●星食とは? |
星食のお話をする前に、天文現象で言う「食」についてお話しておきましょう。文字通り、天体が「食べられる」現象のことをいいます。もちろん、誰かが星をパクパク食べてしまうわけではないので、何らかの自然現象が起きるわけです。
有名なところでは、「日食」と「月食」があります。日食は、地球からの見かけ上太陽の前に月が入り込んでくることによって、太陽が月に直接隠される現象です。太陽と月と地球上での見る場所の位置関係により、太陽全体が隠されるものを皆既日食・見かけ上太陽の中に月がすっぽり収まってしまい、リング状に太陽の光が見える金環日食・太陽の一部だけが月に隠される部分日食の3種類があります。最近日本で見られた日食は、2020年6月21日に全国で部分日食が見られました。
一方「月食」は、太陽の光によって照らされている月が、地球の影の中に入ることによって見えなくなる現象です。日食とは違って、直接月を何かの天体が隠しているわけではありません。しかし、ちょっと視点を変えると、月から見たときに、太陽が地球によって遮られている状態、つまり月での日食が起こっていると考えられるわけです。最近日本で見られた月食は2021年11月19日の皆既月食がありました。
これらの「食」は、宇宙空間での天体の位置関係が相互に直線上に並ぶことによって、より遠方にある天体が隠されることを差しています。日食の場合は、太陽・月・地球の順に並んだ時に起こり、月食の場合は、太陽・地球・月の順に直線に並んだときに起こることになります。
なぜ、このように天体と天体が一直線上に並び、日食や月食が起こるのでしょうか?。その理由は月の公転が大きく関係します。月は地球のまわりを約一カ月かけて一周しています。それは地球上から見ると、天球上を少しずつ移動しているように見えることになります。ですから、その日・その時間で月の見える場所は少しずつ違っているわけです。
その天球上を移動している月が、私たちからの見かけ上その向こう側にある星の手前を通過するときに星食が起こります。今回の金星食は、金星・月・地球が一直線上に並び、見かけ上金星の手前に月が入り込んでくることにより、月が金星を隠す現象です。 |
●今回の金星食について |
今回の金星食は、5月27日(金)の午後、西の青空の中ほどにある細い月が、金星を隠します。金星食は、日食と同様に地球の周りを周っている月によってその向こう側にある金星が隠される現象なので、地球上の場所によって見えかたや時間が変わります。日本では、小笠原諸島と後述の北限界線が通る鹿児島・宮崎以南で見ることができます。その他の地域でも、月のすぐ近くに金星が輝いているのを見ることができますから、昼間の金星を見つけるのにとても良い機会になります。
今回の金星食の各地での時刻は下の表の通りです。月が金星に見かけ上最も接近する時刻は全国で数分程度の差しかありませんが、南西諸島や沖縄・小笠原諸島ではより早く隠され、より遅く出現します。 |
2022年5月27日の金星食の時刻(日本時間)
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地名
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金星の全部が月から出る
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札幌
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仙台
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東京
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大阪
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広島 |
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福岡
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鹿児島
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月に一部だけが隠される |
13:47 |
那覇
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13:09 |
14:10 |
14:10 |
父島 |
13:25 |
13:26 |
14:19 |
14:20 |
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2022年5月27日の金星食
鹿児島県大崎町付近で見た様子のシミュレーション
月の位置の関係で、場所によって見え方が異なり、
より東(北)の地方では、月の中心から離れたところを通過してきます。
Java scriptの関係で上の図が見られない場合はこちら
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●どこで、どうやって見える? |
今回の食は、西の空の高度20〜30度程度の空で起こりますから、月が見える場所であればどこでも観測できます。
今回は昼間の現象なので、肉眼でその変化を見るのはちょっと難しいですが、金星は十分な明るさがあるので、昼間の空の中でも望遠鏡や双眼鏡を使えば簡単に見つかります。この時、金星は光の速さで約10分(約1.2AU)の距離にあり、望遠鏡で見てみると半月と満月の中間のような形に見えます。また、望遠鏡で倍率を上げて見てみると、金星が月に隠れるときや出てくるときには、金星が約1分かけて少しずつ月の向こう側に隠れて(出て)くる様子をじっくりと見ることができます。これは、天体望遠鏡でなければ見ることができないものです。是非チャレンジしてみてください。
今回の金星食の時の月は細いので、青空の中では少し見つけにくいですが、肉眼でも見つけられる大きさがありますから、西の空を注意深く探せば見つかるはずです。スマートフォンのセンサーと星空アプリを使えば、だいたいの方角を知ることもできますから、より容易に探せるでしょう。
天体望遠鏡を使って探す場合、ファインダーでは月や金星が確認できないかもしれません。まずはなるべく低い倍率で視野を広くして、青空の中を探してみてください。場所の見当がずれていなければ、しばらく探せば見つかるはずです。
また、昼間の月や金星を探すには、天体自動導入望遠鏡があるとさらに見つけやすくなります。昼間アライメント(SynScan)や惑星アライメント(Nexstar+)を使用すれば、月と金星を自動追尾することもできますから、連続写真を撮る場合にもとても便利です。
上記の表の潜入時刻を参考に、その30分くらい前から月を望遠鏡の視野に入れ、月の右に見えている金星をあらかじめ見つけておきます。時間が経つと金星は少しずつ月に近づいていき、月の向こう側に隠される現象が見られます。さらに、上記の出現の時刻になると、今度は金星が月の向こう側から出てくる現象が見られます。星がどこから出てくるかを特定するのは難しいですが、月の表面の明るさより金星のほうが明るく見えるので、出現しはじめればすぐに見つかるはずです。2〜5分くらいたてば、月の縁から金星が現れたのをはっきりと見ることができるはずです。
また、金星が月に隠されない地域では、月の位置から昼間の金星を見つける良い機会になります。上記の最接近の時間の前後に、月の右側のすぐ近くに輝く金星を見つけられるはずです。是非チャレンジしてみてください。
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●鹿児島県・宮崎県で接食となる
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星食は、日食と同じように見る場所によって見え方が違うという特徴があります。今回の星食では、概ね南に行くほど月の中心近くを通過していきますが、北限界線が通る鹿児島県と宮崎県の一部地域で「接食」として見ることができます。また、この南限界線以北の地域では、金星は月に隠されません。
接食とは、月がその向こう側にある星をかすめるように移動していく現象で、金星等の惑星の場合は、星の一部だけが月の向こう側に隠される様子をみることができます。
接食が見られる地域は、月に隠されるか隠されないかの境界線を地上に引いた「限界線」と呼ばれる線上のごく限られた地域だけです。右のGoogle Mapは、今回の金星食の北限界線を地図上に表示したものです。青い線よりも南側では金星がすべて月の向こう側に隠され、赤い線より北側では金星は月に隠されません。一方で、この線に挟まれた地域では、金星の一部だけが月の向こう側に隠される現象を見ることができます。
お近くにお住まいの方は、是非限界線近くに行って観察してみてください。GPSを搭載したスマートフォンなどから、現在地と限界線を確認できるGoogle mapも、こちらに用意しています。 |
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星食をはじめとした「食」は、とてもライヴ感覚のある天文現象なので、一度見てみるととても感動するものです。当社の毎月の星空案内のコーナーでは、金星食はもちろん、星空を気軽に楽しむことができる双眼鏡や望遠鏡を用意しています。この機会に是非お求めいただき、ご自身の目で宇宙の星々が繰り広げるショーをお楽しみください。
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