太陽系最縁部に発見された巨大天体

 10月7日のNASAのプレスリリースで、冥王星より外側にある太陽系の最縁部に発見された、ある天体の大きさが測定されたことが発表されました。

 この天体(小惑星仮符号2002LM60)は、エッジワース・カイパーベルトとよばれる、海王星軌道付近から外側に帯状に存在する小惑星の一つと考えられています。カイパーベルトには、現在軌道が確定しているものだけでも約500個ほどの小惑星があり、現在では冥王星もこの中の特に大きな天体であると位置づけられています。
 この2002LM60は、アメリカ・カリフォルニア工科大学のC. A. Trujillo氏・Mike Brown氏らが今年の6月にアメリカのパロマ山天文台の1.2mシュミットカメラにより発見した天体です。太陽から遠いカイパーベルト天体は、地上からの観測ではあまりに暗いためほとんど発見されることはありません。それが、18.6等と地上の光学望遠鏡で発見されるほど明るいのは、それが大きな天体であることを示しています。


カイパーベルトと主な太陽系天体の軌道
以前作成した図に2002LM60の軌道を書き加えたので、画面をはみ出してしまいました。

 この天体が発見されて以来、継続した観測により軌道が計算され、その軌道を遡ると1982年にオーストラリアのサイディング・スプリング天文台の1.2mシュミットカメラで撮影されたプレートや、それ以後にパロマ山やハワイのハレアカラで撮影された写真にもこの天体が写っていることがわかりました。それらを元に計算された軌道は、太陽からの距離約43.2AU(AU=天文単位 太陽と地球の平均距離が1AU)・軌道傾斜角(地球の軌道との傾斜)約8度の軌道を、ほぼ真円でまわっています。冥王星は最も太陽に近づいたときで27.2AU・最も遠いときで49.3AUの楕円軌道ですから、その中間の遠さということになります。また、冥王星は軌道傾斜角が17度もあり、他の惑星とはだいぶ違った軌道を描いています。むしろ、この2002LM60のほうが、他の惑星と同じ性質の軌道を描いていることになります。


主な太陽系天体の大きさの比較
火星軌道と木星軌道の間にある小惑星の中では、セレスは大きな天体で
ほとんどがアストレア以下の大きさです

 今回、この天体の大きさを求めるにあたり、地上からの光学観測では大気の影響で観測ができないため、宇宙空間に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡で拡大像を得ることにより、その絶対的な大きさを測定しました。また、スペインのIRAM望遠鏡での電波観測により、この天体の温度を測定する方法でも検証を行いました。その結果、大きさは直径約1,250kmであることがわかりました。冥王星は2,400kmですからその半分以上、地球の約1/10の大きさを持つことになります。

 今後、この天体に関する研究はさらに進められると思いますが、その距離や大きさ・軌道などから、ケプラーの第三法則との関連も含めて、海王星の外側を真円でまわる惑星として注目すべき天体であることは間違いないでしょう。

 この天体は、発見者たちが仮の名前としてアメリカ原住民の伝説に出てくる創造の神「Quaoar」と名づけています。正式な命名は国際天文連合による承認により行われます。[追記:後日正式に小惑星番号50000 名称Quaoarとして承認されました]

●参考リンク

カリフォルニア工科大学 "Frequently Asked Questions About Quaoar"
(大きさの比較や軌道図 発見時の画像の移動の様子が見られます)
http://www.gps.caltech.edu/~chad/quaoar/

ハッブル宇宙望遠鏡 "Hubble Spots an Icy World Far Beyond Pluto "
http://oposite.stsci.edu/pubinfo/pr/2002/17/


小惑星2002LM60 軌道要素 元期 = 2002/11.22.0 (TT) 平均近点角 = 263.32417 平均日々運動 = 0.00347310 軌道長半径 = 43.1841920 AU 離心率 = 0.0357187 近日点引数 = 162.85255 昇交点黄経 = 188.89794 (2000.0) 軌道傾斜角 = 7.99079 周期 = 約284年 (Calcurated Brian G. Marsden from MPEC 2002-T34)

簡単アンケートにご協力下さい
 このページの内容は おもしろかった ふつう おもしろくなかった
  ためになった ふつう ためにならなかった
  わかりやすかった ふつう わかりにくかった
 将来宇宙旅行に 行ってみたい思う わからない 行きたくない思う
 望遠鏡や双眼鏡を 望遠鏡を持っている 双眼鏡をもっている どちらも持っている
  どちらも持っていない    
 ひとことどうぞ

このボタンを押しても、あなたの個人情報などは送信されません




最近の天文現象・新天体情報等へ戻る