事務所ベランダから見たカノープス

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●カノープスについて

 カノープスは、冬の夜空に見えるオリオン座やおおいぬ座のさらに南に位置する星座のりゅうこつ座の1等星で、全天の星座を作っている恒星の中では、おおいぬ座のシリウス(-1.5等星)の次に明るい-0.7等星の星です。シリウスと同じように青白く光る星で、南半球の星空ではとても目立つ星です。りゅうこつ座は、ギリシャ神話に出てくる「アルゴ船」の船尾につけられたお守りのようなもので、りゅうこつ座を含めてこの付近にはアルゴ船の全体がそれぞれ別の星座として描かれています。

 日本では、北緯38度付近より南側で、カノープスが南中する前後のほんのわずかの時間しか見ることができません。東京や大阪では、地平線の上にのぼっている時間は1時間から2時間程度で、それも地平線すれすれのところのためなかなか見ることができません。また、全天2番目の明るさの青白い星でありながら、このように低空のため大気の影響によりとても暗く、赤っぽく見えています。

 関東地方でも、高い山の上や高層ビルに行けば見ることができるわけですが、皆さんのお住まいの近くでも、マンションのベランダなどの見晴しの良い南側の場所ならば、見つけることができるかもしれません。是非チャレンジしてみてください!。低空のため、飛行機や漁船と間違えてしまうことも多いですが、星はまたたいていますし、飛行機のように周期的な点滅をすることはありません。また、少し時間をおいて見てみると、日周運動で移動するので区別することができるはずです。

●写真について

 当社の事務所のある場所は南に大きくたんぼが開けており、点在する林や民家以外には山や大きな建物もありません。南中時のカノープスの高度は計算上2.5度ほどですから、関東平野の中では特に高い建物が無い限り見えるはずなのです。

 この2枚の写真を見比べていただいてもわかるように、ここからは真南に東京の街明かりがあります。実際、この写真の右端の最も明るい部分を双眼鏡で見てみると、新宿の高層ビル群を見つけることができます。新宿までの距離は直線で約40kmあります。しかし、そこまでは何の遮蔽物も無いわけです。

 ミニラボでプリントされた写真(写真右とほぼ同じ)では東京の光の中は真っ白ですが、実際にはネガにカノープスの姿が捉えられています。それを、シリウスといっしょに見ることができるように画像処理したものが左の写真です。下の矢印の先にある、電線の下に赤く日周運動を描いているのがそれで、大気の影響により低空で赤く変移して光るカノープスを浮かび上がらせています。肉眼や双眼鏡でははっきりと捉えることができていますから、もう少し露出時間を短く抑えれば、もっと鮮明に写し出すこともできるかもしれません。

 撮影データ

 撮影地:当社事務所2階ベランダ(埼玉県北葛飾郡杉戸町 北緯36度2分 東経139度48分)
 撮影時刻:2002年1月9日 22:31〜22:41 10分露出
 撮影カメラ・レンズ:ペンタックスLX SMCペンタックスM 35mmF2.8 絞りF4
 撮影フィルム:コニカセンチュリア400 標準ラボ現像
 画像処理:ネガフィルムをフラットベッドスキャナ(透過原稿ユニット付)1600dpi 16bit×3色で読み取り
      ガウスフィルタ→反転した画像を合成して光害除去