「Latest Images」→「Near real time images」→「LASCO C3」と進むと、リアルタイム画像を見ることができます。
(右上画像 SOHO LASCO C3がとらえた世界時4月18日22:54(日本時間4月19日午前6:54)Bradfield彗星(C/2004F4)の太陽接近の様子 クリックすると視野を通り抜けるMPEG動画が見られます SOHO ワシントンオフィスの承認を得て掲載 Copyright SOHO Consortium, LASCO, ESA, NASA)

■彗星についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのページもご参照下さい。

■彗星のファインディングチャート

 彗星を見つけるときは、なるべく視野の広い(倍率の低い)双眼鏡や望遠鏡で探してください。望遠鏡の場合は、彗星はファインダーでも十分見つけられる明るさですから、チャートを参考にその周囲を探してみてください。

●8月2日〜8月17日の日没1時間後の西の空
 
◆NEAT彗星(C/2001Q4)&LINEAR彗星(C/2003K4)用(北西の高い空)
(2003年5月に発見されたLINEAR彗星(C/2003K4)も6〜7等級まで明るくなってきましたので、下のチャートに含めて紹介しています。8月までに6等くらいまで明るくなることが予想されています。)


カラー版


プリントアウト用

 このファインディングチャートは東京での午後8時00分ごろ(日没約1時間後)の北の空の様子です。まだ薄明が残っている空ですので、明るい星を目印にして、双眼鏡などで探してみてください。今週は宵のうちは月の影響も無くなりますので、月が昇る前に見るようにしましょう。

 NEAT彗星(C/2001Q4)は、比較的高いところに見えていますが、時間とともに低くなっていきますから、薄明が終わる20:30ごろが最も見やすい時間でしょう。彗星との距離が離れつつあるため、毎日の移動は少なくなってきています。上記のチャートの●は3日おきの位置を示します。しばらくは北斗七星のひしゃくの中に付近にいますから、用意に見つけられるでしょう。

 LINEAR彗星(C/2003K4)は、うしかい座の「のし」型の星の連なりの西側を移動していきます。彗星は少しずつ地球からは遠ざかっていきますが、太陽に近づくにつれて突発的現象が見られることがありますから、継続して観測するようにしましょう。

彗星の座標(日本時間午後8時00分の位置)
日付

NEAT彗星(C/2001Q4)

LINEAR彗星(C/2003K4)
赤経(R.A.) 赤緯(Dec.) 赤経(R.A.) 赤緯(Dec.)
8/2 11h23m.0 +59゜41 13h53m.3 +25゜24'
8/3 11h24m.9 +59゜49' 13h51m.0 +24゜44'
8/4 11h26m.8 +59゜56' 13h48m.7 +24゜03'
8/5 11h28m.7 +60゜03' 13h46m.6 +23゜23'
8/6 11h30m.7 +60゜11' 13h44m.5 +22゜44'
8/7 11h32m.7 +60゜18' 13h42m.5 +22゜04'
8/8 11h34m.7 +60゜25' 13h40m.6 +21゜26'
8/9 11h36m.7 +60゜33' 13h38m.7 +20゜47'
8/10 11h38m.8 +60゜40' 13h36m.9 +20゜09'
8/11 11h40m.9 +60゜48' 13h35m.2 +19゜32'
8/12 11h43m.0 +60゜55' 13h33m.5 +18゜54'
8/13 11h45m.1 +61゜03' 13h31m.9 +18゜18'
8/14 11h47m.2 +61゜10' 13h30m.3 +17゜41'
8/15 11h49m.4 +61゜18' 13h28m.8 +17゜05'
8/16 11h51m.6 +61゜25' 13h27m.4 +16゜30'
8/17 11h53m.9 +61゜33' 13h26m.0 +15゜54'

 天体自動導入望遠鏡をお使いの方は、左の表から、各日付の座標を入力してください。時間による差はほとんど考慮しなくてもOKです。もし視野をのぞいて彗星が見つからない場合は、その周囲を探してみてください。

●Meade オートスターの場合
テンタイ→ユーザーテンタイ→ツイカで右の座標を入力してから、その追加したデータを「センタク」して自動導入
※#497オートスターVer.2.3以前および#494オートスターVer.1.1以前のモデルでは、タイヨウケイ→スイセイ(コメット)で軌道要素を入力する方法では、正確な位置を計算できません。上の方法でその日ごとに入力してください。


LINEAR 彗星(C/2002 T7) 軌道要素

元期       = 2004/04/25.0 (TT)

近日点通過 = 2004/04/23.06137 (TT)
近日点距離 = 0.6145993 AU
近日点引数 =  157.73517
昇交点黄経 =   94.85775 (2000.0)
軌道傾斜角 =  160.58309
離心率     = 1.0005623

(from MPEC 2004-K65)
Bradfield 彗星(C/2004 F4) 軌道要素



近日点通過 = 2004/04/17.0901 (TT)
近日点距離 = 0.168270 AU
近日点引数 =  332.7867
昇交点黄経 =  222.7780 (2000.0)
軌道傾斜角 =   63.1646
離心率     = 0.999295

(from MPEC 2004-N07)
NEAT 彗星(C/2001 Q4) 軌道要素

元期       = 2004/06/04.0 (TT)

近日点通過 = 2004/05/15.96695 (TT)
近日点距離 = 0.9619595 AU
近日点引数 =    1.20629
昇交点黄経 =  210.27848 (2000.0)
軌道傾斜角 =   99.64258
離心率     = 1.0007470

(from MPEC 2004-K64)
LINEAR 彗星(C/2003 K4) 軌道要素

元期       = 2004/10/02.0 (TT)

近日点通過 = 2004/10/13.7066 (TT)
近日点距離 = 1.023580 AU
近日点引数 =  198.4420
昇交点黄経 =   18.6770 (2000.0)
軌道傾斜角 =  134.2533
離心率     = 1.023580

(from MPEC 49592)

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